ささやかな日常の記録

現在と過去のエンタメなど

【備考】幻のエレン~ホラー映画

シーズン4の「幻のエレン」はストーリーはともかく、映像的には色々と見所が多い回である。脚本・演出はマイケル・ランドンで、彼の嗜好(作家性)を考えるにあたっても興味深い。

先日4月9日に公開されたホラー映画「ザ・スイッチ」の監督であるクリストファー・ランドンの父親は名前からも分かるようにマイケル・ランドンである。残念ながら映画はまだ観ていないが、公開前のインタヴュー記事などを読んで色々と面白かった。

それによるとマイケル・ランドンはホラー映画が大好きだったとのこと。ドラマを見ているとホラーテイストの回が少なからずあるので、「やっぱり」と納得できた。この「幻のエレン」もそうである。

映画「ザ・スイッチ」はアメリカでは13日の金曜日に公開されたようだが、有名なホラー映画に「13日の金曜日」がある。公開は1980年だから、この回よりも後になるがホラー作品としての共通点が面白い。湖で溺れるシーンがあるし、病んだ母親と不気味な大男と美少女が登場する。

13日の金曜日(1980) (字幕版)

13日の金曜日(1980) (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

f:id:hze01112:20210517120508j:plain

エレンを探すが・・・

f:id:hze01112:20210517120702j:plain

ホラー映画においては、魅力的な金髪美少女が襲われてしまうパターンが多く、メアリーを演じたメリッサ・スー・アンダーソンも後にホラー映画「誕生日はもう来ない」のヒロインになるが、この時点ですでに予感があった。マイケル・ランドンが癌で亡くならなかったら、彼女をヒロインとしたホラー映画を撮っていたかもしれない。

誕生日はもう来ない (字幕版)

誕生日はもう来ない (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

しかし、今回のヒロインはメアリーではなくてローラなので、怯えるローラが実に魅力的だった。ローラの友達だったエレンが亡くなったことで母親が精神を病んでしまい、ローラを娘のエレンの身代わりにして地下室に監禁してしまう。

額に青筋を立てた母親がローラの三つ編みをほどいていくシーンはかなり怖い。暗闇の中で顔だけが見えないといった演出も効果的である。

f:id:hze01112:20210517123427j:plain

f:id:hze01112:20210517123511j:plain

f:id:hze01112:20210517123549j:plain

こうした監禁ものはホラー映画だけでなくサスペンス映画でも多く、1965年に公開されたウィリアム・ワイラー監督の「コレクター」は忘れられない。病んだ母親と孤独な青年という違いはあるが、倒錯した愛情を描いている。ローラをエレンに似せていくところなどはヒッチコックの「めまい」のようでもあった。

これはまるで人形の着せ替えのようでもあり、オルソンの店で4ドルの人形を娘の12歳の誕生日プレゼントとして購入するシーンが伏線となる。

f:id:hze01112:20210517162413j:plain

コレクター (字幕版)

コレクター (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video
 

新しいところでは2017年に公開されたM・ナイト・シャマラン監督の「スプリット」が面白かった。ヒロインを演じて絶叫クィーンと呼ばれたアニャ・テイラー=ジョイが魅力的だった。このヒロインは叔父に性的虐待を受けており、この性的なテーマはシーズン7の「ある少女」でも描かれることになる。「幻のエレン」では聖書を牧師に投げつけた母親も最後には救済されるが、「ある少女」には絶望しかない。

スプリット (字幕版)

スプリット (字幕版)

  • 発売日: 2017/07/20
  • メディア: Prime Video
 

ちなみにマイケル・ランドンが好きだったホラー映画は森の中の小さな小屋で展開されるサム・ライミ監督の「死霊のはらわた」とのことである。個人的には映画館で観た3作目の「キャプテン・スーパーマーケット」が気に入っている。

死霊のはらわた [Blu-ray]

死霊のはらわた [Blu-ray]

  • 発売日: 2010/12/22
  • メディア: Blu-ray
 
死霊のはらわた3 [Blu-ray]

死霊のはらわた3 [Blu-ray]

  • 発売日: 2020/08/05
  • メディア: Blu-ray
 

ドラマの中でもっともホラー映画を意識しているのがシーズン2の「母さんの傷」であるが、この演出はウィリアム・F・クラクストンである。ここでも湖で遊ぶローラとメアリーが描かれる。

「湖の怪獣」

先日BS4Kで放送されたシーズン5の「湖の怪獣」はマイケル・ランドンの演出でコメディではあるがホラー映画的な演出が楽しめる。

ここでも原題のThe Lake Kezia Monsterの通り、湖が舞台となる。前の記事では映画「13日の金曜日」のパロディと書いたが、この時点でもまだ映画は公開されていない。ただ「ジョーズ」は意識していたようで、ローラが水中でオルソン夫人の足に噛みつくシーンは最高だった。

f:id:hze01112:20210517175657j:plain

オルソン夫人の水着姿

f:id:hze01112:20210517175808j:plain

怯えるネリー

f:id:hze01112:20210517175922j:plain

誰?

「悪夢のオルゴール」

あとホラー的な演出で忘れられないのがシーズン3の「悪夢のオルゴール」である。ローラの見る悪夢が過激であるが、これもホラー映画のオマージュとして見れば面白い。

f:id:hze01112:20210517180609j:plain

f:id:hze01112:20210517180702j:plain

f:id:hze01112:20210517180748j:plain

悪夢といえば1984年にアメリカで公開された「エルム街の悪夢」を思い出す。ヒロインを演じたヘザー・ランゲンカンプはメリッサ・ギルバートと同じ年で、メリッサと交際していたロブ・ロウが出演した映画「アウトサイダー」の端役でデビューしている。テレビ放送での吹替は「北の国から」の中嶋朋子だった。

エルム街の悪夢(1984) (字幕版)

エルム街の悪夢(1984) (字幕版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video