4Kテレビで初めて4K化された映画を見た。多くの人は画質にそんなにこだわりなどないと思う。4K対応テレビで地上波を見ても、十分にきれいである。それでも4Kテレビが最大の効果を発揮するのが、4Kで制作された番組であることは間違いない。
しかし、現状では4Kで制作された番組は圧倒的に少ない。BS4KではNHK以外は、ほぼ通常のBS放送と同じである。そのNHKですら、まだまだソフト不足で、リピート放送ばかりである。だから、映画マニアが4Kで映画を見たいと思っても、まだまだ満足できる状況にはないということである。それでも思い出の映画が4K化されたとなれば、見たいと思うだろう。
そんな訳で、初めて4K化された映画を4Kテレビで見ることができた。先日「大草原の小さな家」で描かれた狩りのシーンを見て思い出したばかりであった。それが高校生の時に映画館で観た「ディア・ハンター」だった。4K版のソフトも発売されている。
映画は1979年3月に日本公開されたが、地元の映画館で10月10日(水)に観ている。だいたい地方での公開は半年遅れだった。祝日だったので友人と一緒に出掛け、2本立てだったのに、もう一度見ている。これだけで6時間になる訳で、ほぼ半日を費やしたことになる。改めて若いって凄いと思うとともに、衝撃の大きさがうかがえる。
当時書いていた映画メモには★★★★★とある。満点ということで、当時の感想を載せておく。
とにかく重々しい感動と衝撃を受けた。アカデミー作品賞を取っただけのことはある。ベトナム戦争がアメリカの若者に与えた傷跡を思った。戦地でのロシアン・ルーレットのシーンは目を覆いたくなるほどの迫真の演技であった。
そんな地獄から帰国して再び狩りに出かけるが、以前とは何かが違う。その山奥で鹿を撃とうとするシーンの美しさは、まさに圧巻だった。そして一人帰国していない友を探して再び戦場に旅立ち、その友と対決をして過去を思い出させようとする。
かつての友達が集まり、友を思い出しながら合唱する。ギターの悲しい音が胸に染み込んだ。戦争の恐ろしさが刻み込まれ、その友情が記憶に残った。とにかく、今まで見てきた映画の中では最高の一本だった。
ちなみに同時上映だったのが「アバランチ・エクスプレス」で、ロバート・ショーとマーク・ロブソンの遺作ながら、その後見る機会がないままである。星も★★★だった。
それで久々に4Kで見直した感想だが、とにかく映像美に圧倒させられたということに尽きる。多くの人にとっては最初の1時間は退屈かもしれないが、ここが実に面白かった。ロシア系移民のペンシルバニアでの日常が丁寧に描かれていく。その教会内部の豪華な装飾品などが鮮やかに映し出されていく。これこそ4Kの威力である。
そして壮行会でのダンスシーンでの視線の交錯。演じたロバート・デ・ニーロ、クリストファー・ウォーケン、メリル・ストリープの三角関係と、ジョン・カザールとジョン・サヴェージ の悩める若者像など、とにかく演技を感じさせない演技が凄い。
そして高校生の時も圧倒された自然描写の美しさ。ロケ地は分からないが、カナダ国境に近いせいか山には氷河があるようにも見える。霧が立ち込める中での鹿との対峙は荘厳ですらある。戦場に行く前と後での心境の変化が、自然の中で描かれて印象的だ。自然は変わらなくても、人の心は変わってしまうということ。
当時、学級の文集を編集して、この映画のことを書いた。当然、その年のベスト1だった。ちなみに2位が「銀河鉄道999」、3位が「エイリアン」だった。それがオールタイムのベスト10では2位と3位が繰り上がった。やはり、ロシアン・ルーレットのシーンは当時は衝撃的だったが、今ではあざとさしか感じない。
しかし、映像と共にさりげない音楽の使い方は見事だ。スタンリー・マイヤーズ作曲のテーマ曲「 カヴァティーナ」の美しさは忘れられない。当時はギターを演奏したジョン・ウィリアムズを「スター・ウォーズ」の作曲者と同一人物だと思っていた。
John Williams - Cavatina (Live 1979)
ロシア民謡の「カチューシャ」なども流れるが、やはり「君の瞳に恋してる」が印象的だ。もちろんボーイズ・タウン・ギャングではなくて、映画「ジャージー・ボーイズ」でも描かれたフォー・シーズンズのフランキー・ヴァリの歌である。そして「ゴッド・ブレス・アメリカ」が追悼の歌となる。当時は分からなかった歌の意味も多少は理解できるようになった。それでも、感受性はだいぶ衰えてしまったようである。