ささやかな日常の記録

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大草原の小さな家「ローラの祈り」

朝から真夏のような夏空になっている。そんな中、朝ドラ「なつぞら」ではヒロインの転機が描かれた。

娘が見たいと言った作品を作るために長年お世話になった会社を辞めてしまう訳だが、あまりに周りの物分かりが良いので興ざめしてしまった。

それに対して「おしん」ではヒロインの思いは、姑にことごとく否定されてしまう。そうした葛藤にこそドラマがあるのに、そこを描かないから感情が動かない。

それでも、それをアニメ化したいという思いは分かる。その作品こそが「大草原の小さな家」だからだ。

なつぞら」での北海道編は「アルプスの少女ハイジ」への伏線かと思っていたが、開拓者の生活ということでは「大草原の小さな家」の方が分かりやすい。

自分も久々に「大草原」の初回を見た時に、そんな感想を書いた。草刈正雄演じる泰樹と「大草原」の父親であるチャールズは重なる。

そんなチャールズの葛藤が描かれた長編「ローラの祈り」がBSで「なつぞら」に続いて放映された。

 

オープニングで妻キャロラインの妊娠が告げられるが、史実を知っていれば悲劇の予感しかしない。チャールズは今度こそ息子だと信じて大いに喜ぶ。そんな父親の姿を見て、ローラは淋しい思いを募らせていく。

そして、実際に男の子が産まれたが発育が思わしくない。周りが心配する中、ローラは屈折した思いからお祈りを避けてしまう。結果的に息子は夭折してしまうが、そのことにローラは自責の念を抱いてしまい、牧師から話を聞いてある行動を取ってしまう。

もう、これだけで1話が作れてしまう内容ではあるが、これではあまりに救いがなさすぎる。子供を喪って嘆く、チャールズとキャロラインが痛々しい。

お涙頂戴的な安易なドラマだったら、ここをクライマックスにしただろうが、さすがにそれはなかった。ここからドラマは予想外の展開を見せていく。

いわば、信仰の物語が実に分かり易く語られていく。ローラは神様に自分の思いを伝えるために天に近い山に登る。そこでジョナサンという男に出会い、神の存在を身近に感じていく。

彼はローラのために木彫りの十字架を作ってやり、それが奇跡を呼ぶことになる。天の涙による川で身を清めるローラが初めて美しいとも思えてしまった。普段の三つ編みをほどいたローラと男の自然の中での交流を見て、視聴者も癒されていく。

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その男を演じたのが名優アーネスト・ボーグナインというのだから堪らない。個人的には映画「ポセイドン・アドベンチャー」で妻を喪い、「リンダ!」と叫ぶ姿は忘れられない。この映画でもジーン・ハックマン演じる牧師との対立を通して信仰を問う作品だった。

そんな男が神の意志をローラに優しく語りかける。そして傷ついたハトが空に飛び立つシーンなどはまるで「ブレードランナー」みたいだった。きっと宗教的なモチーフが散りばめられているのだろう。岩山の景観などもいかにもそれっぽい。デビッド・ローズの音楽もまるで「ベン・ハー」のように響いた。


Ben-Hur (7/10) Movie CLIP - Ben-Hur Meets Jesus (1959) HD

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ローラがこんな所まで一人で歩いてこれたのかとか、突っ込みところもあるがそれを言っては野暮になる。何よりもチャールズ・インガルス・ジュニアのエピソードをさらりと流して、信仰の物語にしたあたり見事な作劇である。

そして前回の「メアリーの失敗」におけるメアリーと母親の和解と対になるようにローラと父親の和解としたあたりも印象的だった。

脚本はどちらもチャールズを演じているマイケル・ランドン。今回は脚本だけでなく監督も務めているあたり、思い入れも大きかったのかもしれない。

ただ、一つだけ残念だったのが教会に鐘がなかったこと。こちらの方が撮影は早かったのだろうが、ちょっと気になってしまった。

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俯瞰で撮った大自然の映像も圧巻だった。

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