ささやかな日常の記録

現在と過去のエンタメなど

黒澤映画の前売券

1990年には黒澤明監督の「夢」も映画館で観ている。初日は5月25日であるが、いつ観たかは覚えていない。場所は有楽町マリオンだったと思う。スピルバーグらが制作に携わったということで特撮が楽しみだったが、印象に残ったのは美しい自然だった。

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この映画では大林宣彦監督がメイキングを担当し、その映画への思いが受け継がれることになった。黒澤から大林へ、そして今、その思いは岩井俊二塚本晋也らに受け継がれていく。

翌年には「八月の狂詩曲」が公開。そして1993年公開の「まあだだよ」が遺作となったが、それぞれ映画館で観ることができた。

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今夜、BSで「八月の狂詩曲」が放送されるが、そのキャッチ・コピー「なんだか おかしな夏でした・・・」はまさに今年の夏のことのようだ。

その原爆への思いは「生きものの記録」の頃から変わっておらず、今の時期になると思い出す。その他にも「野良犬」「羅生門」「天国と地獄」などからも夏の強烈な暑さが伝わって来る。

黒澤映画を初めて映画館で観たのが1980年公開の「影武者」だった。大画面で観る騎馬シーンは圧倒的だった。それから上京して1985年公開の「乱」も映画館で観たが、この映画は今でも大好きだ。先日もBS4Kで放送されたので見直したが、まったく古びておらず、深みのある色彩が印象的だった。

救いのないストーリーではあるが、その人間を見る冷徹なまでの視線は黒澤映画ならではのものだ。「悪い奴ほどよく眠る」もそうだが、現実は映画のようにハッピーエンドとはいかないことが多い。

先日見た映画「新聞記者」もそうだった。今の政権を匂わせるストーリー展開に、いかにも有りそうと思わせるエピソードの数々。ハリウッドでは普通に制作されている題材ではあるが、この程度でも日本では難しい。主演女優は結局、韓国のシム・ウンギョンになったが、実に新鮮で良かった。

森達也監督による「i-新聞記者ドキュメント-」も見たが、これも面白かった。官邸で記者会見の実態はあまりに酷い。通路での質問でさえ、事前通告が必要というのも最近になって知ったが呆れてしまう。要は自分の言葉など何もないということである。