ささやかな日常の記録

現在と過去のエンタメなど

小さなYeah11〜蹄鉄

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シーズン3「二人だけのレース」より

現代の田舎暮らしに必要不可欠なものは車である。都会と違って交通手段が限られているので、車がないと買い物や病院などに行くのも難しかったりする。

それが西部開拓時代には馬だった。移動手段の馬車だけでなく、耕作にも必要だった。その馬を働かせるために必要だったのが蹄鉄である。

馬の爪である蹄(ひづめ)を守るために装蹄される靴みたいなものである。それを職業とする蹄鉄屋(装蹄師)もいて、シーズン3の「二人だけのレース」でも描かれている。

ローラはバニーの蹄鉄を買うためにド―フラーの馬屋(厩)で働くことになる。ここでは蹄鉄も扱っていて、1つ50セントで4つだと1ドル75セントとのこと。インガルス一家にとって、それは子供たちの靴と変わりない高価なものである。

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また、シーズン1の「オルガの靴」の回ではチャールズが足の不自由なオルガの靴を作ることを蹄鉄から思いつく。その靴がオルガに幸せをもたらすことになる。

そんな蹄鉄は昔から幸せを運ぶシンボルでもあったようで、厄除けや魔除けとして家に飾られたりしたようである。蹄鉄のデザインのジュエリーもあるくらいである。

シーズン5の「なつかしの故郷へ」の後編での別れの場面でメアリーがチャールズに蹄鉄を渡し、盲学校の生徒たちが「蹄鉄が幸運をもたらす」という歌を合唱するシーンは忘れられない。

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その歌詞は次の通り。

我らは幸せを探し求める旅人

平和な暮らしを求めて生きてる

トラブルや争いはお断り

訪ねてくる友は大歓迎

明るく楽しい幸せな我が家

他に求めるものは何もない

我が家に繁栄を呼ぶのは

ドアに飾った馬の蹄鉄

蹄鉄をドアに飾れば

すばらしい運が舞い込む

不安を遠ざけて幸せを招くお守り

幸運の蹄鉄をドアに飾ろう

そして久々に小さな家に戻ったチャールズは、そんな思いのこもった蹄鉄を柱に打ち付ける。

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そんな蹄鉄だから歌にもなっている。日本にも「蹄鉄屋の歌」があるが、こんな変な歌もある。タイトルは「蹄鉄理論」。政治学の理論の一つで右翼と左翼の類似性を蹄鉄の形から説いているようで、なかなか興味深い。


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また、蹄鉄(horseshoe)のようなカニ( crab )のことをカブトガニ(horseshoe crab )と言うようである。


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【備考】死におびえる町

長期シリーズのドラマや映画を見ていると、必ず前に見たようなストーリーを目にすることになる。BS4Kで放送されたシーズン5の「死におびえる町」を見ると、どうしてもシーズン1の「救われた町」を思い出してしまう。

今回は炭疽菌に感染した羊を食べたことによって住民が病に倒れることになる。前回は教会だったが、今回は盲学校に患者が次々に運び込まれて、例によってベイカー先生が一人で対処していくが、薬と食料が足りなくなる。そこでチャールズとガーベイが注文した物資を駅まで取りに出かけることになる。

今回はレギュラーの登場人物の多くが感染したうえに、チャールズたちの困難な道行も描かれたために、エピソードが多すぎて散漫な印象になってしまった。その中ではオルソン夫妻がお互いに「愛している」と言い合う姿が印象的だった。

そんな短いエピソードの中でもアダムと生徒を看病するメアリーは魅力的だ。今回はメアリーのようにローラの目が見えなくなってしまうシーンがあったが、あまり印象に残らなかった。それに対して「救われた町」ではマイケル・ランドンの娘であるレスリーが演じた少女が「教会で死ぬのは怖くない」という短いシーンでも心に響いた。

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このように同じようなエピソードでも描き方によって印象も変わるということである。この2つの回で妻と子供を亡くす父親を演じたマット・クラークの演技も今回は過剰気味だったが、「救われた町」では静かな余韻を残して忘れられない。

