ささやかな日常の記録

現在と過去のエンタメなど

緋色の記憶

かつて部下だった彼女との思い出は色々とあるが、2011年3月11日のことは今でも鮮明な記憶だ。

震災の日、2人とも帰宅困難者になった。自分一人だったら無理すれば帰れたかもしれないが、彼女を一人で残すのは忍びなかった。

会社の前の道路は帰宅を急ぐ人であふれていた。そんな人々を眼下に見下ろしながら、2人で長い夜を過ごした。翌朝、ビルの谷間から上る朝陽は忘れられない。

先日、映画「夜空はいつも最高密度の青色だ」を見て、彼女のことを思い出した。看護師でありながら、夜はガールズ・バーで働くヒロイン役が石橋静河。いつもムッとした表情の石橋が、かつての彼女にダブってしまった。

都会で生きることの息苦しさがリアルな感情として思い出された。池松壮亮演じる日雇い労働者のような境遇ではなかったが、心情はよく分かった。そんな二人が広い東京で奇跡のような偶然で出会い、やがて恋に落ちていく。

ストーリーよりも、オリンピックを前にしたリアルな東京の姿が印象的だ。しかし、その先は分からない。緊急地震警報の音が、あの日の記憶を呼び覚ます。

残念ながら、夜空を最高密度の青色と形容するような詩心はないが、美しい映画だと思った。ただ、なんとなく見ていて心地よかった。そして、詩を感じるように、もう一度見たいと思った。

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あの日の朝は緋色の記憶でもある。あの日の夜明けは最高密度の緋色だった。

「緋色の記憶」という2003年に放映されたドラマがある。脚本は野沢尚で、もう一度見たいドラマの一つである。「名探偵コナン」にも緋色シリーズがある。その映画版コナンの「ベイカー街の亡霊」の脚本が野沢だった。今、たまらなく野沢脚本のドラマが見たい。

今夜は西城秀樹の通夜でもある。青春時代の思い出が甦る。「ブルースカイブルー」が好きだった。こちらは青色の記憶である。