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大草原の小さな家【特別版】~過去と未来

BS4Kでのシーズン5のスタートは来年になるようなので、まだ見ていなかった特別版を見ることにした。DVDには「大草原の小さな家-特別版-」として「きのうの日々」「この愛すべき子ら」「最後の別れ」の3話が収録されており、それぞれ95分の長編である。

アメリカでは1983年12月と、1984年の2月と12月に放送されたが、日本では1991年12月29日から3日連続で集中放送されている。9月までシーズン9が放送されていたうえに、7月1日にはマイケル・ランドンが54歳で亡くなったこともあり、まさに待望の放送だったに違いない。

それなのに当時はまったく関心を失っており、放送されたことも知らなかった。日本ではシーズン8が放送されてから10年近くも経っていた。それから更に30年近く経って、ようやく最後まで見ることができて感無量である。

しかし、正直なところ、ここまで辿り着くのは大変だった。メアリーとネリーが去ったシーズン8以降はなかなか先に進めなかった。特にシーズン9の壁は大きかった。その壁を越えることができた人には、まさにご褒美みたいな作品である。これは特別版ではあるが、あくまでも「新・大草原の小さな家」の続きの物語になっている。それでもシーズン10と言えるほどの連続性はなく、あくまでも独立したスペシャルである。そのため、どの回を見てもそれなりに楽しめるし、その違いが面白い。Amazon Prime Videoでも次のタイトルで配信中である。

帰還

帰還

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未来ある者たちへ

未来ある者たちへ

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ウォルナット・グローブよ 永遠に
 

 

◉「きのうの日々」 Look Back To Yesterday(昨日を振り返る)

アルバートが医者になるために大学へ進学することになる。その手続きにチャールズと共に出かけるが、高額な学費は払えそうもないので奨学金の申請をすることになる。その結果を待つ間に懐かしのウォルナット・グローブを訪れる。

シーズン9ではモルヒネ中毒だったアルバートだが、今回も頻繁に鼻血を出しており、何やら不穏な空気が漂う。ネットで「大草原の小さな家」を検索するとアルバート〇と表示されてしまうため、おおよその展開は予想できてしまう。それでも当初、アルバートの〇はシーズン9のモルヒネ中毒が原因だと思っていたので、それを克服したうえでのこのエピソードは正直やり過ぎだと思ってしまった。

おそらく打ち切りが決まって、そのストーリーを考えるうえで一番動かしやすいキャラクターがアルバートだったのだろう。感動的なエピソードを作るなら、メインキャラの〇を描くのが手っ取り早い。

すでに時代は80年代に入っていたが、70年代は少年の白血病を描いたお涙頂戴映画がヒットしていた。個人的には映画「ジョーイ」「フィーリング・ラブ」などを思い出すが、「大草原」でもシーズン5の最終回がそうだった。

海へのあこがれ

海へのあこがれ

  • メディア: Prime Video
 

ラブストーリーだったら、それこそ「ある愛の詩」と「ラスト・コンサート」が忘れられない。先日見た「愛唄」もそうで、今も昔もこうしたストーリーは分かってはいても泣かされてしまう。

愛唄 ―約束のナクヒト―

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  • 発売日: 2019/07/02
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それでも今回、メアリーの悲劇を描いた「失われた光」の次に見たため、どうしてもアルバートが自分の運命を受け入れる過程が安易に思えてしまう。普通はメアリーのようにもっと葛藤があるはずで、まるですぐに悟りを開いた聖人のようだった。

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相変わらずのKYであるナンシーは「どんな気持ち」とアルバートに単刀直入に斬り込む。それに対するアルバートの答えはあまりに美しい。そんなナンシーをも感動させてしまうのだから凄い。

そしてクライマックスはローラと共に苦難の山登り。映画「サウンド・オブ・ミュージック」の名曲「すべての山を登れ」が脳内再生されてしまった。


サウンド オブ ミュージックより 【すべての山に登れ】

その後については分からないが、「ローラの祈り」で登場した岩山に登ってジョナサンに出会ったとか、シーズン8の最終回でチャールズが作った祭壇に行ったとか想像してみるのも面白い。きっと奇跡が起こったに違いない。

 

◉「この愛すべき子ら」Bless All The Dear Children(すべての親愛なる子供たちを祝福する)

「大草原」ではお馴染みの物語をクリスマスに見た。冒頭で1896年のクリスマスは暖冬だったと語られる。雪を降らせないための苦肉の策であろうが、シーズン2の「自由よ永遠に」で描かれた1876年から20年も経っているということに驚いてしまった。

マンケートにクリスマスの買い物に来たローラ一家とエドワーズ。目を離した隙にローズが行方不明になってしまう。その捜索に孤児の少年サム(サミュエル=彼の名は神)が加わることでクリスマスの奇跡が起きて、最後には全て丸くおさまることになる。クリスマスの星と言えば「プラム・クリークのクリスマス」でのキャリーを思い出す。

ウォルナット・グローブでは(入院しているらしい)オルソン夫人の代わりにナンシーが周りを引っ掻きまわす。それが結果的にクリスマスを否定していたモンタギューを目覚めさせて、もう一つのクリスマスの奇跡を起こすことになる。この変人モンタギューのエピソードは(「クリスマスの思い出」でも回想された)「旅立ち」でのエドワーズの行動を思い出させて感動的だ。

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アメリカではこの回の放送が最後だったようだが、これまでの「大草原」のモチーフが散りばめられていたという意味において良かったのかもしれない。

 

 ◉「最後の別れ」The Last Farewell

ウォルナット・グローブの土地を巡る住民と不動産屋との対決を描き、実質的な最終回。住民が銃を持って武装する姿は西部劇そのもの。久々にキャロラインが登場して、ライフルを構える姿を見られただけでも満足だった。

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アメリカで放送された1984年には大好きな映画「ストリート・オブ・ファイヤー」が公開されており、同じようなシーンに胸を熱くしたのを思い出した。

ラストは負けて勝つというテーマだけでなく、破壊のカタルシスまで描いており、まさにアメリカ映画の王道といった感じでもあった。爆破シーンはマイケル・ランドンの私怨と深読みする向きもあるようだが、撮影が終わったらセットを取り壊すのは常識で、それをストーリーに組み込んだランドンは脚本・演出だけでなくプロデューサーとしても有能だったということだろう。

1840年に先住民のスー族の土地に開かれた町から住民が出て行くシーンは「自由への旅」や「心を結ぶ旅」を思い出した。まさに差別と信仰を描いてきたシリーズの最後に相応しいと思ったものの、そこにはメアリー、キャリーだけでなく、ネリーもオルソン夫人もいないという淋しいものだった。

そのオルソン夫人を演じたキャサリン・マグレガ―が出演しなかったのはヒンズー教徒としてインド巡礼中だったからとのこと。その後、2018年11月13日に93歳で亡くなっている。

ネリーを演じたアリソン・アーングリンは制作が決まったというリブート版へオルソン夫人としての出演を希望しているとのことだが、見てみたいものの年齢的に厳しいかもしれない。

個人的にはメリッサ・ギルバートが「Little House books」を発表し始めるローラを演じるのを見てみたい。そこから過去に遡って物語の世界を忠実に描いていったら、そこそこ面白い作品になるかもしれない。そんな未来の作品も楽しみである。