ささやかな日常の記録

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ドラマ「学校へ行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで」

前から楽しみにしていたドラマを見た。てっきり4話くらいの連続ドラマかと思っていたが、90分の単発ドラマだった。一般的な知名度でいったら仕方ない。「あの花」「ここさけ」で通じる人など限られている。

それでも登校拒否だった少女がアニメの脚本家として脚光を浴びる姿は、同じような境遇にいる少年少女に力を与えてくれることだろう。学校が嫌で死ぬくらいなら、登校拒否になった方が良い。学校になんて行かなくたって感性を伸ばすことができる良い見本である。

ただドラマとしては少々物足りなかった。自伝を書いた本人が脚色しているので、どうしても独りよがりになってしまう。もっと面白くできそうな題材だっただけにもったいなかった。

主人公を演じたのが前田敦子で、その母親役が富田靖子。この母子家庭の描写が単なるドタバタで終わってしまっている。同じ母子家庭でも「透明なゆりかご」と比べると一目瞭然である。この母と娘の葛藤から、外の世界への憧れを丁寧に描写すればより共感できたことだろう。アニメ「あの花」にはそうした描写が印象的だった。

上京してからの描写は地方出身者あるあるのエピソードが楽しかった。自分も大学進学で上京して、どんなにか外の世界の自由さを実感したことか。前田が牛丼をうまそうに食べるシーンが良かった。自分も上京して初めて吉野家で牛丼を食べた時の感激は忘れられない。映画やCD物色の前は必ず牛丼で腹を満たしたものである。

やがてVシネマやゲームのシナリオで食べていくようになる。最終的にアニメのシナリオに行きつくが、苦労は尽きない。「ここさけ」ではシナリオがなかなか書けずにスタッフに迷惑をかけてしまう。そんな山場となるエピソードが少しだけだったのが残念だった。

「ここさけ」の実写映画で主演したのが芳根京子だった。映画の出来はともかく芳根の演技は見事だった。前田も熱演はしていたが一本調子で繊細さに欠けていた。これが「海月姫」でもオタク女子を演じた芳根だったら、また違っていただろう。言葉に対する思いや大変さなどを繊細に演じることができたと思う。言葉の力がテーマでありながら、その描写が弱かったのが残念である。

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このドラマでも「あの花」のように花火のシーンが印象的だった。「ここさけ」上映イベントでのトラブルからの流れは良かっただけに、もう少し尺が欲しかった。いずれにしても「あの花」「ここさけ」を見てないと共感できないかもしれない。「あの花」はアニメ映画にもなっているが、できればテレビアニメの方を見て欲しい。

「ここさけ」は実写よりもアニメ映画の方がおすすめである。最近のものだとアニメ「ひそねとまそたん」が最高だったが、万人向けではない。ドラマ「dele」でも音楽を担当している岩崎太整の劇伴が良かった。

ドラマの音楽を担当したのが橋本由香利。アニメやゲームの音楽を多く担当していている。残念ながら岩崎やREMEDIOSのようには印象に残らなかった。それでもドラマでは珍しく5.1サラウンドで制作した音響は効果的だった。

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