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つまり「救われた町」は静的で心に沁みるということである。感染源が分からないので大切な人に近づけないという状況からして切ない。それに対して「死におびえる町」では人から人への感染がないことが分かっているので、そうした切なさはない。

物資が届けば助かるという安心感もあって、チャールズたちが無事に帰って来るかという動的なサスペンスに重きが置かれているともいえるだろう。

そしてラストシーンのへスター・スーの歌も好みが分かれるところだろう。個人的にはシーズン3の「雪あらし」のラストシーン以上の唐突感を覚えてしまった。やはり、短いながらもオルデン牧師の言葉に説得力があった。

それでも今回も荒涼たる雪景色と重苦しく繰り返される劇伴は印象的だった。まるで映画「遊星からの物体X」みたいだった。メアリーとジョンの別れの舞台となったスプリングフィールド駅も雪が降って印象が変わった。こうした馴染みの風景を違った季節で見ることができるのも長いシリーズの楽しみの一つである。

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【備考】幸せを待つ牧場

BS4Kでシーズン5の「幸せを待つ牧場」を見た。これを見ると、どうしてもシーズン4の「メアリーの悩み」と比べたくなってしまう。どちらも仕事で訪れた男が、そこに住む家族と触れ合うことで波紋が広がるというストーリーである。

それでも「メアリーの悩み」はベストエピソードに選ばれるほどの人気があるが、「幸せを待つ牧場」はあまり人気はないようである。個人的にも「メアリーの悩み」は大好きで何回も見たくなる魅力があるが、「幸せを待つ牧場」はそうではない。

同じようなストーリーなのに何故なんだろうと考えてみると、それはレギュラーの登場人物の総体としての魅力と言うことに尽きるだろう。なにしろ「幸せを待つ牧場」にはチャールズだけしか登場しない。

その意味において、かなり珍しいエピソードではあるが、理想的な父親であるチャールズをもってしても一人だけでは「大草原」の魅力は半減してしまうということである。自分にとっても「大草原」の一番の魅力はインガルス一家そのものにあるので、そこに家族が登場しないと面白くないのは当然かもしれない。

これまでもチャールズが仕事で家を離れるエピソードはあったが、必ず留守宅を守る家族が描かれていたから安心して見ることができた。ところが今回はチャールズ以外は登場しないので、なんだか宙ぶらりんのようで見ていて落ち着かない。

それでもドラマとしてはそれなりに面白い。チャールズが馬を買うために訪れた牧場でハーバーの家族と出会うが、その夫婦関係は長男が落馬事故で亡くなったことで冷え切っていた。これは今でも映画やドラマでよく見るシチュエーションである。あの「風と共に去りぬ」がそうだったし、やがてエドワーズが同じような状況になる。

そんな家族の中にチャールズが入り込むことで、妻と子供たちが癒されて変わっていく過程が印象的である。チャールズ自身は普段のままなのに、無意識のままに周りを変えていくところなど、まさに理想的な男性像である。

チャールズ自身も長男を亡くしているので、そこに共感が生まれる。信仰を持つことと、強く願うこと、そして努力することで変わることができるというメッセージ。

子供たちとの交流を通して、想像することの大切さも描かれる。トカゲをドラゴンだと思い、マシュマロの雲を思い眠りにつく。そんな何気ないシーンが楽しかった。

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馬を見るチャールズ

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ピクニックでのふれあい

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揺れる思い

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別れの前に

ここで娘のサマンサを演じているのが、(エドワーズの娘)アリーシャ役だったカイル・リチャーズである。

このカイル・リチャーズは1969年1月11日生まれで、ドラマと同じ頃に映画「ハロウィン」や「ザ・カー」などにも出演している。その後、「ER」の看護師ドリ・カーンズ役で出演している。今でも女優だけではなく、慈善家としても活躍しているようだ。レディガガのMVにも出演している。


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このMVには姉のキム・リチャーズも出演しているようだが、まったく分からなかった。もはや、あのオルガの面影など見つけようもないが、この姉妹は子役から派手なセレブへと成長したようである。

