ささやかな日常の記録

現在と過去のエンタメなど

【備考】死におびえる町

長期シリーズのドラマや映画を見ていると、必ず前に見たようなストーリーを目にすることになる。BS4Kで放送されたシーズン5の「死におびえる町」を見ると、どうしてもシーズン1の「救われた町」を思い出してしまう。

今回は炭疽菌に感染した羊を食べたことによって住民が病に倒れることになる。前回は教会だったが、今回は盲学校に患者が次々に運び込まれて、例によってベイカー先生が一人で対処していくが、薬と食料が足りなくなる。そこでチャールズとガーベイが注文した物資を駅まで取りに出かけることになる。

今回はレギュラーの登場人物の多くが感染したうえに、チャールズたちの困難な道行も描かれたために、エピソードが多すぎて散漫な印象になってしまった。その中ではオルソン夫妻がお互いに「愛している」と言い合う姿が印象的だった。

そんな短いエピソードの中でもアダムと生徒を看病するメアリーは魅力的だ。今回はメアリーのようにローラの目が見えなくなってしまうシーンがあったが、あまり印象に残らなかった。それに対して「救われた町」ではマイケル・ランドンの娘であるレスリーが演じた少女が「教会で死ぬのは怖くない」という短いシーンでも心に響いた。

f:id:hze01112:20210618162030j:plain

f:id:hze01112:20210618162110j:plain

f:id:hze01112:20210618161157j:plain

このように同じようなエピソードでも描き方によって印象も変わるということである。この2つの回で妻と子供を亡くす父親を演じたマット・クラークの演技も今回は過剰気味だったが、「救われた町」では静かな余韻を残して忘れられない。

f:id:hze01112:20210618161109j:plain

つまり「救われた町」は静的で心に沁みるということである。感染源が分からないので大切な人に近づけないという状況からして切ない。それに対して「死におびえる町」では人から人への感染がないことが分かっているので、そうした切なさはない。

物資が届けば助かるという安心感もあって、チャールズたちが無事に帰って来るかという動的なサスペンスに重きが置かれているともいえるだろう。

そしてラストシーンのへスター・スーの歌も好みが分かれるところだろう。個人的にはシーズン3の「雪あらし」のラストシーン以上の唐突感を覚えてしまった。やはり、短いながらもオルデン牧師の言葉に説得力があった。

それでも今回も荒涼たる雪景色と重苦しく繰り返される劇伴は印象的だった。まるで映画「遊星からの物体X」みたいだった。メアリーとジョンの別れの舞台となったスプリングフィールド駅も雪が降って印象が変わった。こうした馴染みの風景を違った季節で見ることができるのも長いシリーズの楽しみの一つである。

f:id:hze01112:20210618161637j:plain

f:id:hze01112:20210618161702j:plain

f:id:hze01112:20210618161857j:plain

f:id:hze01112:20210618161923j:plain