シーズン2の「長く危険な道」の原題はThe Long Road Home。長く危険な道の行きつく先はやはり家(Home)ということである。チャールズの危険な仕事についてはシーズン1の「遠くで働く父さん」でも描かれているが、こちらの原題は100 Mile Walkで100マイル歩いてチャールズは家に帰って来る。シーズン3の「愛と祈り」ではメアリーのために再び命がけの仕事に出ることになる。この3話は危険な仕事3部作ともいえるが、今回のがラストシーンを含めて、個人的にはもっともお気に入りである。
「暴走する車両」に続いての、ほぼオール・ロケーションのスケールが圧倒的。そこをニトロを積んだ馬車がゆっくりと行くことのスリル。倒木を避け、丘を登り、温度が上がらないように気を付けて、ようやく一段落したと思ったら強盗が現れるという過酷な状況に目が離せない。
そこに人種差別の問題をさらりと織り交ぜる作劇の見事さ。今日のニュースでも(ドラマの舞台でもある)ミネソタ州ミネアポリスで警官が黒人男性を拘束したことによる死によって全米でデモになっていると伝えていた。今も昔も差別の問題は変わらない。
ドラマの中で、ペアを組むのが黒人のヘンリーと自称アイルランド系の白人であるマーフィ。マーフィはヘンリーから水筒を渡されても口をつけようともしない。それでもヘンリーはまるで動ぜず、当たり前のように接していく。
ところが最初、ヴィクター・フレンチ演じるエドワーズから普通にコーヒーカップを渡されて、ちょっと戸惑う表情が実に印象的だった。差別されていることには慣れているが、逆に普通に接しられると戸惑ってしまうという複雑な心情をルイス・ゴセット(ジュニア)が見事に演じていた。この二人は1982年に映画「愛と青春の旅立ち」に出演し、ルイス・ゴセットはアカデミー助演男優賞に輝いている。
個人的には1977年にルイス・ゴセットが出演した「ザ・ディープ」も印象的で、どちらも当時サントラ盤レコードを購入している。
The Deep (1977) - 'Main Title' scene [1080p]
マーフィを演じたリチャード・ジャッケルは、差別主義者の嫌な感じを見事に演じていたが、シーズン7の「ある少女」にも登場する。最初に見た時には気がつかなかったが、2回目になると色々と新たな発見があって面白い。
この回でも列車のシーンが印象的。そもそも一等車、二等車という区分もそうだが、それを運用する車掌も差別的で、鉄道工事を請け負う労働者を見下している。そこで100ドルを手にしたチャールズたちが2ドルで一等車に乗ろうとする。
ほぼ全編、男のドラマではあるが、心配するキャロラインの心情も描かれているのが見事なところ。そのため自分の誕生日さえ忘れてしまい、まさにサプライズに驚いてしまう。さりげなく、こういうシーンがあるとホッとする。
この後のエピソードで建国百周年が描かれるので、ドラマの中では1875年12月12日で、キャロライン36歳の誕生日ということだろうか。