男は女性が喜ぶ顔を見たいがために、策を講じるのを厭わない。多かれ少なかれ、身に覚えのある男性は多いだろう。それだけにチャールズの気持ちが良く分かるし、個人的にはこういったストーリーは大好きである。
朝ドラ「エール」の初回の冒頭で描かれたコミカルなフラッシュモブシーンは最高だった。ドラマなどではよく見るが、実際にプロポーズでできるかといえば結構ハードルは高い。それでも成功した時の喜びは想像に難くない。個人的にも誕生日にささやかな演出をしたことは忘れられない思い出である。
男にとっては計画を遂行していく過程そのものも楽しいが、女性にとっては彼の不可解な行動により疑心暗鬼にもなりかねないのが難しいところ。キャロラインも浮気を疑い、またも衝動的に高い布を買ってしまい自分用のブラウスを作ってしまう。そうした嫉妬深いキャロラインも実に魅力的である。そんな母さんを応援するローラたちも愛おしい。
そんなローラとメアリーも大好きな父さんが美しい未亡人に盗られてしまわないかと心配でならない。ローラはシンデレラの継母と言っていたが、個人的には白雪姫の継母の方が強烈な印象がある。父さんのことを蜘蛛の巣に囚われたハエとも言っていたが、ちょっと酷い。そうすると未亡人は蜘蛛女ということになる。レナ・オリンが演じた1994年公開の映画「蜘蛛女」を思い出してしまった。
蜘蛛の巣で思い出すのは「おばけ屋敷」の回。その舞台となった薄汚れた屋敷はローラによって浄化され、美しい未亡人の住む館になった。内装もカーテン等を替えるだけで一変する。この屋敷は今後さらに重要な舞台になっていく。もしかしたら間違っているかもしれないが、同じ建物や俳優をストーリーによって見事に使い回しているようで、そうした発見も長いドラマを見る楽しみである。
最初は同じように見えた風景も、日本ほどはっきりとはしていないものの、四季の移ろいを感じられるようになってくる。今回はローラとメアリーがチャールズと森にキノコ狩りに出かけるので秋だということは分かる。
それでも放送の順番通りに季節が進むわけではないので、まとめて見ていくと混乱することも多い。次回の「自由よ永遠に」の回は1876年7月4日が描かれるが、このように年月日が特定できるのは珍しい。
そこで理不尽な税金に苦しめられる姿が描かれるが、その税金を取り立てる役人を演じたのがウィリアム・シャラート。オルソン夫人との雑談から見落としていた分を加算していく姿が、まるで現実の税務署員みたいだった。その彼がシーズン6の「オルデン牧師の結婚」ではオルソン夫人との深い関係を持った男として登場するのだから面白いものである。