梅雨が明けた。しかし、豪雨被害の現状を見るにつけ、言葉を失ってしまう。そんな時に加藤剛の訃報を知った。
加藤と言えば、自分にとっては大河ドラマ「獅子の時代」での苅谷嘉顕役が一番である。理想に燃えた薩摩藩士役は加藤にぴったりだった。やがて鶴田浩二が演じた大久保利通に仕えて、理想の憲法を求めて邁進していく。架空の人物ではあるが、明治維新の熱い人物像は、自分にとっても理想の姿になった。それだけに現在の改憲を巡る動きには複雑な思いがある。
このドラマには菅原文太と大原麗子も出演している。この三角関係もドラマの見どころだった。菅原と大原が亡くなった時の喪失感も大きかった。自分にとっては、これまでに見てきたドラマの中では一番の作品である。
今でも多くの名場面を思い出すことができる。現在放映中の大河「西郷どん」でも描かれるであろう田原坂の死闘も忘れられない。加藤の父親役が千秋実で、母親役が沢村貞子だった。その父と戦場で対峙するシーンは、涙なしには見られなかった。
そして菅原の父親である会津藩士を演じたのが加藤嘉だった。冬の斗南での武士の生きざまは強烈だった。これを見てしまうと、とても「八重の桜」などは見てはいられない。
その加藤嘉が加藤剛の父親になったのが映画「砂の器」だった。この映画での二人の演技も忘れられない。ピアノ演奏がある泣ける映画としても最高の一作である。 公開は1974年10月だったが、この時には見ていない。1983年に公開された「天城越え」の併映作品として初めて観て衝撃を受けた。何よりも音楽「宿命」は圧巻だった。日本の美しい四季と人間の営み。そんな人里の風景がまたも失われてしまった。今夜はこの曲を聴きながら、亡くなった方々を追悼したいと思う。