シーズン4の「メアリーの悩み」は色々な見方ができて面白い。
まずは邦題の通り、メアリーの悩む姿が印象的だ。家のリフォームを請け負ってくれたクリスに対して最初は「好き」と言っていたのに、ネリーから「不健全だ」と言われてから警戒心を持ち始める。母親がクリスに心を許してしまわないかと心配なのだ。それだけクリスに魅力があったということかもしれない。
クリスがキャロラインに惹かれていたのは事実なので心配するのは仕方がない。それでもキャロラインの気持ちを聞かずに一方的にネガティブな感情を募らせていくのは良いことではない。そんな思春期特有の感情の揺れがメアリーの表情から伝わってくる。
それでも今回のメアリーの態度は少々行き過ぎだったかもしれない。キャロラインにも「目を吊り上げている」と言われるくらい冷たい視線を向ける。おそらくジョンとの破局で恋愛感情にセンシティブになっていたのだろう。まるで「積木くずし」の娘のようだった。ちなみにその父親は昔の吹替でベイカー先生役だった穂積隆信である。
次にメアリーに疑われてしまったキャロラインの気持ち。キャロラインのような女性を前にしたら誰だって魅かれてしまうのは仕方がないが、あまりに無防備すぎるかもしれない。それだけチャールズへの気持ちが核としてあるからともいえるが、難しいところ。映画「マディソン郡の橋」を思い出してしまった。
そして個人的にはクリスに共感してしまった。根無し草の風来坊であることを良しとしてはいるが、時にふと淋しさを覚えてしまう。家族の温かさに触れて、結婚して定住することの幸せについて考える。
メアリーに「母さんを愛してるの?」と問い詰められて答えられなかったクリスの気持ちが切ない。キャロラインのような女性は簡単には見つからないだろうから、放浪の旅は続いたかもしれない。それでも、どちらが幸せなのかは分からない。
このエピソードは「シェーン」などの西部劇を思い出させるからか、アメリカでは人気があるようである。アメリカのサイトで「大草原の小さな家」の最高のエピソードとして1位になっていた。ちなみに2位以下は次の通り。
2位 「先生になったメアリー」(シーズン4)
3位 「悪夢のオルゴール」(シーズン3)
4位 「いつわりの友情」(シーズン2)
5位 「暗い教室」(シーズン2)
6位 「オルソン夫人の新聞記者」(シーズン5)
7位 「愛の病院」(シーズン8)
8位 「ネリーの落馬」(シーズン3)
9位 「ふたりだけのレース」(シーズン3)
10位 「オルガの靴」(シーズン1)
11位 「メアリーの失敗」(シーズン1)
12位 「釣り友だち」(シーズン2)
13位 「キャンプ」(シーズン2)
14位 「暴走する車両」(シーズン2)
15位 「人質になったメアリー」(シーズン4)
16位 「母さんの初恋」(シーズン4)
17位 「夢を見た町」(シーズン4)
18位 「先生の子」(シーズン5)
19位 「湖の怪獣」(シーズン5)
20位 「ローラの恋」(シーズン6)
これを見ると、いかにも映画になりそうなエピソードが多いのが分かる。シーズン4とシーズン2が5本で並んでいるが、個人的には「オルガの靴」が10位にランクインしていたのが嬉しかった。
それから、このエピソードで興味深いのが台所のリフォームにより、あまり描かれない家の裏側が見られること。ローラたちの寝室には裏側にも窓があることに、これまで気がつかなかった。クリスが作業している姿をメアリーが睨み付けている窓がそうである。