今夜の「アンナチュラル」 見るべきか、見ざるべきか、それが問題だ。
前話でUDIラボの連帯は六郎の帰還によって完成したといってもよい。これで終わりだったら、きれいなハッピーエンドになったことだろう。自分にとっても、この第8話がこれまでの完成形だと思っている。残りの2話はいわばエピローグであり、番外編といってもよい。永遠の問いに答えなどないのだ。
それでも視聴者の興味は中堂の抱える真相にこそあるのも事実。ネットでは犯人は誰かといった話題で盛り上がっている。正直「アンフェア」みたいな結末だったら嫌だなって思う。自分だけかもしれないが、そういう謎解きを求めてはいない。中堂やミコトが真実と向き合って、どう生きていくかに関心がある。それだけに残り2話で、どう着地させるのか期待と不安が入り混じる。
これだけキャラクター設定がしっかりしていればシリーズ化は可能だと思う。でも、このクオリティの脚本を維持するのは相当大変だと思う。初のオリジナル脚本で、これだけのものを作ってしまった。次回作のハードルはかなり上がってしまったことだろう。脚色と脚本のどちらもいけることになった訳で、ますます次回作が楽しみになった。「アンナチュラル」の続きも見たいけど、全く新しいドラマも見たい。視聴者は欲張りなのだ。
謎といえば「ピンクのカバ」は気になる。英語ではPink Hippopotamus なんかカッコいい。Pink~の名前で好きなアーティストや曲も多い。
Pink Lady
Pink moon
Pink spider
Pink Lemon はないけれど、なんかイメージが膨らむ。
レモンのイメージも人によって様々だろう。個人的にはさだまさしの「檸檬」が青春時代に重なって印象深い。高村光太郎の「レモン哀歌」も忘れがたい。トパーズ色の香気。そこに米津玄師の「Lemon 」が加わった。
久しぶりにiTunesで楽曲を購入した。ドラマ関係だと吉井和哉の「STARLIGHT 」以来になる。2015年1月から放映された「山田孝之の東京都北区赤羽」のエンディングテーマだ。基本、歌よりも曲なのだが、たまにこういうことが起きる。特にドラマの主題歌を購入することは珍しい。
男性ボーカルだと、あの「ラブ・ストーリーは突然に」までさかのぼってしまう。1991年1月から放映された「東京ラブストーリー」の主題歌だ。当時まだ細長かったCDシングルを購入したのも懐かしい思い出だ。
女性ボーカルだとDo As Infinitely の「Yesterday & Today」以来となる。2000年1月から放映された「二千年の恋」の主題歌だった。アルバム収録曲になると色々とあるが、シングルではこれだけだ。
そんな珍しいアクションを起こさせてしまったドラマだけに大切にしたい。
この歌は2018年の雪景色と「アンナチュラル」と共に記憶に刻まれることだろう。
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(追記)
またしても「ひよっこ」だった。今度は三男の兄、太郎(尾上寛之)だ。こう書いても、分かる人にしか分からないだろう。
尾上は同じ朝ドラでも「カーネーション」での演技が鮮烈だった。戦場での体験によって心を病んで引き籠ってしまう。そうした記憶があるから、何故って思っていた。一般的な知名度から考えて絶妙なキャスティングだ。
結局、我慢できなくて昨夜の放送を見てしまった。正直なところ、複雑な心境である。予想はしていたけれど、見たかったのはこうした展開ではない。金魚の事件はどうしたってサイコ・スリラーになってしまう。この手の映像作品には過去に傑作がありすぎて、どうしても見劣りがしてしまう。
それでも脚本は十分に面白い。冒頭の「アンナチュラる」から言葉が意味を持つことは分かっていた。ホルマリン(formalin)が出てきたときは、てっきりカバ(hippopotamus)のアナグラムかと思ってしまった。
それでも、ここまで広げてしまうと一人の犯行では難しくなってしまう。残り1話で、共犯者とか出てきたらどうなるのだろう。ミコトたちの結末を描く余裕がなくなってしまわないか心配だ。
ただでさえ、この第9話はこれまでの雰囲気と微妙に違う。事件の真相を追う展開だから仕方がないとはいえ、ちょっと違和感を覚えてしまう。ただ、結論は次回を見てみないと出すことはできない。
ここにきて中堂の過去が回想で描かれた。絵本作家となった夕希子との幸せな日々に「Lemon」が流れる感動的な場面。だけど、このシーンが個人的にはちょっと残念だった。不謹慎ではあるが、亡くなった姿が儚なくも美しすぎた。まるで「ツイン・ピークス」のローラ・パーマーのように。こちらが勝手に膨らませてしまった幸せな日々との落差があった。
昨夜の記事にも書いたが「Lemon」から「レモン哀歌」を連想した。高村光太郎と智恵子の関係だ。智恵子は画家であり、実家は造り酒屋。夕希子は絵本作家であり、苗字は糀谷。病床での切り絵(花)を通したコミュニケーション。そんな二人の姿が重なり合う。左は智恵子作、右は夕希子作の「花」。
ピンク色の花にレモン色の花が交錯する。優れたドラマは過去(古典)まで引き寄せてしまうのだろうか。
淋しい人生でも、最期くらい花になったっていいじゃない。
あったかくて、いい匂いのする場所で、きれいな花になれたら幸せだと思わない?
そんな幸せな日々を思いながら、彼女に向き合う中堂の慟哭はもう堪らなかった。それだけに中堂の結末がたまらなく気になる。番組ホームページで演出の塚原あゆ子は最終回について次のように答えている。
五者五様(ミコト・中堂・六郎・東海林・所長)の結末を、野木さんがとても真摯に描いてくれて、役者さんたちがうまく表現してくれています。
よくある一件落着的なラストではなく、UDIらしい結末になっているので、事件の謎解きと共にそこをぜひ見ていただきたいです。
さすがに分かっていらっしゃる。何よりも安心だ。でも最終回の演出は誰になるのだろう。これまであまり演出家を意識することはなかったが、ちょっと気になる。塚原の演出した1・2・4・5・8回と、それ以外の微妙な違い。野木の理系的なかっちりとした脚本に塚原の文系的な情感がうまくミックスされているような感じは圧倒的だった。とにかく泣いても笑ってもあと1回。楽しみに待ちたいと思う。