ささやかな日常の記録

現在と過去のエンタメなど

映画「ハクソー・リッジ」

松本隆に続いて昨日の朝、諫山創のインタビュー番組を見た。「進撃の巨人」の作者で、31歳にして知る人ぞ知る有名人である。自分は漫画こそ読んでいないが、アニメ版は大好きという程度のファンである。

インタビューは彼の故郷で行われ、その原風景がとても印象的だった。山に囲まれた閉塞空間から逃げ出したいという思いや、劣等感。そして何だか分からないけど、人とは違う考え方に対する根拠のない自信。そうした生い立ちに妙に共感してしまった。デビューしてからの日々が、いまだに非日常的だというのも彼らしい。そんな彼が語った「被害者だと思ってた人も加害者かもしれない」という懐疑的な視点は新鮮だった。

その後、映画「ハクソー・リッジ」を見た。メル・ギブソン監督による戦争映画で、日本では昨年公開された。この映画については全く知らなかっただけに衝撃を受けた。沖縄戦をリアルに描いており、公開時の評価がどうだったのか気になった。当然、アメリカ兵の視点から描かれているから日本兵は不気味な敵でしかない。生々しい銃撃戦を見ながら、あの諫山の言葉が頭をよぎった。

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こうした感情はイーストウッド監督の「父親たちの星条旗」を見た時にも覚えた。この時は「硫黄島からの手紙」を見ることで納得することができた。正義というのは敵と味方、どちらにもあるという事実。

だが時に味方の中でも、そうしたイデオロギーが対立してしまうことがある。この映画で初めて知った良心的兵役拒否者という存在。信条に忠実であることと、衛生兵として国に忠誠を誓うということ。この主人公の英雄的行為は感動的だが、それだけでは割り切れない思いが残る。

この戦場は急峻な崖の上にある。そのため兵士たちはまず崖を登らなくてはいけない。そして、その先に待っていた世界は、まるで「進撃の巨人」そのものだ。歴史的な事実とフィクションを同列に語るのもなんだが、恐怖の感情は同質のものだと思う。残酷な日常を見ることで、平和のありがたさを知ることは大切だ。

まだまだ過去の歴史は清算されていない。朝鮮半島の問題は現在進行形である。現実世界の指導者たちをニュースで見て、複雑な感情を覚えてしまう。

こうしたシリアスな戦争映画は単純に楽しめないが、やはり見るべきだと思う。今ではテレビ画面でしか見られないが、それでも十分に伝わってくるものがある。「ブレイブ・ハート」での演出力は未だに健在だった。

ちなみにファースト・ガンダムも自分にとっては戦争映画の一つである。昨夜のBSP「全ガンダム大投票」は面白かった。富野氏は結局ファーストは超えられなかったと語り、好きなシーンで涙ぐんだ。映画「ガンダムⅢ」でのセイラがシャアから届けられた金塊を前に泣き崩れる場面だ。自分も当時、映画館で観て心に残ったシーンの一つだった。富野氏が涙ぐんだのは、声を演じた井上遥さんのことを思い出したこともあるのだろう。戦争が兄妹の仲を引き裂く悲劇。そしてまた、諫山の言葉が想起された。

ガンダムの泣けるシーンで忘れられないのが女スパイ(ミハル)のエピソード。戦時下を舞台にした悲恋映画によくあるストーリーだが、実に感動的だった。その声を演じた間嶋里美とアムロ役の古谷徹が結婚していたことを初めて知った。どうでもいい知識だけど、ちょっと得した気分だった。