ささやかな日常の記録

現在と過去のエンタメなど

ドラマ「夕凪の街 桜の国2018」と言葉の重み

昨日の朝ドラ「半分、青い。」の視聴率が14.6%だったとのこと。これは8時から広島平和記念式典の生中継があったから仕方がない。この朝ドラを楽しみにしている方でも、ないと思ってテレビを消したのかもしれない。中継を見た方は、続けて見る気になれなかったのかもしれない。いずれにせよ、首相の言葉は空しく響き、ドラマの内容も頭に入ってこない。またも「死んでくれた方が良かったかも」みたいなセリフがあったような気がするが、どうでもいい。

そうしたら夜のドラマでも同じようなセリフが語られた。「なんであんた死なんかったん」という言葉で、もう胸が締め付けられた。こちらは深い絶望の中から発せられた言葉で、まるで重みが違う。演じたキムラ緑子は今の朝ドラとはまるで別人のようだ。

そのドラマこそ「夕凪の街 桜の国2018」だ。「この世界の片隅に」と同じく、こうの史代の漫画が原作だが、どちらも未読。そのためストーリーについて比較はできない。どちらも日常の中の戦争が静かに、時に強烈に描かれていく。

昨夜のドラマはわずか1時間10分足らずの尺でありながら、内容は実に濃密だった。2018年の現代と戦後10年を経た昭和30年の広島が主な舞台となる。そこで描かれるのは原爆の後遺症の恐ろしさだ。川栄李奈の演技が凄かった。

戦後10年を経ての発症により、幸せだった日常が侵食されていく。銭湯のシーンは今ではなかなかのチャレンジだっただろう。広島放送局としての意地みたいなものを感じることができた。入浴シーンには隠されたものを晒すという意味がある。それだけに描き方しだいによっては記憶に刻まれるような名シーンが生まれる。湯船に浸かりながらの川栄の独白があまりに切ない。

この街の人は不自然だ。

誰もあのことを言わない。

未だに訳が分からないから。

分かっているのはあの時、死ねばいいと思われたこと。

思われたのに、生き延びているということ。

そして一番怖いのは、

そう思われても仕方のない人間に自分がなってしまったこと。

現代パートの始まりはロードムービ風な展開で面白い。認知症が疑われる父(橋爪功)を娘(常盤貴子)と家出中の姪(平祐奈)が追って広島へ行く。そこで父の知られざる過去を知っていく。父と母の若い頃を浅利陽介小芝風花が演じて、短いながらも印象的だった。桜が舞う中でのプロポーズの場面が可笑しくも美しい。役名は京花で、本当に花が良く似合う。小芝の佇まいがすずにも重なった。

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前述したキムラが橋爪の母で、川栄が姉ということになる。キムラは娘と嫁に先立たれ、病床で前述の言葉を発する。その言葉を聞いた常盤の役は被爆二世ということになる。放射線が後の世代に与える影響についてはまだ解明されていない。まだ終わっていない問題なのだ。それでも、そうした過去を知ったうえで前に踏み出していく姿には希望があった。改めて原作の漫画を読みたくなった。

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