ささやかな日常の記録

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大草原の小さな家「オルソン家の出来事」

夫婦喧嘩は犬も食わない。それもオルソン夫妻の喧嘩だったら、近寄るのも嫌だ。それでもチャールズとキャロラインをはじめとする街の人々は二人の仲を心配して、色々と画策をする。まるで舞台劇のような喜劇に、単純に笑いっぱなしだった。

原題は「FAMILY QUARREL」、訳すと内輪喧嘩、内輪揉めと言った意味になるが、骨肉の争い、血肉の争いと言った意味もあり物騒である。なんだか映画「ゴッドファーザー」を思い出してしまう。ドラマ自体は牧歌的ではあるが、西部開拓時代の背景には先住民との戦いなど物騒なことも多かったはずだ。その辺の事情は初回の「旅立ち」で少し描かれている。

そんな大仰なことではないにしても、家庭における争いも悪化すれば血を見ることもある。愛し合って結婚した二人でも、価値観の違いは生じてしまう。それが商売のことになれば当然、自分の主張に絶対的な自信を持っているだけに和解は難しい。

キャロラインが持ち込む卵の値段を巡っての争いはいつものことではあるが、ちょっとしたことで火に油を注ぐことになる。それは誰しも思い当たる事があるはずだ。そんな日常の出来事をオルソン夫妻というユニークなキャラクターで描くから面白くないわけがない。卵を浴びせられた話を聞いて大笑いするチャールズに、責任を感じて悩むキャロラインの対比も面白い。

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我の強い妻に、穏やかな夫、そして子供がネリーとウィリーというのだから堪らない。でも、この頃のネリーはまだ大人しく、メアリーに対しても弱音を吐く姿はチャーミングだ。それに対してウィリーはローラが優しく肩を抱こうとするのを拒絶するのが可笑しかった。

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牧師や、ベイカー先生の画策は失敗に終わるが、チャールズとキャロラインがそれぞれの思いを聞いてやる事で、事態は改善する。なんだかんだ言っても、お互いのことを尊敬しているのだ。そんな二人の話を優しく聞いてやるチャールズとキャロラインが素敵だ。特にキャロラインは普段あれだけ嫌味を言われているのに、オルソン夫人に寄り添う姿は、実に魅力的だった。

ただオルソン夫人の声はやはり昔の吹替のインパクトが強かっただけに、少々違和感がある。当時の中村紀子子(きねこ)の声が忘れられない。オルソンの声は草薙幸二郎で、「夢千代日記」での暴力団幹部の役が印象に残っている。

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そして冒頭とラストに登場する犬を見て「刑事コロンボ」を思い出した。犬の種類は分からない。「コロンボ」では無芸大食のバカ犬として描かれているが、ここでは血統書付きらしい。オルソンが家を出て行く時も連れて行っていた。そのホテルが郵便局の二階というのも面白い。

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コロンボ」では「ウチのカミさん」というセリフが有名だが、ドラマに夫人は登場しない。「ミセス・コロンボ」というドラマは作られたが、もう忘れてしまった。そこで、コロンボのカミさんがオルソン夫人のようなキャラだったらと想像してみると可笑しくて仕方がない。

とにかく当時のドラマはキャラクターが立っていたから、色々と想像がふくらむ。ベイカー先生にそそのかされて、オルソン夫人を口説いたハンソンの姿は描かれなかったが想像するだけでも可笑しい。

これからもオルソン夫妻の喧嘩などは描かれ続けるだろうが、見ていて飽きる事はないだろう。それでも今回は大人だけの目線で描かれたのがユニークだった。子供には面白くなかっただろうが、大人だからこそ楽しめるようにも作ってあるところが凄いと改めて思った。

それに対して今のドラマはどうだろう。喧嘩どころか、心の葛藤さえ 描かれない事が多い。今週の「なつぞら」では消息不明だった妹の千遥の現在が描かれた。演じた清原果耶の熱演もあって、これまでよりは見応えはあったが、夫婦間の問題は実にあっさりと解決してしまい物足りない。せっかく夫役に渡辺大を出したのだから、もっと夫婦間のゴタゴタを見たかった。犬は食べない夫婦喧嘩も、テレビの中ではご馳走なのである。