ささやかな日常の記録

現在と過去のエンタメなど

1982年のこと

 

「駅 STATION」

公開は1981年の11月だが、観たのは翌年1982年1月24日、地元の映画館にて。同時上映は市川崑監督「幸福」。1982年の最初の1本であり、上京する前に地元で観た最後の映画になる。

☆☆☆☆★★

冬の北海道を舞台に、警官である中年男の哀しさを描いた作品である。この作品、いうなれば演歌の世界なのかもしれない。だから、この作品の本当の味が分かるのは、あと30年かかるのではないか。厳しい冬の北海道の大自然から何かしら情感が感じられ、男の人生の哀しさが何となく分かったような気がする。この作品は1968年の冬から始まる。男と妻子との駅での別離。まるで、のっけからラストシーンを見ているかのよう。これを発端に、男がオリンピックを目指して練習している時、同僚が射殺される事件が起こる。その8年後、兄の殺人をかばう妹と、それを追う男が描かれる。さらに2年後、赤ちょうちんの中年女との交際が描かれる。ドラマはこの3つの、一見、何の関係もなさそうなエピソードを中心に進行する。これがラストに向かって、密接につながりを持ってくるのだ。このあたり、見事な脚本と言えるだろう。それぞれのエピソードは、どれも小さな町で自分なりの人生を生きている人の、人生の哀歓が滲み出ていて印象深い。そして、すべて駅が重要なポイントになっている。2つ目のエピソードでは、小さな駅で、逃亡していた兄が妹と再会した時に捕まってしまう、兄と妹の別離の舞台だった。ラストでは、かつての同僚を撃った犯人を射殺して無言のまま列車に乗る男と、あの妹とが町を出ていく舞台だった。このように、駅を舞台に、人生なんたるかを、北海道の厳しい冬を中心に描いた作品として、胸に染み込む映画だった。

それから30年たって、最近、NHKBSプレミアムで観た。無職になって、すっかり人生の哀感を味わっているだけに、赤ちょうちんのエピソードはしみじみと切ない。当時、「舟歌」の良さなんて分からなかったと思う。でも、たいして成長していないような気もする。1980年の大河ドラマ獅子の時代」の音楽でファンになった宇崎竜童が、ここでも良い仕事をしている。

f:id:hze01112:20190406175433j:plain

「わが青春のアルカディア

初日は7月28日というから水曜日だったようだ。夏休みだったからか、公開すぐに友人と見に行った。映画はいまいちだったが、TVシリーズは大好きで、雄大なテーマ満載のサントラは愛聴盤。

1982年7月31日(土) 丸の内東映パラス(前売1,100円)

☆☆☆★★

銀鉄のようなロマンチックなアニメが好きな自分としては、この作品のような男の友情を描いたアドベンチャーものは苦手なところがあるが、本作はなかなか骨があって楽しめた。だが、正直言って松本アニメもワンパターンになってきて、新鮮味もなく物足りなく思えてきたのも事実である。

 「伝説巨人イデオン

近年になってWOWOWで放映されたHD版を観た。クラシックのようなサントラもお気に入り。よく、こんな難解な作品を高校生が観ていたものだ。映画は夏休みで帰省した時に、地元で鑑賞。

1982年8月5日(木) 長岡ニュー銀(学割1,300円)

☆☆☆☆

3時間に及ぶ、この長編アニメーション映画を観終わって、アニメもついにここまで深い内容を持つに至ったかと嬉しくなってしまった。これはもうお子様向けアニメなんかじゃない。全くもってこの作品、末世的ムードが漂い、人間の心情が良く描かれ、更にアニメならではの戦闘シーンの迫力が加わって、実に中身の濃いものになっていた。ラストでは転生を描き、そのエロティックともいえるイメージは新鮮で印象的だった。

 「ルパン三世カリオストロの城

1979年公開時は地元で観ることができなかった。そのため大学入学直前にぴあで探して、駆けつけた。同時上映は「ブラックホール」。ジョン・バリーの音楽は最高なんだけど、その後、観る機会がない。

1982年3月29日(月) 高田馬場パール座(ぴあ割引400円)

☆☆☆☆★★

これはもう、かけ値なくアニメの最高傑作だ。文句なしに面白い。あの「未来少年コナン」の興奮が甦ってきた。あの「レイダース」がそうであるように、この面白さは表現できるものではない。とにかくアニメーションの面白さを凝縮した感じなのである。荒唐無稽だと言ってバカにしてはいけない。それこそアニメの生命なのだから。ルパンが城のてっぺんから駆け下りたり、滝の中を泳いだりするシーンは、実写には無理でもアニメならできる。このスピーディーな動きこそ大切なのだ。また登場人物のキャラクター設定の大塚康生の絵も実に良い。まさに彼らは生きている。特にクラリスの可愛らしさはピカイチだ。こんな素敵な人物が画面狭しと動き回るのだから面白くない訳がない。とにかく面白くて何回でも見たくなるような魅力たっぷりの映画だった。