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アリーシャの面影があるカイル・リチャーズ

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今のキム・リチャーズはちょっと・・・

そんな訳で少し成長したカイル・リチャーズを見ることができただけでも十分であったが、個人的には「メアリーの悩み」とセットで楽しみたい。「メアリーの悩み」で不在だったチャールズのエピソードが「幸せを待つ牧場」だったと想像すると面白い。

ちなみにマイケル・ランドンが出演している「ボナンザ」にも同じようなストーリーがあるようなので見てみたい。

 

日常と自然と「こころ旅」

今日も晴天。全国的に気温も上がったようだが、当地では風が心地よく、過ごしやすかった。何となく今頃は雨が多いイメージだったが、統計的には最も少ないようである。そこで買い物がてら自転車を走らせ、近くの森林公園に行ってきた。

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先日の「チコちゃん」で森は自然で、林は人為的という違いがあると言っていたが、ここは自然を生かしつつも人為的に作られた場所である。それでも「大草原」的な気分は味わえる。

昨日で新たな吹替で「大草原」を見始めて2年になったが、今でもBS4Kで放送中なので時間がある時は欠かさずに見ている。そろそろ書くことはなくなってきたが、何度見ても飽きることがない。

最近では2時間の映画を見ることがしんどくなってきたが、正直これだけを見ることができれば十分のような気さえする。そんな「大草原」と共にBS4Kで見ているのが朝ドラ「おかえりモネ」と「こころ旅」である。

日常が丁寧に描かれている一方で起伏の少ないドラマだけに視聴率的には苦戦しており、ついに16%まで落ちてしまった。Yahoo!のコメントを見ると「つまらない」といった声ばかりで、やはりこうした余白のあるドラマは難しいようである。

「透明なゆりかご」などを好んで見ていた人の声は多勢に飲み込まれてしまって、なかなか見えてこないのが残念である。やはり、自分の好きなものは、マイナーなものが多いようである。

それでも今朝の放送では秘めていた感情をミーちゃんが顕わにするシーンが描かれて、見応えがあった。銀行員である父親を責めるところなど、同じ震災をテーマにした山田太一作の「時は立ちどまらない」と「五年目のひとり」を思い出してしまった。

そして火野正平と地域の人々との交流を描いている「こころ旅」は昨日の放送で1,000日目を迎えた。こちらも震災直後の2011年4月にスタートして10年余りで、多くの人々の心の風景を見つめてきた。

東京の会社員時代は朝ドラからの流れで初めだけ見て、8時前にバタバタと家を出ていたことが懐かしく思い出される。

昨日の放送で紹介された妙高山の見える田園風景は地元の風景にもよく似ている。田園の中を電車が走るのも同じである。

その妙高市には中学時代の部活の大会で遠征したことをよく覚えているだけに、自分にとっても懐かしい風景だった。

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「おかえりモネ」と最近のドラマ

6月になっても頭のぼんやり感は継続中で、何もやる気になれないままだ。どうやら季節の変わり目で自律神経がおかしくなっているようだ。とにかく長時間じっとしていられないので映画を見ることも、音楽を聴き続けることも難しい。そのため、ドラマを少しずつ見ている。

朝ドラ「おかえりモネ」が最高に面白い。清原果耶演じるヒロイン百音の日常を丁寧に描いており、これぞ4Kで見る価値のあるドラマである。それだけにドラマティックな展開は抑えられており、次回へのつなぎも弱い。

今週は早くも震災が描かれたが、これも回想としてあっさりと終わってしまった。ここで印象的だったのは、その時にそこに居なかったことで何かを失ってしまったかのような心情。それを清原が繊細に演じており、目が離せない。

視聴率は17%台で推移しているが、今ではBSで見ている人も多いだろうから、あまりあてにはならない。正直、4Kで見てしまうと地上波を(録画してでも)見たいと思えなくなってしまう。

