ささやかな日常の記録

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ウルトラセブン「盗まれたウルトラ・アイ」

BSでウルトラセブン「盗まれたウルトラ・アイ」が放送されてから10日が過ぎたが、依然として香野百合子の記事が当ブログでの検索上位のままである。

この記事はセブンについて書いたものではなく、タイトルにもあるように「おしん」の佐賀編に出演した香野について書いたもので、セブンのことは最後に触れただけにすぎない。それでも香野百合子で検索すると動画と画像が上位に表示されてしまうため、検索されたのだと思う。

ウルトラセブン」については熱狂的なファンが多いので、この回についても多く語られており、自分などが付け加えることもない。一言、「大好きだ」と書けば済んでしまう。そんな好きなことを書くのがブログならば、やはり自分なりに好きな理由を書いておくべきかもしれない。

まず何といっても切ないストーリーが良い。ある使命を帯びて地球に潜入したマゼラン星人が、ミッションに成功したものの見捨てられてしまう。同じ宇宙人であるダンが「一緒にここで生きよう」と手を差し伸べるが・・・。

このプロットはいかようにもアレンジは可能である。戦時下での女スパイでも、潜入捜査中の女刑事でもいい。強い信念を持って職務遂行したものの、成功報酬は得られずに使い捨てにされてしまう。これは現在の企業社会の中でも普通に起こりうることである。

脚本の市川森一大河ドラマ黄金の日日」も書いているが、そこに夏目雅子が演じたモニカという女性が登場する。堺の豪商の娘で敬虔なキリシタンだったが、 根津甚八演じる石川五右衛門によって奪われてしまう。ここでは強い信念が神への信仰ということになる。彼女の逃避行の姿が、マゼラン星人マヤの姿に重なってしまう。

市川森一の最後のテレビドラマになった「蝶々さん〜最後の武士の娘〜」で宮崎あおいが演じた蝶々さんが待ち続ける姿も同じようなことかもしれない。そのような薄幸な女性のプロトタイプが、こうしたヒーローものの特撮ドラマで描かれたのだから記憶に残って当然かもしれない。

個人的には大草原のメアリーにも重なってしまう。「失われた光」の回では同じような絶望に見舞われるが、新たな環境で良き指導者に出会うことで救われる。マヤにとってダンがそのような存在になれただけに残念である。この「失われた光」と「盗まれたウルトラ・アイ」はそのタイトルも似ている。ウルトラ・アイはダンにとっては目でもあり光でもある。そのウルトラ・アイをダンに返したことでマヤにとっての光は失われたことになる。

そのマヤの白いワンピースにブーツという姿もメアリーに重なってしまった。この回ではマヤの絶望そのままに地下のアングラ・バーが舞台になっていて、これはこれで暗闇と白のコントラストが印象的だったが、草原を走り回るマヤの姿も見てみたかった。

その舞台の中のアイテムも大好きなものばかり。「セーラー服と機関銃」を例に出すまでもなく、美少女と機関銃はよく似合う。音楽も当時のアングラ臭が漂うサイケデリックにゴーゴーサウンドで、踊りに興じる姿も魅力的だった。

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そしてファンの間では i(愛or目)がないと話題になったジュークボックス。その前で起きたことはまるで「スターウォーズ 帝国の逆襲」のクライマックス・シーンみたいでもあり、泡になって消えた人魚姫を思い出してしまった。

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このマヤの孤独は多かれ少なかれ、若い頃には誰しもが味わう普遍的な感情かもしれない。特に地方から希望をもって上京したものの、うまくいかなかった時など強く感じることだろう。自分もそんなことがよくあっただけに、彼女の表情が強く心に刻まれたのかもしれない。

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