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映画「サスペリア」と「ミッドナイト・クロス」

スターチャンネルで2夜連続で、大好きな映画が放映された。それも無料放送だ。その映画とは「サスペリア」と「ミッドナイト・クロス」。どちらも公開時に映画館で観て、すっかり影響を受けてしまった。この2作品に共通する要素とは何だろう。久々に高画質で見直してみて、なんとなく感じていたことが分かった気がする。それはオペラの香りがするということだ。

オペラというと敷居が高いという方が多いだろう。かくいう自分も、若い頃はどちらかというと苦手なジャンルだった。それが年齢を重ねるにつれ、だんだんと好きになっていった。素晴らしいメロディに乗って、豪華な舞台で展開される人間ドラマ。どんなに退屈なドラマでも、たった1曲の魅力的なアリアで満たされてしまうことだってある。

これを映画に当てはめると、傑作でなくても、素晴らしい音楽と映像があれば良いということになる。ミュージカル映画のようにオペラを映画化したオペラ映画というジャンルがある。「チャンプ」のフランコ・ゼフィレッリ監督による「椿姫」や「オテロ」といった作品だ。オペラのような映画ということでは「オペラ的映画」とでも言えるかもしれない。

サスペリア」の監督ダリオ・アルジェントはイタリア人。これはもうヴェルディのようなイタリア・オペラの影響下にあるといっていい。バレエ学校という舞台がもうオペラ的だ。そこで展開される凄惨な事件はまるで舞踏のように華麗である。原色の赤と青などに彩られ、ゴブリンのロック・サウンドが響く。魔女の登場はまるで「マクベス」のよう。そしてヒロインのジェシカ・ハーバーが可憐だ。そんな彼女が果敢に魔女たちに立ち向かっていく姿は、力強いアリアの熱唱のようである。監督はそれこそオペラのような「ウエスタン」の原案を担当してキャリアをスタート。「ウエスタン」はモリコーネ作曲のスキャットが朗々と流れ続ける。監督デビュー作の「歓びの毒牙」でもモリコーネが音楽を担当した。そして、その後「オペラ座・血の喝采」という映画を撮ることになる。

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「ミッドナイト・クロス」の音楽担当ピノ・ドナッジオヴェルディ音楽院で学んでいる。インストルメンタルでありながら切々としたアリアのようなメロディが流れる。トラボルタとナンシー・アレンが病院で再会するシーンに早くも哀切な愛のテーマが登場。このヒロインはまるで「椿姫」みたいな薄倖な存在で、もうオペラ的だ。これだけで悲劇の匂いが漂ってくる。クライマックスは絢爛豪華な舞台で涙の二重奏のようだ。トラボルタの佇まいが涙を誘う。監督のデ・パルマはロック・オペラ「ファントム・オブ・パラダイス」を監督している。そこでもジェシカ・ハーパーはヒロインを演じ、美声を披露している。