ささやかな日常の記録

現在と過去のエンタメなど

「峠」とドラマ「花へんろ」

猛暑の中、高校野球の記念すべき100回目の大会が始まった。第3試合の中越(新潟)対慶応(北神奈川)を見た。強豪のシティ・ボーイに弱小のカントリー・ボーイが挑むという構図だ。当然、弱小チームを応援した。当初の予想に反して、なかなかの好ゲームが続いた。しかし、2対2で迎えた9回裏のサヨナラ・ヒットで慶応が勝った。

中越高校は先日記事にした長岡花火の地元である。長岡というと司馬遼太郎の「峠」に登場する長岡藩家老、河井継之助で知られる。幕末、西郷隆盛らの官軍と対峙した知る人ぞ知る人物である。

大昔の大河ドラマ花神」では高橋英樹が熱演していた。今の大河に登場するかは分からないが、滅びの美学を体現する人物として忘れられない。河井は150年前の1868(慶応4)年8月16日に死去。やはり慶応の前には倒れる運命だったのか。慶応と言えば福沢諭吉。「峠」にはフィクションながら江戸城で河井と福沢が出会う場面もある。

河井は学問のために備中松山にも出かけている。同じ松山でも四国松山を舞台にしたドラマ「花へんろ(特別編)春子の人形」を見た。

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昨年末に亡くなった脚本家、早坂暁の最後のドラマ。「夢千代日記」3部作はリアルタイムで見て、もう何度も見ている。しかし、その後に放送された「花へんろ」はなかなか見る機会がなかった。今回、断片的ながら、そのドラマを見ることができ、その深い内容に魅せられた。

その続きで見たドラマだったが、とにかく素晴らしかった。かつて桃井かおりが演じた役を田中裕子が演じ、その娘を芦田愛菜が演じる。これだけで、もう見る価値がある。「Mother」や「anone」の記憶が甦る。

芦田演じる春子が血のつながらない兄を好きになり、彼を追って8月6日に広島駅に立つ。早坂の実体験に基づいているだけに胸に重くのしかかってくる。やはりお遍路のシーンが印象的だ。同行二人の意味が切ない。

芦田愛菜が熱演。表情が「透明なゆりかご」の清原果耶に似ていて、これからの成長がますます楽しみになった。脚本の冨川元文と、音楽の池辺晋一郎という名前が懐かしくも頼もしかった。

個人的に早坂の作品ではドラマ「関ケ原」が大好きだ。映画では「超能力者 未知への旅人」や「北京原人」を書いているのも面白い。先日亡くなった橋本忍の「幻の湖」のようでもあり、興味は尽きない。