メアリーの麦わら帽子。個人的には夏休みを思い出すだけに、教会へ被って行くのには少々違和感を感じてしまう。
それでも成長したメアリーにとってはオシャレなアイテムなのだろう。このへんの感覚は正直よく分からない。
女性たちは牧師の説教中も帽子を脱がない。人前では帽子を脱ぐのが礼儀と教わっただけに不思議ではあるが、その文化の違いが面白い。
そんな難しいことを抜きにしても麦わら帽子を被ったメアリーが偽牧師を見つめる表情が印象的だ。疑念をもって睨みつけるような表情から、疑いが晴れてパッと明るさが戻った表情への変化に魅せられた。ここで麦わら帽子と夏の青空のイメージがメアリーの青い瞳に重なってしまった。
この回にはローラはほとんど登場しないため、邦題は「千と千尋の神隠し」に倣って「メアリーと偽牧師の寄付集め」とでもしたいところ。有能なメアリーの鋭い洞察力が偽牧師を変えたと言っても過言ではない。
この麦わら帽子は「赤毛のアン」でも登場するだけに、ローラが被る姿も見てみたかった。「母さんの休暇」ではチャールズがキャロラインに高い帽子を買ってやろうとするシーンがあるが、当時も女性にとってはオシャレの重要なアイテムだったのだろう。最終回にもキャロラインのお洒落な帽子姿が描かれるが、個人的には「ジョニーの家出」で登場する青い鳥の帽子が忘れられない。
麦わら帽子で思い出すのは映画「人間の証明」で、当時のTVコマーシャルは忘れられない。英語ではStraw hat、これが「ストウハ」に聞こえてしまう空耳が面白い。
あの有名なセリフは朝ドラ「エール」にも登場した西條八十の詩から引用されている。
母さん、僕のあの帽子どうしたでせうね
ええ、夏、碓氷から霧積へ行くみちで
渓谷へ落としたあの麦藁帽ですよ…
これをメアリーに置き換えて想像してみると何だか切ない。
「母さん、わたしのあの帽子どうしたかしら、ウォルナット・グローブで教会に行く時に被っていたあの麦わら帽子よ」