今回も実に渋くて通好みのストーリーだった。冒頭から西部劇のような勇壮な音楽が鳴り響き、それだけでワクワクしてくる。農学を学んだジョーが、小麦粉からトウモロコシの栽培への転換を勧める。トウモロコシの方が安くて儲けが大きいらしい。そのあたりの事情については「救われた町」でも描かれている。
その話に賛同したチャールズが、町の男たちにも勧めたことによって、実現に向けて動き出す。皆から出資金を集め、ジョーが種の買い付けに出かける。その帰りに馬の暴走によって荷車は落下、ジョーも足を挟まれて動けなくなってしまう。このエピソードの演出は迫力があって見事。動けないジョーの前にトウモロコシを狙ってカラスが集まってくる。まるでヒッチコックの「鳥」のようなサスペンスを演出したのは「ジョーンズおじさんの鐘」のレオ・ペン。
町では予定日を過ぎても帰らないジョーに、騙されたのではないかと苛立ち始める。オルソンの店の前で、その矛先はジョーの妻に向けられてしまう。その非難の声にメアリーが「神様が許すはずがない!」と怒るシーンが印象的だ。身重の体で走るシーンでは、こちらもハラハラしてしまった。
そして、ついにチャールズが探しに出かけることになる。ジョーの足跡を追って、あちこち訪ねて回る。そこで初めて保安官が登場する。ウォルナットグローブにはいないみたいだが、大きな町にはちゃんと存在しているのだ。しかし、なかなか見つけられずに事故現場も通り過ぎてしまう。
もうダメかと思ったところで、ある男に出会い、発見の糸口をつかむ。最初、逃げた馬を盗もうとしていたので、なかなか言い出せなかったが、命がかかっていると知って正直に告白する。そんな男に、悪者になりきれない小心者の悲哀を感じてしまい、妙に印象的だった。
これはもう男のドラマである。一度交わした約束を必死で守ろうとする男と、それを最後まで信じようとする男。ジョーとチャールズの姿が素敵だ。そんな二人に疑いの目を向けた男たちも、最後にはその思いに応えようとする。
原題はMoney Crop、訳すと換金作物で、現金収入を目的として作る農作物のこと。要は自給用ではなく、儲けが第一だから男たちもあれほど熱くなっていた訳である。このタイトルからして、子供向けではない。
ただ何故、今回の邦題は「ジョーおじさんの約束」ではなかったのだろう。これまでの邦題は大人に対して呼び捨てはなかった。
「エドワーズおじさんがやってきた」
「おめでとうエミーおばあさん」
「ジョーンズおじさんの鐘」
「サーカスのおじさん」
「ジョンおじさんの悲しみ」
など、個人的には少々違和感があったが、子供向けにやわらかい印象にするためには仕方がないかと思っていただけに、ちょっと不思議である。それだけ今回は大人向けということだったのかもしれないが、単に前回のジョンと似ていたので差別化しただけかもしれない。ジョーンズ、ジョン、ジョーと確かに紛らわしい。
それでもローラとメアリーのベッドでの会話は楽しい。「赤ちゃんにお腹を蹴られるのが痛そう」と言うローラに、メアリーは「靴を履いてないから大丈夫」と言う。そしてローラは(蹴られた)ウィリーに対して、「靴をはいてなければいいのに」って言う流れがもう最高だった。