「父と子」はジョンとエドワーズが父と子の絆を結んでいくストーリー。同時にメアリーがジョンに惹かれていく恋の芽生えも描かれている。
チャールズが持っていたエマーソンの著作をジョンに貸すために出かけていくメアリーを見て、ローラは「なぜ眼鏡をかけないの」と冷やかす。そして「きれいな青い目っていいな」とポツリ。
そのエマーソンについて調べてみると、1803年ボストン生まれの哲学者、詩人など多くの肩書を持った教養人とのこと。奴隷制廃止論者でもあり、チャールズの思想形成に影響を与えたということなのであろう。イギリスに出かけた際には、ワーズワースとも出会っているとのこと。
またメアリーとの会話の中ではバイロン卿という名前が出てきたが、こちらは1788年ロンドン生まれの詩人である。多くの女性と恋愛したイギリスのロマン主義を代表する詩人で日本でも良く知られているとのことだが、知らなかった・・・。
また、グレイスがジョンの誕生日にプレゼントした本の作者がジョン・キーツ。1795年ロンドン生まれで25歳で亡くなっている。9歳で父を落馬事故、15歳で母を結核で亡くしており、そのような生涯がドラマのジョンのキャラクターにも反映されたのかもしれない。
To Autumnという詩がある
Season of mists and mellow fruitfulness,
Close bosom-friend of the maturing sun
その冒頭を直訳すると
霧の季節とまろやかな実り
成熟する太陽の胸の友
きちんとした翻訳では
霧と熟れたる豊穣の季節よ
恵みあふれる太陽の親しい友だちよ
この冒頭だけでも、シンプルでありながら美しい。ネットで全文を読んでみたが、素直に素晴らしいと思った。「大草原の小さな家」の世界観にもぴったりだ。
このように、ちょっとした知識があるとドラマをより楽しめる。ジョンが書いている詩を具体的に想像することができる。当時はこうした詩が、現在のラブ・ソングみたいなものだったのかもしれない。
なお、ジョン・キーツは1817年ワイト島へ出かけ、その年に処女詩集を出版している。ワイト島といえば個人的にはロック・フェスを思い出してしまう。そしてエマーソンとキーツから連想するのがキース・エマーソンという訳で、ELPの伝説のデビューライブが行われた場所ということでも忘れられない。
詩も音楽も若者が熱狂することでは、変わらないのかもしれない。
Emerson Lake & Palmer Pictures Exhibition Live 1970 Isle Of Wight