(おまけ)3月29日の日記

今日から本格的な一人暮らしが始まった。もはや頼る人は誰もいないのだ。早速、朝食を自分の手で作った。米を3合炊いて、おかずに卵焼きとトマトに味噌汁。腹ごしらえも済んで、すぐに食器を洗い、10時ごろ高田馬場に出て、待望の映画を観た。場末の名画座なのに超満員。さすが東京、映画ファンは多い。なんだか、それだけで嬉しくなってしまった。終映後、焼売をお土産に買って帰宅。

 

ブレードランナー

この年に公開された映画で、その後に影響を与えた映画と言えば、この映画。もう語りつくされている映画だけに、今更という気もしないでもない。でも、自分にとっても、重要な作品だけに外す訳にもいかない。日本での公開は1982年7月3日。ウィキペディアによると、極端な不入りで早々に上映が打ち切られたとある。自分が観に行ったのが7月29日。一応、1か月は上映していたようだ。確か、新宿のミラノ座だったと思う。大劇場がガラガラだった記憶がある。

☆☆☆☆★★

これはもう凄い映画だ。オープニングの未来都市の描写はゾクゾクするくらいの美しさ。あの「エイリアン」を観た時の感銘と同じだ。とにかく特撮とヴァンゲリスの音楽の素晴らしさには文句のつけようがない。内容もレプリカントが苦しむ姿が哀しくも印象的で、雨に打たれて死んでいく姿は感動的だった。「人間など、いつ死ぬかは分からない」というナレーションも印象的。全編のアクションはまさにハードボイルド・タッチで、あの「エイリアン」がSFスリラーの決定版だったように、本作はSFアクションの決定版だった。

この映画を観てサントラを探したのは言うまでもない。でもサントラはなかなか発売されず、その長い道程はネットで多く語られている。とりあえず、ニュー・アメリカン・オーケストラによる紛い物をゲットした。しかし、これが意外に良かった。サントラではないが、映画の雰囲気を醸し出していて、お気に入りになった。輸入ビデオも購入したが、見たことのない残酷シーンがあって驚いた。これが、また様々なバージョンで出てくることになる。その後、様々なグッズを購入することになるが、とりあえず写真はレーザーディスクとレコード。

f:id:hze01112:20190406180631j:plain

この映画を歌舞伎町で観たというのも、今考えれば、できすぎだ。そして、この日はもう一本、映画を観ている。それが「ポルターガイスト」だ。この映画も、映像と音楽により大好きな作品になった。同時期に制作された「E.T」よりも、お気に入りだったりする。これもLDとレコードを購入した。

この翌日、あの「ファントム・オブ・パラダイス」を観た。更に、その翌日の7月31日の土曜日に名画座で「スター・トレック」と「レイダーズ」を再見した。前者はゴールドスミスの音楽担当、後者はスピルバーグ監督作品だ。

 

「E.T」

1982年12月27日(月) 新宿ミラノ座(前売1,100円)

昨年同様、1年のトリはスピルバーグ作品となった。これほど素直に笑い、泣き、ワクワクして楽しめる映画もないだろう。宇宙人と地球人の少年との心のふれあいは本当に感動的だった。

 

「ミッドナイト・クロス」

これは、もう恥ずかしいくらい好きな映画だったりする。当時はピンとこなかったようだが、観るたびに好きになっていった気がする。地元でも「キャリー」「フューリー」「殺しのドレス」と観てきて、本作。この後、名画座で「ファントム・オブ・パラダイス」を見てデ・パルマ熱は決定的になる。

1982年3月30日(火) 新宿アカデミー(学割1,300円)10時~☆☆☆☆★

(ネタバレあり)前作までのショッカー演出を期待して見に行ったら、少々違うので唖然とさせられた。決して、期待を裏切った訳ではない。とにかくデ・パルマ演出の映像表現に酔った。特に、ラストのサスペンス溢れる展開と、映像美。花火をバックに愛する女性を失った男の周りをカメラが360度回転する。デ・パルマならではの技法で、男の哀しみが胸に突き刺さる。前作までとは違って、極力、残酷な殺人シーンを省いて、正攻法で攻めてくる。前作までの華麗といってもいいくらいの血の演出はなく、そこが物足りなかったりする。でも、本作の魅力は甘いラブ・ミステリーにこそあるのかもしれない。まさに、ジョン・トラボルタナンシー・アレンははまり役。男が女の最期の悲鳴を「実にいい悲鳴だ」なんていうセリフ、後味は悪くても感動してしまった。

