ささやかな日常の記録

現在と過去のエンタメなど

あるアニメの脚本家と冬の音楽

寒い。 日中の気温も6度止まり。近くの山では雪が降っている。そんな日の朝、山本優の訃報を知った。享年71歳。

山本は新潟県出身のアニメ脚本家。

ど根性ガエル(1972年10月~)

はじめ人間ギャートルズ(1974年10月~)

タイムボカン(1975年10月~)

といった作品を子供時代に楽しんだ。とにかく数多くの作品を手掛けてこられた。その中でも忘れられない作品がある。1979年4月に放送が始まった「機動戦士ガンダム」だ。全43話中11本を担当している。

アニメ作品における脚本家の位置付けについてはよく分からない。一般的にガンダムと言ったら富野由悠季であり、安彦良和だ。ストーリー原案があり、脚本があり、絵コンテがある。最終的には演出によってすべては決まってしまう。

これまでアニメーターや演出家に注目はしても、脚本家に目が行くことはなかった。そんな意識が変わったのが岡田麿里に注目するようになってからだ。

◉「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」(「あの花」)

◉「心が叫びたがってるんだ。」(「ここさけ」)

◉「ひそねとまそたん

この3本の自意識が溢れ出たような作品で心を鷲掴みにされてしまった。いい年をして恥ずかしい限り。そんな俄かファンが彼女の自伝ドラマの記事を書いた。それがドラマ「学校に行けなかった私が「あの花」「ここさけ」を書くまで」だ。彼女自身が脚本も書いているのに出来としては物足りなかった。期待が大きかったせいもある。読む人のことなど考えず、独りよがりの感想を一気に書いた。

hze01112.hatenablog.com

先日、久々にアクセス解析を見て驚いた。10歳未満の属性が3件もあったのだ。常々10歳未満の属性って必要あるのかと思っていた。それだけに事実とすれば自分の現状認識の甘さを痛感してしまう。どうやら「あの花」「ここさけ」で検索して訪れたらしい。

小学生がスマホかPCで検索してブログの記事を読む。とても自分の小学生時代には考えられないことだった。なによりも、この記事が検索上位に表示されてしまったことが驚きだ。たまたまドラマを見て感想を書く人が少なかったのかも知れない。それでもドラマ放映後の一視聴者のささやかな感想としての意味はあるかも知れない。ただ、この本もドラマも、小学生にはちょっと早すぎる気もする。アニメ「あの花」と「ここさけ」がそもそも対象年齢が高い。それでもアニメとして楽しむ分には問題はない。

上記の「ど根性ガエル」だってそうだ。昔は単純にギャグが楽しかったが、それなりに毒もあった。「教師生活25年」の町田先生よりも多く働いてしまったのだから驚いてしまう。きっとエンタメに触れるのに早すぎるなんてことはないのだろう。

自分も10歳未満でポプラ社江戸川乱歩シリーズに夢中になった。それが今になって「名探偵コナン」に夢中になっている。面白いものに年齢なんて関係ないのだ。出会ったタイミングがあるだけだ。

自分にとって10代で「機動戦士ガンダム」に出会えたのはラッキーだった。その作品には多くの方々が関わってきた。ガンダムでは極限状況下での日常描写が印象的だった。きっと山本をはじめとした脚本家はそんな日常のディテールにこだわったに違いない。

山本がその後に手掛けた「うる星やつら」もそうだった。日常と非日常の混在が何よりも魅力的だった。日常のディテールが豊かであればあるほどに、非日常が強烈になってくる。そうした世界観に脚本家としての手腕が発揮されたに違いない。

アニメ「あの花」もそうした日常描写が実に魅力的だった。演出の長井龍雪も山本と同じ新潟出身だ。「うる星やつら」の高橋留美子もそうだ。

「あの花」「ここさけ」の秩父のように新潟を舞台にしたアニメが見たい。映画やドラマではそれなりに魅力的な作品がある。最近では大林監督の「この空の花 長岡花火物語」があった。その大林監督の「時をかける少女」の冒頭もそうだった。モノクロで描かれたスキー場は駅名にもなっている上越国際スキー場だ。

ドラマでは大河「天地人」、朝ドラ「こころ」が同じ南魚沼が舞台となった。酒蔵が舞台の「夏子の酒」や「藏」なんてのもあった。それでも一番有名なのはやはり「雪国」だろう。

映画では岸恵子の駒子が美しかった。かつて竹中直人中山美穂で「雪国」を撮りたいと言っていたが、もう無理だ。今の朝ドラに出演している松坂慶子も1980年にテレビドラマで駒子を演じた。当時の同級生がロケを見に行ったと自慢していたのが思い出される。その頃の松坂は本当に美しかった。「愛の水中花」もヒットしていた。映画「青春の門」、「蒲田行進曲」も忘れられない。

今、駒子を演じられる女優って誰だろう。ちょっと思いつかないが雪の中に佇むヒロインを見てみたい。それはアニメでも映画でもドラマでも良い。

かつての作品が思い出される。「あの花」の音楽を担当したREMEDIOSの音楽が雪のように静かに流れる「Love Letter」。

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韓国ドラマ「冬のソナタ」はサントラも良かった。

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そしてユーミンの音楽に彩られたバブルの徒花「私をスキーに連れてって」と、先日記事にした「個人教授」。スキー場を舞台のしたラブストーリーはもう成立しないのだろうか。

映画「ある愛の詩」にも印象的な雪のシーンがある。サントラではSnow Frolic、「雪の中の戯れ」というタイトルがつけられている。フランシス・レイの音楽では有名なテーマ曲よりも好きだ。


*"* Snow Frolic *"* ~ from Love Story ~

フランシス・レイの冬の音楽と言えば、「白い恋人たち」も外せない。小学生の頃、スキー場で聴いて体に染みついてしまった。今思えば贅沢な体験だった。やはり、エンタメに触れるには早いに越したことはないようだ。