ささやかな日常の記録

現在と過去のエンタメなど

映画「耳をすませば」(1995)

金曜ロードショーで放送されたアニメ「耳をすませば」を見た。公開は1995年7月15日で、「千と千尋の神隠し」までのジブリ作品で唯一ロードショーで観ていない映画だったが、後に名画座で観ることになった。やはり、当時は中学生の恋愛模様に照れがあったのかもしれない。

でも今では「大草原」で免疫ができているので、何の抵抗もなく楽しむことができた。冒頭の「カントリー・ロード」で、もう”ちむどんどん”である。今月の8日に亡くなったオリビア・ニュートン=ジョンの歌は昔から大好きだった。中学生の頃、登校する前に見ていたのがTBSの「おはよう700」で、その中の旅コーナー「キャラバンII」のテーマ曲でもあった。


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考えてみれば自分の中学時代もヒロインの月島雫と同じように「カントリー・ロード」を口ずさみながら、テレビではローラとメアリーというカントリー・ガールと、コナンというカントリー・ボーイの活躍に魅せられていた。

それだけに雫の気持ちは痛いほどよく分かる。当時は読書もSFを中心に大好きだったので、あのような空想をよくしたものである。ただ、当時も日記は書いていたものの物語を書こうとまでは思わなかった。

当時は作家よりも、映画評論家の方が身近な存在で、当時はテレビを見ながら毎日のように映画を観られるという仕事に憧れたものである。それはやがて東京への憧れに上書きされていき、当然のように東京の大学に進学し、そのまま東京で就職して、夢はある意味で実現したといってもいいだろう。

当時「未来少年コナン」を作っていた宮崎駿は、後に「風の谷のナウシカ」と「天空の城ラピュタ」を作ったが、その公開初日に駆けつけて舞台挨拶を聞いたのも懐かしい思い出である。そして、「魔女の宅急便」と「紅の豚」はデートで観たということでも忘れられない。

ところが、脚本と絵コンテを宮崎が担当した本作はあまり観る気がしなかった。当時はまだ近藤喜文のことをよく知らなかったということもあったが、後に「赤毛のアン」を見てから改めてその凄さを思い知ることになった。それだけに作画だけでなく、監督作をもっと見たかった。

久々に本作を見て思ったのは日常描写の丁寧さと表情の豊かさである。これはそのまま高畑勲の作家性と重なる訳で、それを作画から支えたのが近藤だったということである。本作では電車に乗っている猫を追いかけるという日常と非日常が重なるシーンが実にイキイキと描かれて印象的だった。後に大好きな「日常」京アニ)を手掛けた野見祐二の劇伴もさりげなくも良かった。


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その他にも雫の父親の声を演じたのが立花隆というのも良かった。昨年の4月に80歳で亡くなったが、NHKで放送された臨死体験や癌などのドキュメンタリーは印象的だった。この映画とは本と猫で結びついており、今年になって放送されたドキュメンタリーで猫ビルにあった莫大な蔵書が無くなった空間を見て、衝撃を受けたものである。

そして雫の声を演じて「カントリー・ロード」も歌った本名陽子は、先日WOWOWでシーズン4の最終回が放送された「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」で主役のジューンの声を演じている。あの雫が成長してエリザベス・モスのようになったかと思うと複雑だが、逞しくなったと思えばよい。「大草原」のメアリーの声を新しく演じている清水理沙もジューンの仲間の一人であるジャニーン役として出演している。

それから相手役の天沢聖司の声を演じた高橋一生は、最近では「岸辺露伴は動かない」で共演している飯豊まりえとの交際が噂になっているが、年末に予定されている新作の放送が楽しみである。

なお、清野菜名松坂桃李が出演する「耳をすませば」の実写版も10月に公開予定とのことで番組内で予告も流れたが、ちょっとイメージが違う感じ。こちらは「ちむどんどん」でも歌われている「翼をください」が主題歌になるようである。


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最後に冒頭で書いた名画座であるが、名前は忘れたが京成電鉄お花茶屋駅にあった映画館で11月18日に観に行き、同時上映が大林宣彦監督の「あした」だった。正直、この映画の刺激が強すぎて、ピュアな「耳をすませば」の印象が吹き飛んでしまった。こちらの劇伴は感動的に鳴り響くので最後まで耳に残ってしまい、すぐにサントラを購入したほどである。