ささやかな日常の記録

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ドラマ「透明なゆりかご」第5話

今朝の「半分、青い。」で待望の石橋静河が登場し、神週は終わった。その後、録画していた昨夜の「透明なゆりかご」を見た。リアルで石橋の母親である原田美枝子が看護師長を演じている。

タイトルは「14歳の妊娠」で、未成年者の出産ということは第2話と被る。演出家も変わり、そろそろ息切れするかと思われた。そんな予想に反して、見事な変化球を見せられて、またも圧倒させられた。その前のドラマなんかふっとんでしまい、すぐにテレビを消した。余韻に浸るために久々にCDを聴くことにした。久石譲が作曲した北野映画あの夏、いちばん静かな海」と「菊次郎の夏」だ。

ドラマの冒頭はアオイ(清原果耶)が海沿いの道を歩いているシーン。なぜ自転車ではないのかってことは問わないことにする。歩きたい気分の時は誰にだってある。そこで後ろをつけてくる少年に出会う。この二人のやりとりが可笑しくて最高だ。アオイは少年を院長の息子だと思い込む。

同じ頃、駅では看護師(水川あさみ)が貧血の女性を介抱する。病院では院長と看護師長が今後の経営方針について話し合っている。前回のことがあって、これまでのやり方に迷いが生じてしまったのだ。ここで9年前の二人が担当した妊婦のことが描かれる。それがタイトルの14歳の少女のことだ。

演じた花田優里音がアオイの母(酒井若菜)に似ていたので、一瞬まさかって思ってしまった。

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純粋で夢見る少女の感じが良く伝わってきて、複雑な思いに駆られてしまう。未だにこういう少女を騙す男は多い。両親は当然、○○を勧めるが少女は産むと言ってきかない。やがて母が折れる。しかし、甘やかしていた態度は消え、厳しくあたるようようになる。

産むのはあなたよ

体のことは自分できちんと管理しなさい

いいわね

あなたが赤ちゃん守るの

今度はマリがママになるのよ

 長野里美が演じた母の気持ちが痛いほど伝わってくる。

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それだけに、その後に描かれる子育ての姿に胸を打たれる。こんなに短い描写でさえ「半分、青い。」にはなかった。演出家が変わったのに、優しく包み込むような光の描写はそのままだったのが嬉しい。

産科の先生は人生そのものを見守る責任があるという理想が素晴らしい。現実ではなかなか難しいと分かってはいても、そういう先生が居て欲しいと願わずにいられない。瀬戸康史は童顔なれども、そうした理想を体現していて見事。その彼を優しく見守り続けている看護師長を演じる原田美枝子もそうだ。この回では二人の関係性も描かれて印象的だ。

先日、実際に成増にある産院を舞台にしたドキュメンタリーを見た。ドラマと同じような出来事が日々繰り広げられている。未成年者の出産も取り上げられていた。丁寧に診察を繰り返していく先生の姿が印象的だった。そこにはドラマと同じような喜びと苦しみというリアルな感情があった。

やがて、別々に語られていたストーリーが病院前で交錯する。それぞれの誤解が笑いを生み、やがて深い余韻をもたらす。これまでも現実と虚構を曖昧なままに描写することで想像が広がった。今回は過去エピソードがそのまま現実に影響を及ぼし、その9年間をリアルに想像できた。まさに人生そのものだ。

とにかく、このドラマはストーリーよりもキャラクターが魅力的だ。沢山の人の思いがつまっている。演じているキャストも実際に生きているかのように素晴らしい。冒頭の清原果耶の不機嫌な表情など絶品だ。あのドラマのヒロインとは次元が違う。これはスタッフがキャラクターに愛情を持っているかどうかの違いでもある。それは視聴者にも伝わることで、視聴率では測れない。今回も自分にとっては愛(すべき)回となった。