今年のアカデミー賞で、作品・監督・主演女優賞を受賞した「ノマドランド」を早くも見ることができたが、想像していたのと違って少々退屈してしまった。
アメリカの雄大な景色は映画館で観たら、また違った印象があったのかもしれないが、ノマド(放浪)の人々の暮らしを描いたドキュメンタリーを見ているようで映画的な面白さを感じることはできなかった。
以前、日本の車上生活者のドキュメンタリーを見たことがあったが、同じような生活ではあってもアメリカはまだ恵まれているような気がした。何よりも移動の途中で仕事ができるのは大きい。広大なAmazonの倉庫が印象的だったが、有期雇用で途中で打ち切られてしまうのが切なかった。それでも行く先々で仲間と再会し、助け合って生きていくことができるのは良いことだ。日本ではなかなかこうはいかないだろう。
映画でも描かれているが、アメリカには開拓者の伝統がある。ドラマ「大草原」での幌馬車と映画のキャンピングカーは同じようなものかもしれないが、そこには大きな違いがあった。それは家族の存在である。
映画に登場するノマドの人々の多くは高齢で独り身である。主人公のファーンも夫と死別しており、家を手放してノマド生活に入ってしまう。年金が頼りにならないのは日米ともに変わりない。それでも、日本よりは悲惨な感じがしないのが不思議なところ。
そんな中でリアルだと思ったのがトイレ事情。映画やドラマで描かれることはほとんどないが、この映画は冒頭からそれを描いたのが凄いと思った。決してきれいごとではないということであろう。これらの描写で自分はこうした生活は無理だと思った次第。