ささやかな日常の記録

現在と過去のエンタメなど

映画的なドラマ「透明なゆりかご」と「dele」

金曜夜のドラマが凄い。先週も同じようなことを書いたが、改めて書かざるを得ない。10時からのNHK「透明なゆりかご」と11時からのテレ朝「dele」のことだ。まったく違うドラマでありながら、映画的な映像という共通点がある。本来ならば別々に感想を書くべきところだが、その魅力を伝える自信がないので雑感を書く。

「透明なゆりかご」は、第2話で登場したマイコ演じる妊婦の夫のストーリー。演じる葉山奨之は朝ドラ「まれ」でヒロインの弟役だった。

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冒頭の展開はまるで「ER」をみているかのような臨場感に圧倒させられた。幸せの絶頂から不幸のどん底への急降下がやりきれない。怒りから諦めへの変遷は先週のストーリーと同じ。それが妻から夫に代わっただけだが、男の方が総じてもろい。それだけに絶望から立ち直るシーンが感動的だった。

妻の遺したメモにいらつきながらも、救われていく過程が丁寧に描写されていく。そこにはやはりカーテン越しに陽が差し込んでいた。今回のヒロインはあくまでも傍観者。それでも彼のことを必死で理解しようとする。

ドラッグストアでの怪しい動きが最高だ。そこから車で家まで送ってもらい、酒井若菜演じる母親に見つかってのドタバタが楽しい。とにかく無駄なカットがなく流れるような演出が心地よい。画面は豪雨の情報が流れ続けていたが、それが気にならないほどだった。それでも保存版にはできなかったので、再放送を録画することにした。

そして「dele」だが、今週もまた予想を裏切る面白さだった。これは映画ファンにこそ見てもらいたいと思った。寂れた商店街の描写の素晴らしさ。そこにマーラーのアダージェットが静かに流れる。高橋源一郎ダーク・ボガードに見えた。

見つめる対象は美少年ではなく理容師の余貴美子。彼女を何十年も写真館の窓から見つめ続けた後、海に身を投げる。彼女にデータとバラを届けるように依頼して・・・。

 次々と名画のオマージュが見い出される。

「ベニスに死す」

髪結いの亭主

仕立て屋の恋

市民ケーン」等々

その中で「仕立て屋の恋」が大好きな自分としては、窓から見つめるシーンに興奮してしまった。覗きこそ映画の醍醐味だ。そこから恋が芽生えたら、もう最高だ。

ストーリーはどうでもいいくらいだが、きちんとミステリーとしての落ちをつけているのも見事だ。先週のコムアイに続いての高橋源一郎には参った。あの「カルテット」と同様に、何も語らないだけに想像がどんどんふくらんでいく。

高橋の著作は何冊か読んだ。ドラマ以外のテレビでも見た覚えがあるが、番組名が思い出せない。かつてNHKが放送した俳句の番組に出演していたような気がする。そこで取り上げられた俳句が忘れられない。

「戦争が廊下の奥に立つてゐた」という渡辺白泉の句だ。先日見た「花へんろ」にも出てきたので思い出したのだ。なんだか今に通じるような気がして不安になる。

三谷幸喜の最新作が政界をテーマにした映画「記憶にございません!」に決まったとのこと。これが大ヒットしたら第二弾として「丘の上の総理大臣」を作って欲しい。高橋の「丘の上のバカ―ぼくらの民主主義なんだぜ2」が参考になるかもしれない。主題歌はビートルズの名曲「フール・オン・ザ・ヒル」と妄想が膨らむ。