これはドラマと言うより、震災を経験した普通の少女の日常を追ったドキュメンタリーに近いような気もする。だから、そのまま「こころ旅」にすんなりと入っていける。

それでもドラマ的な面白さがない訳ではない。個人的には蒔田彩珠演じる妹の未知が気になる。「大草原」で言えばモネはメアリーで、ミーちゃんはローラ的なポジションになる。

どうやら未知はモネの同級生である漁師の亮が好きなようだが、もし亮がモネのことを好きだったら面白い。あの「透明なゆりかご」での共演が忘れられないだけに、姉と妹の確執を見てみたい。

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そんな女子高生を演じている蒔田は2002年8月7日 生まれで、清原が2002年1月30日生まれだから、年は同じだが学年が一つ下になる。

 

「おかえりモネ」で描かれた彩雲が印象的だったのが、「透明なゆりかご」の第9話「透明な子」で、その演出をした鹿島悠が参加したドラマ「きれいのくに」も女子高生が魅力的に描かれていた。

その中の一人を演じた見上愛は「MIU404」にも出演していたが、蒔田と同じような雰囲気があって実に魅力的だった。ドラマではそんな顔を整形しようとする心の葛藤が繊細に描かれ、現代の病理を見事に浮かび上がらせていた。

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整形が一般化した近未来を舞台にしたSFでもあり、冒頭では高校生が見ている啓発ドラマがそのまま描かれた。そこでヒロインを演じていたのが吉田羊で、彼女が若返って蓮佛美沙子になってしまうところで、ハマってしまった。

蓮佛と言えば個人的にはNHKで2008年に放送された「七瀬ふたたび」のヒロインが忘れられないが、朝ドラ「べっぴんさん」でのヒロインの姉役も良かった。その時のヒロインが芳根京子で、芳根とは映画「記憶屋」でも共演している。

その芳根が主演のドラマ「半径5メートル」では、芳根と永作博美とのコンビネーションが最高である。前後編で放送された「黒いサンタクロース」はクリスマスの小さな話が議員のセクハラを告発するという社会派のネタにまで拡大していく過程がスリリングだった。

日常ネタと芸能ネタと政治ネタが一人の男で交錯するという面白さ。その男を演じたのが緒形直人。たまたま「北の国から '89帰郷」を見直したばかりだったので、その時間の経過をリアルに感じてしまった。

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蛍を演じた中嶋朋子は今日が誕生日で50歳になったばかり。先日、シェークスピアの特集番組に出演していたが、「北の国から」での女子高生姿は最強である。永作博美は一つ上であるが1970年10月14日生まれなので、今は同じ年ということになる。

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ドラマはまだ3話残っているので、今後の展開も楽しみである。このドラマの制作統括である勝田夏子は土曜ドラマ「今ここにある危機とぼくの好感度について」も制作しており、こちらも最高に面白かった。

脚本は渡辺あやで以前に書いた「ワンダーウォール」の現代版的な趣もあったが、リアルな社会問題に斬り込んだブラックジョーク的な面白さがあった。演出の柴田岳志と音楽の清水靖晃は「透明なゆりかご」でもコンビを組んでおり、今回も4Kでの映像と5.1サラウンドによる音楽は見事だった。

ヒロイン的な存在だった鈴木杏も実に魅力的で、その鈴木を好きになっていく主人公を演じた松坂桃李の演技も最高に可笑しかったが、その結論は「愛こそすべて」ということ。

それは松坂が同時に出演している「あのときキスしておけば」も同じである。毎回、大いに笑わせてもらっているが前回のラストで転調の予感がして、その魂の行方が気になるところ。大石静の脚本では朝ドラ「ふたりっ子」も最高で、月曜日の再放送も楽しんでいる。

その翌日には「大豆田とわ子と三人の元夫」があり、こちらも久々の坂元裕二の脚本に魅せられているところである。これが大人の会話劇だとしたら、「コントが始まる」は若者の会話劇で素晴らしい。こちらにも出演中の芳根京子の可愛らしさときたら、もう最高である。まだまだ制服姿も大丈夫で、蒔田彩珠と見上愛と共に魅せられているところである。

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