ささやかな日常の記録

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【備考】心に映るもの~愚かな恋

BS4Kでシーズン9の「心に映るもの」を見た。このタイトルを見て、どんなストーリーだったか思い出せなかったが、DVDで見た時は「愚かな恋」だったので当然である。原題はシンプルにLOVEだったのに、そこに愚かなと付けた当時の担当者と、それを変更した担当者のことを考えると面白い。

どちらもピュアな恋とすることができずに悩んだことは想像に難くない。やはり年齢差が大きいほど恋愛のハードルは大きくなる。それだけに映画やドラマでもたびたび描かれるテーマになる。

自分も初めてDVDで見た時は「気持ち悪い」と思ったが、基本的にはこのようなストーリーは大好きである。特にシーズン1の「ベイカー先生のロマンス」は印象的だった。ベイカー先生の場合は仕事が忙しすぎて結婚できなかったという事情があるし、若いケイトに翻弄されながらも徐々に好きになっていったというプロセスに共感できた。

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ところがエドワーズには2度の結婚歴がある。一度目は死別で仕方がないが、2度目は事情はあれども酒に溺れて追い出されているのである。そんな男がローラの友達に恋をするというのがあまりにも不自然だった。

そんなエドワーズに恋をする盲目のジェーンを演じたのがジル・シュエレン。どこかで見た顔だと思って調べてみたら1989年にアメリカで公開された映画「オペラ座の怪人」でヒロインのクリスティーンを演じていたことが分かった。

このガストン・ルルー原作の「オペラ座の怪人」は何度も形を変えて映画化されており、最も有名なのがアンドリュー・ロイド・ウェバーによるミュージカルを映画化した2004年版である。

この「オペラ座の怪人」も考えてみれば年齢差だけでなく様々な障壁のあるラブ・ストーリーとも言える訳で、昔から大好きだった。特に1974年に公開された「ファントム・オブ・パラダイス」はオールタイムのベスト10に入れたいくらいのお気に入りである。

そんな訳だから日本では1990年11月に公開された上記の映画も観に行った。ホラーテイストが濃厚だったにもかかわらず、音楽は美しくサントラも購入した。

現代のニューヨークで、かつてエリックが作曲した「勝ち誇るドン・ジョヴァンニ」の楽譜を発見した女優クリスティーヌが100年前のパリにタイムスリップし、エリックと出会うというアレンジの作品。ファントムことエリックを「エルム街の悪夢」で主演したロバート・イングランドが演じ、ホラーテイストが強い作品となった。エリックは悪魔と契約して戯曲を完成させたことと引き替えに顔面の皮を剥がされた男という設定であるが、お馴染みの仮面を被らず、死体の皮を自らの顔面に縫いつけて行動するという猟奇的なキャラクターである。殺人場面も残酷で、カルロッタの首を斬り落として仮面舞踏会のディナーに出したり、犠牲者を吊し斬りにしたり内臓を掴み出したりなど、ファントムをジェイソンやフレディなどのシリアルキラーと同様の暴力的連続殺人鬼として描いた過激な場面が多い。クリスティーヌがエリックの本性を察知してからは恐怖の念しか持たない点では、原作のイメージに比較的近い作品である。


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久々に、歌うジル・シュエレンの姿を見てみたら、なかなか魅力的でドラマにもその片鱗が見えるようだった。その後もホラー映画に多く出演したようでアメリカでは絶叫クィーンの一人になっているようである。ゴシップとしてはキアヌ・リーヴスと付き合い、映画が公開された1989年にはブラット・ピットとも婚約していたとのこと。そして1993年にはマイケル・ジャクソンの「スリラー」などでシンセサイザーを演奏していたミュージシャンのアンソニー・マリネッリと結婚している。

さすがに同世代だけあって、こうしたキャリアを調べてみるだけでも色々な思い出がよみがえってきて面白いと改めて思ってしまった。

ただし、ドラマとしてはあまりにもご都合主義すぎて興ざめもいいところ。とにかくジェーンがエドワーズに恋するという一点において無理がありすぎるし、エドワーズも安易に惚れすぎである。

何しろドラマでは狼少年だったマシューを引き取って暮らしているはずなのに、その姿どころか生活臭もまるで感じられなかった。ローラもまずはマシューとのことを心配するべきなのに、まるで居ないことみたいになっているのが不自然だった。

それでも盲目の女性ということで劇伴ではメアリーとアダムのテーマがさりげなく流れていて印象的だった。手術する病院はシカゴということで、いやがうえでもメアリーを思い出してしまうので、付き添うのがへスター・スーではなくて、ニューヨークからメアリーが来るというストーリーだったらと思わざるを得なかった。

当然、野外での二人のシーンはベイカーとケイトを、ジェーンがエドワーズの髭を触るシーンはメアリーとアダムを思い出さずにはいられなかった。

変更されたタイトルはジェーンによって語られるエドワーズのことであろう。こんなことを言われてみたいものであるが、それだけに個人的には「愚かな恋」の方が良かったような気がする。

それから老いることについての印象的なセリフがあった。

ある日、目を覚ましてベッドから出るとジジイになっている

絶対来るから、覚えておけよ

まさに今、それを実感しているところである。

ちなみにLOVEと言えば、やはりジョン・レノンの歌を思い出す。


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この歌が主題歌だったドラマが1998年に放送された「世紀末の詩」である。その第2話「パンドラの箱」も盲目の女性との恋がテーマだった。遠山景織子と斎藤洋介が演じた残酷な愛の結末は今でも脳裏に焼き付いている。