この映画もまだHD版を観ることができない。Amazonでは1,000円のDVDが100,000円になっていた。でも、以前、自分の購入した、こちらのBoxにも収録されている。

f:id:hze01112:20190406181510j:plain

実は、この映画、サントラも大のお気に入り。 ピノ・ドナッジオが手がけた作品の中では一番だ。聴くたびに胸が締め付けられるような気分になる。

今ではDVDもサントラもトラボルタが全面に出ているが、公開時はナンシー・アレンがメインだったので、どうも違和感がある。このビジュアルでBlu-rayが発売されれば迷わず購入する。

f:id:hze01112:20190406181627p:plain

ファントム・オブ・パラダイス

その後、名画座で「ファントム・オブ・パラダイス」を鑑賞した。映画館の記載がないが、三鷹オスカーだったと思う。同時上映は「ヘアー」。

1982年7月30日(金)

☆☆☆☆★★

あのデ・パルマが「キャリー」の前に作った映画だが、とにかく最高だった。例によって映像テクニックの見事さは言うまでもないが、音楽の素晴らしさが加わって、哀しいミステリーの世界が展開されるのだから、たまらない。あの「ブルース・ブラザース」がコメディと音楽の融合ならば、本作はミステリーとの融合だ。これほどまでに、ワクワク、ドキドキさせ、感動させられた映画はない。話は少々現実離れしてはいるが、パラダイスの怪人の悲痛な叫びは胸をうつ。ラストの絢爛の中での悲劇は「ミッドナイト・クロス」に通じるところがあり、感動的だった。

この映画は先日、NHKのBSプレミアムのHD版で観ることができた。この作品は初めてレーザーディスクで買った映画でもある。ポール・ウィリアムスの手がけたサントラも何回聴いたか分からない。その後、彼のアルバムにも手を出し、カーペンターズまで好きになっていく。

f:id:hze01112:20190406181926j:plain

ブルース・ブラザース

f:id:hze01112:20190406182038j:plain

日本公開は前年3月。「1941」に熱狂しただけに見たくてたまらなかった。しかし、残念ながら、地元では公開されなかった。そこで、早くも名画座を探して、観に出かけた。東京での名画座デビューに、最適の作品だった。

1982年2月22日(月)テアトル池袋(500円)

12:55~(2h10)

☆☆☆☆★★
文句なしに楽しい映画だった。ただのハチャメチャではなく、一種のミュージカルとしても十分に通用するほどだ。この映画も、変に理屈をつけるよりも、その映像の躍動感を楽しんだ方が得だ。でも中身がまるでない訳ではなく、孤児院の救済が目的という人情話だというのが良い。なんといっても黒づくめの主演二人が最高だ。彼らは「1941」でもクレイジーぶりを発揮していたが、この作品でさらに魅力を増した。執拗に彼らを狙う女に、あのレイア姫ことキャリー・フィッシャーが扮し、新境地を見せている。彼女がバズーカ砲などをぶっぱなし、彼らを襲うのだからたまらない。彼女だけではなく、警察、楽団、ナチ党までが、彼らを追跡し、果ては軍隊まで総動員。こんなハチャメチャなアクション・シーンは見たことがない。そんなアクション・シーンの合間に、これまた楽しい音楽シーン。尼僧の家のオカルト的効果や、ナチ党の車が落下するシーンなど、撮影も実にしゃれていて、本当に贅沢な2時間だった。

この映画、その後も何度も見ているのに、まだHD版で見ていない。サントラもお気に入りで、こちらを購入。

f:id:hze01112:20190406182537j:plain

同時上映は「スター・クレイジー」。こちらも当時お気に入りだった「大陸横断超特急」のコンビが出ていて楽しみだった。でも、それ以来見ていない。DVD化もされていないようだ。レビューも「思っていたよりも面白くて、最高におかしな映画だった。とにかく、ジーン・ワイルダーリチャード・プライヤーの魅力に尽きる~」と絶賛。

星は☆☆☆☆

f:id:hze01112:20190406183335j:plain

Uボート

上京して、初めて観た映画。新宿、歌舞伎町にミラノ座。田舎者にはすべてが珍しく巨大に見えた。そして、観た映画がこれ。ミラノ座の大画面と大音響に圧倒された。東京での映画デビューとしては、まさに最適の作品だった。

1982年2月20日(土) 新宿ミラノ座(1,300円)

