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【備考】人質になったメアリー~ジェシーとジョニー

大好きなプリファブ・スプラウトのアルバム「ヨルダン : ザ・カムバック」に「ジェシー・ジェイムス・ボレロ」という歌が収録されている。ボレロのリズムが心地よく西部劇の匂いが漂う。

ヨルダン・ザ・カムバック

ヨルダン・ザ・カムバック

 


Jesse James Bolero

 

その歌詞には次のような言葉がある。

ジェシー・ジェイムスのボレロは逃亡のダンス

どのステップも彼の放逸の証し

逃亡と放逸。

つまり、ジェシー・ジェイムスという人物は勝手気ままな逃亡者ということであるが、アメリカではそれなりに知られた人物のようである。wikipediaには次のように書かれている。

ミズーリ州カーニーにバプテスト派牧師の子として生まれた。4歳年上の兄フランク・ジェイムズがいる。

実家は奴隷を労働力に使うタバコ農園を経営していたが、南北戦争が始まると兄のフランクが南軍に参加した。1864年、16歳のジェシーは兄とともに南軍のゲリラ部隊に参加し、殺人や強盗を覚えた。

終戦後、兄のフランクや元戦友のコール・ヤンガーとその兄弟たちとともに強盗団「ジェイムズ=ヤンガー・ギャング」を結成して、銀行や列車を襲い殺人を繰り返した。

1876年、ミネソタ州ノースフィールドで銀行を襲い、仲間のヤンガー兄弟は逮捕されたが、ジェイムズ兄弟は逃走に成功し、偽名を使って潜伏した。ほとぼりが冷めた頃、ボブ・フォードとチャーリー・フォードの兄弟を加えて再び強盗を繰り返した。

1882年、ミズーリ州政府がジェシーを10,000ドルの賞金首とすると、それを狙って裏切ったフォード兄弟に射殺された。一方、兄のフランクはその半年後に州知事の下へ自首し、以降は平穏な生活を送ったため、ジェシーの悲劇的な最後を際立たせることとなった。

1866年2月13日に、アメリカでジェシー・ジェイムズが世界初の銀行強盗に成功したことから、2月13日は「銀行強盗の日」となっている。

 

この史実を元に大胆な脚色をしてドラマ化したのが「大草原の小さな家」のシーズン4「人質になったメアリー」である。

銀行強盗で傷を負った兄のフランクとジェシーが偽名を使ってウォルナット・グローブの貸家に潜伏する。素性を知らないメアリーが駄賃欲しさに買い物などの世話をするが、そこに賞金稼ぎの一団が現れて、町を巻き込んだ騒動に発展していく。

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原題はThe Aftermathで、犯罪などの余波といった意味だが、そこに南北戦争の余波も重ねているところが面白い。実際、兄のフランクは南軍として参戦しており、そのことを知ったメアリーが話を聞き、授業で発表するが、それに反発する生徒がいた。

それが南軍に兄を殺されたボブである。ボブにとっては北軍こそが正義であり、南軍は悪でしかない。しかし、南軍の立場になれば、それは逆転してしまう。ボブと父親はその事実を受け入れることができなかったということである。

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対立するボブとメアリー

史実でジェシーを射殺したボブが、ドラマではメアリーの同級生に変えられ、その動機が南北戦争の恨みになっている。客観的に見ればかなり無理のある展開ではあるが、南北戦争について改めて考えさせられた。

そんなジェイムズ兄弟は南軍の兵士やその未亡人に親切だったとのこと。銀行強盗をする悪人ではあるが富める者からしか奪わないといった義賊的な面もあったようで、アウトローとして伝説化していったようである。ルックスも魅力的だったようで、ドラマでもメアリーとの交流を通して、そんな一面を描いている。

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ジェシー(左)とフランク(右)

そんな訳でアメリカでは人気のエピソードのようでランキングでは15位だった。ドラマでは悪人が登場するエピソードはたびたび出てくるが、ただ不快なものと、ギャグよりのものが多い。ジュリエット・ルイスの父親であるジェフリー・ルイスはシーズン3の「勇気ある対決」で不快な悪人を演じたが、シーズン9の「悪党3人組」ではギャグよりの強盗を演じている。

そんな中で、このエピソードはエンタテインメントとしても面白い。素直に賞金稼ぎに協力しない町の人々の気概とガーベイの機転が最高である。空き家への発砲も迫力は十分である。ただ、尺の関係で邦題のような「人質になったメアリー」の状況はほとんど描かれなかったのが残念だった。

 

悪人が登場する回で感動的なのがシーズン3の初回「にせの牧師さん」である。そこで悪人を演じたのが実際にアウトロー的な生き方をした歌手であるジョニー・キャッシュというのが面白い。その波乱の人生を描いた映画「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」を見てから見直すと感慨深いものがある。

ウォーク・ザ・ライン/君につづく道 (字幕版)

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  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

この映画でジョニーを演じたのが「ジョーカー」でアカデミー主演男優賞を受賞したホアキン・フェニックスというのも出来すぎである。そして妻となるジューン・カーターを演じたのがリース・ウィザースプーンで、この映画で主演女優賞を受賞している。

その本物のジョニーとジューンがドラマでも夫婦を演じているのだから堪らない。

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薬物に苦しんだキャッシュがジューンと出会い、信仰心を取り戻して刑務所でライヴをするに至る過程がドラマに見事に重なってしまった。

そんなキャッシュが出演したドラマでは「刑事コロンボ」の「白鳥の歌」も忘れられない。こちらでも黒い服が決まっているが、重要な意味を持つ若い女性の名前がメアリー・アンというのも印象的だった。

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ちなみに「大草原の小さな家」のオープニングはシーズン毎に少しずつアレンジが変わるが、シーズン3のテーマ曲がキャッシュの歌のようなカントリー調で一番好きである。