ささやかな日常の記録

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映画「エンジェル 僕の歌は君の歌」

WOWOWで「エンジェル 僕の歌は君の歌」を見た。1992年11月公開。エルトン・ジョンの「ユア・ソング」が主題歌で冒頭とエンディングで流れる。織田裕二和久井映見は前年の「就職戦線異常なし」に引き続いての出演。


Elton John "Your Song" '71 clip

どうも上手く感想がまとまらない。好きな要素が満載で、大好きな和久井映見がヒロインで出演しているのに、なぜお気に入りの映画にならなかったのかということ。

先日見た「陽だまりの彼女」と何が違うのだろう。そう考えていくとどうやらヒロインが魅力的に描かれていなかったということになる。5年の交際の末、別れることになった理由が曖昧なので、単にわがままな女性に見えてしまう。それでいて一人でニュージーランドへ出かけてしまうという女心に共感できないというのが大きい。

そして織田の熱血漢ぶりもこうした映画ではマイナスになってしまう。ラガーマンだったという過去とその傷の影響が伝わってこないのだ。だから懸命に努力する姿が胸に響かない。

そしてなによりも天使という存在にリアリティというか説得力がなかった。ここが中途半端なので映画の焦点がぼやけてしまう。三木のり平演じる花屋の親父が元天使で命を助ける方法を伝授するというのもとってつけたようなものだ。なぜ彼がそうした選択をしたのか、その結果どうなったのかが分からない。いきなり大地真央が老女となって出てきてもとまどうばかりだ。

おそらく「ベルリン天使の詩」や「ゴースト」といった映画のヒットによって制作されたと思われるだけに、その世界観を模倣しただけに終わってしまっている。

当時、この映画を観に行ったのかどうか記憶は曖昧だが、前に見ているのは確かだ。この年から南北線通勤を始めており、映画で天使と出会う地下鉄のシーンに見覚えがあった。おそらく駒込駅でロケしたと思うが、真新しいホームドアが珍しかった。川谷拓三がヒロインの父親役。この3年後に54歳で亡くなっている。

ラストシーンはこの手の映画の定番にのっとっている。雨の中、車が故障し、店の前で雨宿りをしている彼女を見つめる主人公。記憶が甦るかどうかは分からない。そして「ユア・ソング」が流れる。この曲の使い方もあまり効果的ではなかった。単にカーステレオから流れてきた曲ということだけで彼らの生活にはまったく関係がない。タイトルに使っているにしては、その取扱いが雑すぎる。

その点「陽だまりの彼女」の音楽の使い方は見事だった。こうした映画ではいかに音楽で切ない気持ちを盛り上げることができるかが重要な要素であるかが良く分かる。ただ懐かしのヒットソングを使っただけではだめということである。