16:00~(2h15)

☆☆☆☆★★★

とにかく凄い映画だ。これほどまでに強烈なインパクトを持った戦争映画があっただろうか。まさに骨の奥まで響くような大音響と、素晴らしい映像で、戦争そのものを体験した感じ。この作品ではストーリーは、まるで意味を持たない。これが日本映画だったら、恋愛ドラマなどを絡めるだろうが、この作品はそういうドラマを省いて、戦争という地獄を経験する潜水艦の乗組員の表情を追い、戦争の恐怖をストレートに訴えかける。アメリカ映画みたいな圧倒的なスケールには劣るが、潜水艦の中という閉ざされた空間の中で展開するドラマは手に汗握る迫力だ。その中で死と直面する青年たちの姿を追うカメラの移動や、海上シーンの美しさ、敵艦炎上シーンの悲惨さなど、見事である。そして、九死に一生を得て浮上したUボートが、地上であっけなく沈められるラストシーンは、あまりに無情だ。ドイツがこんな映画を作ったとは驚嘆せざるを得ない。

昨年12月2日に、NHKのBSプレミアムで再見したが、放送時間を忘れてしまった。ディレクターズ・カット版は3時間を超えてるようだし、テレビ・シリーズも昔観た記憶がある。色々なバージョンがあるようなのだ。30年前の記憶は鮮やかなのに、最近の記憶は曖昧だ。サントラは、悲惨な映画なのに、実にカッコ良くて大好きだ。

f:id:hze01112:20190406183357j:plain

1982年鑑賞映画(その他)

ゴールデンウィークの後半が始まった。外は南風が吹き荒れ、強風注意報も出ているようだ。いわゆるフェーンというもので、気温も急上昇。真夏日になるかもしれない。こんな時は、映画館にでも出かけたいと思うものの、無理なのが切ない。

過去の映画の記録を続けてきたが、もう疲れてしまった。何しろ、1982年だけで書きたいことがありすぎて、先に進めない。たまたま、ブログ巡りをしていたら、いくつも同じような試みに遭遇した。その知識や内容に圧倒されて、単なる映画ファンの感想文が恥ずかしくなった。公開するのも憚られる感じだが、もう少しだけ続けてみようかと思う。

1982年に映画館で観た映画で未記入だったものを列挙する。

○「草原の輝き」

   「欲望という名の電車」 

2月24日(水) 八重洲スター座(400円) 

○「最前線物語」 

4月1日(木) 新宿ローヤル(500円)

●「ネイバース」 

4月1日(木) 新宿ミラノ座(1,300円)

○「ミッドナイト・エクスプレス

   「時計仕掛けのオレンジ」 

4月2日(金) 武蔵野推理劇場(400円)

「レッズ」 

4月18日(日) 新宿京王

○「風と共に去りぬ」 

5月15日

○「未知との遭遇・特別篇」

   「007/私を愛したスパイ」 

6月25日

○「カンタベリー物語」

   「デカメロン

   「アラビアンナイト」 

6月26日

●「ロッキー3」 

8月2日(月) 長岡グランド(1,300円)

●「炎のランナー」 

8月29日(日)日比谷みゆき座(1,500円)

○「わんわん物語

   「シンデレラ」 

8月31日(火)

新宿文化シネマ1(1,300円)

●「ワン・フロム・ザ・ハート」 

8月31日(火)新宿ロマン(1,300円)

●「トロン」 

10月2日(土) 

○「ジーザス・クライスト・スーパースター

   「ウェストサイド物語」

 10月2日(土) テアトル新宿(800円)

○「グリース」

   「ザナドゥ」 

10月3日(日) テアトル新宿(800円)

○「タクシー・ドライバー」

   「レイジング・ブル」 

10月20日(水)テアトル新宿

○「アウトランド」 

10月20日(水) 新宿ローヤル(500円)

●「1900年」 

11月7日(日) 

新宿文化シネマ2(学割2,000円) 

○「サウンド・オブ・ミュージック」 

11月14日(日)三鷹オスカー(600円)

○「嵐が丘

   「ひまわり」 

11月23日(火) 渋谷東急(1,300円)

○「愛と哀しみのボレロ」 

11月28日・29日(月)

新宿ミラノ座(1,000円)

○「サード」「家族の肖像」

   「泥の河」「ブリキの太鼓

サントラが好きな「ミッドナイト・エクスプレス」「ワン・フロム・ザ・ハート」等ある中、5時間を一気に観た「1900年」や感動のあまり翌日にも観に行った「愛と哀しみのボレロ」など、思い出は尽きない。(●は封切り映画)