ささやかな日常の記録

現在と過去のエンタメなど

大草原の小さな家「サーカスのおじさん」

今回の物語はよそ者である「サーカスのおじさん」が主人公。サーカスと言っても、団長とチンパンジーとカラスだけ。その団長を演じるのが朝鮮戦争時の日本を舞台にした映画「サヨナラ」でアカデミー助演男優賞を受賞したレッド・バトンズ。個人的には「ポセイドン・アドベンチャー」の印象が強い。「ポセイドン〜」と言えば、あの「ローラの祈り」に出演したアーネスト・ボーグナイン」が思い出される。それだけに今回も奇跡の物語であって欲しかったが、残念ながら苦い現実を見せられて終わってしまった。

男が処方する薬を巡って、色々な憶測が飛び交う。奇跡を信じたい人と、それを認めない人。それは今でも繰り返されている現実だ。男がどのような目的で薬を飲ませていたかははっきりと描かれてはいないが、それが男の生き甲斐であったのは間違いない。それは善にも悪にもなり得る。以前、奇跡を目の当たりにしたローラはそれを盲目的に信じてしまう。猫に目が眩んで、瀕死の重傷を負ったジャックを救うために薬を飲ませたいと思うのは当然だ。それに対してチャールズが取った行動が正解だったのかどうかは分からない。ただ現実を突きつけるのは、信仰にも反するような気もする。

盲目的に奇跡を信じるというのもどうかと思うが、嘘も方便ということもある。特にサーカスやマジックは嘘を楽しむエンターテイメントである。そんなサーカスを生業とする男に対して人々の目は厳しすぎるような気もした。そんなことを考えてしまう自分は単に騙されやすい人間ということでもある。エンタメで騙されるのは快感であるが、現実で騙されるのは不快感がいつまでも残る。

それにしても、いつの時代でも治療を嫌がる人はいるもので、ハンソンの頭痛やオルソン夫人の盲腸の痛みが偽薬で消えてしまうというのが可笑しかった。自分も病院に行くのが苦手なので、そうした気持ちはよく分かる。確かに信じることで救われることはある。それでも、そうした気持ちを利用して騙す悪人がいる以上、気をつけなければならないのも事実である。

今回の演出はエドワーズを演じているヴィクター・フレンチ。顔に似合わず、丁寧な演出で面白かった。サーカスのチンパンジーやカラスなどの扱いも見事。それにジャックと猫のエピソードがクライマックスにつながるとは思わなかった。動物の扱いが巧みという意味では、顔に似合っていたのかもしれない。

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