ささやかな日常の記録

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大草原の小さな家「吹雪の中」

自然はいつだって過酷だ。この秋は何度もそんな場面を見せつけられてきた。ドラマ「大草原の小さな家」はそんな自然の中で生きる家族の物語だけに、過酷な状況は珍しくはない。今回の「吹雪の中」で描かれた状況も厳しいものだった。

原題はSurvival、訳すると「生き残ること」となり、まさに雪との戦いというサバイバル・ドラマが展開する。一方で「生き延びた人」という意味もあり、最後の一人になった先住民スー族の男を指しているようでもあり、人間ドラマとしても見応えがあった。

春、家族5人でマンケートへ出かけた帰り道、馬車の中の描写が楽しい。あの「母をたずねて三千里」や「大草原の少女ソラ」を思い出してしまう。でも、ローラは早くジャックに会いたいと思っている。

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ところが、季節外れの吹雪で動けなくなってしまう。なんとか空き家を見つけて暖をとるが食料は少ない。吹雪の中、チャールズは狩に出かけて、遭難してしまう。そんな彼を見つけて助けたのがスー族の男レームホースだった。

一方、その男を追う保安官が凍傷気味になって、女だけの家に飛び込んでくる。この雪ではチャールズは助からないという保安官に対して、毅然と反論するメアリーは相変わらず凛々しい。

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そこにチャールズを連れた男が訪れる。狭い家の中で敵対する者同士が鉢合わせするというシチュエーションに、いやが上でもサスペンスは高まる。

最近見た映画ではタランティーノの「ヘイトフル・エイト」を思い出した。

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そこで語られることは先住民との戦いの歴史である。1862年にスー族による暴動があった。それから16年、先住民は土地を追われて激減した。そんな彼らをただ先住民ということだけで追う保安官。リンカーンという名前も出てきて、当たり前のことながら実際の出来事なんだと思わざるを得なかった。

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そんな先住民との交流で忘れられないのが映画「ダンス・ウィズ・ウルブス」である。

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かつての西部劇では先住民はインディアンと言う悪役として描かれてきた。自分の少年時代もそういう認識だった。それがいつから変化してきたかは分からないが、早くもドラマで差別的な偏見を払拭するような描き方がされているのを見て、改めて凄いと思った。

そんな難しい話は別にしても、単純にストーリーとしても面白い。どちらが正しいということはなくて、どちらにも正義がある。単純に分かりあえなくても、救われたという恩義に報いることは大切なこと。最後に保安官がとった行動に救われる。

そしてスー族の男は一言も話さない。そこには正しい行動があるだけである。その心情は分からないが、その目がすべてを語っていたような気がする。その佇まいはまさに孤高の存在であった。映画「復活の日」の草刈正雄を思い出した。これでまた朝ドラ「なつぞら」とつながってしまった。

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演出はウィリアム・F・クラクストン。マイケル・ランドン、ヴィクター・フレンチ、レオ・ペンと共に多くのエピソードを担当しており、もっとも手堅い演出といった感じだろうか。場面によってはセット感が残念だったが、厳しい雪の描写と室内の温かな描写の対比などが印象的だった。個人的には「プラム・クリークのクリスマス」を思い出させる窓のシーンや、キャリーがケンケンパで遊ぶシーンなどが大好きである。

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閉ざされた空間が舞台だけに、その凝縮感は圧倒的だった。雪が大嫌いなくせに雪景色が出てくる作品は大好きである。それだけに今回も名場面がありすぎて選ぶのが大変だった。

寒さのため三姉妹が毛布にくるまっている。キャリーだけが別の方向を見ているのが可愛い。

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髪をほどいて、セーターのような服を着ていたキャロラインが妙に艶っぽかった。暖炉に美女は良く似合う。外に出ようとするチャールズの顔にマフラーを巻き付けるキャロラインはまるで姉さん女房のような貫禄があった。

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雪原を走る馬車。並んで座るチャールズとキャロライン。

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残り2話にして、この圧倒的な面白さは驚きだ。大人向けのエンターテインメントとしても申し分ない。当然、子供が見ても学ぶべき点は多いし、単純に面白い。素直に多くの人に見てもらいたいドラマである。