①「デビッド・ギルモア」
デビッド・ギルモアのソロ2作目。1984年発売。 原題「about face」
直訳すると「顔について」。いかにも顔ジャケに相応しい。でも、これって「顔を向ける」から「回れ右」とか「方向転換」といった意味になるらしい。知らなかった。邦題は「狂気のプロフィール」。顔は男の履歴書っていうからね。いずれにしても、フロイド関連のアルバムで、顔がメインなのは珍しい。ソロ1作目は荒涼とした風景に佇む姿だったし、次作以降は鳥だ。
発売当時の印象は、散漫でフロイドらしくないだった。でも、これ久々に聴いてみたら、とっても良い。ロジャーのソロみたいな「ファイナル・カット」でストレスが溜まっていたのではないか。自分の好きな音楽を、多彩なゲストを招いて楽しんで作ったって感じが伝わってくる。それが普段着姿のジャケットの表情なのだろう。今迄のコンセプトありきのフロイドから、サウンドありきのフロイドへの転換。そのプロトタイプとして本作はあったのかもしれない。
この後のフロイドのアルバムの邦題は「鬱」「対」「永遠」、それに倣えば、本作は「転」でも良かったような。
アルバムの終曲は「終焉の時」
終わりに近づいたと感じる時
かつて赤々と燃えていたものがだんだんと色褪せていく
完成したものを見て
君は裏切られたと感じるのだろうか?
②「ジョン・アンダーソン」
ジョン・アンダーソンのソロ3作目。1982年発売。 原題「animation」、もちろん日本のアニメのことではない。同タイトルの曲でanimation of lifeと歌われている。娘のジェイドの誕生がテーマのようで、ジョンらしい生命賛歌だ。この頃、ジョンはイエスを脱退しており、ヴァンゲリスとの活動が多かった。Jon&Vangelisのアルバムはどれも傑作で、今だに聴き続けている。
しかし、本作はタイトル通りの躍動感に満ちており、また違った魅力がある。暗闇に紅く照らされたジョンの表情はミステリアスだ。翌年、イエスに復帰し、あの「ロンリーハート」で大ヒットを飛ばす。いかにもマグマが噴出する前の生気を感じる。
現在もイエス・フィーチャリング・アンダーソン・ラビン・ウェイクマンとして活躍中だ。
③「アニー・ハズラム」
アニー・ハズラム在籍のルネッサンスの6枚目。1978年発売。
原題「A Song for all seasons」、直訳で「すべての季節のための歌」そう、四季の歌。春を愛する人は…と歌い出したくなる。でも邦題は歌を取って、ただの「四季」
アニーの憂いた表情に、淡い光が雨のように注いでいるジャケットは美しい。光は春の陽光、夏の芝、秋の枯木、傘には雪が積もっているようだ。なんとも不思議な魅力があるジャケットは、ヒプノシスによるもの。
ルネッサンスのアルバムはジェーン・レルフ在籍のものも含めて大好きだ。このアルバムから、ちょっとニュアンスが変わって、ポップになっている。それでもアニーの歌声は、心に染み入る。
1978年にイエスは「トーマト」を発売。ピンク・フロイドは前年に「アニマルズ」、翌年に「ザ・ウォール」を発売。その間に、デヴィッド・ギルモアは初めてのソロ・アルバムを出した。
ルネッサンスも次作で、すっかり変わってしまう。本作での終曲がタイトルになっている。アニーの歌声が力強い。
すべての季節のための歌
私たちの時代にうたい続ける歌
四季を通してうたう歌を奏でよう