ささやかな日常の記録

現在と過去のエンタメなど

【備考】最初の本

BS4Kで放送中の「大草原」、2023年の最初はシーズン9の「最初の本」ということで、いかにも新年のスタートにピッタリの邦題である。

しかし、原題はOnce Upon a Timeということで、ローラが昔々の出来事を小説に書いてコンクールに応募するというストーリー。わずか4週間で書き上げた小説は大賞に選ばれて、出版に向けて動き出すことになる。

しかし、史実では最初の本である「大きな森の小さな家」が刊行されたのは1932年で、ローラが65歳の時である。だから邦題はミスリードで、もしかしたらローラが若い時にこんなことがあったかもしれないということを描いている。

ローラが外で執筆している姿は印象的ではあるが、ローズの子育てがほとんど描かれていないので、共感するのは難しい。だいたい幼いローズを家に残して何週間も留守にすること自体が信じられない。シーズン1の「母さん休暇」でのキャロラインを見習って欲しい。

できれば、ローズがジェニーくらいに成長した時のストーリーとして展開できれば色々と面白かったと思えるだけに少々もったいない。この時の経験がやがて実際にローラが執筆する時に、編集者としてローズが果たしたことにつながっていくとしたら面白い。

事実は事実として、それをより面白く伝えるために刺激的なエピソードを加えていくことは決して悪いことではない。ローラもそれを納得していたはずなのに、ジェニーの感想を聞いて考えを改めてしまうというのもおかしなことである。

それだけに実際に出版するにあたって、ローラとローズの間にどのような葛藤や確執があったかについてはドラマとして見てみたいと思った。

これは今でも作家と編集者が本を売るために繰り返されていることでもある。年末に見たNHKスペシャル松本清張帝銀事件」でも実録にするか小説にするかで葛藤する姿が安達奈緒子の脚本でドラマ化されており、実にスリリングであった。

この史実があって、小説が書かれて、ドラマ化されるという流れはいわばエンタメの常道でもある。そこにどれだけのフィクションが織り交ぜられてるかは知る由もないが、ローラ自身も「私が語ったことは真実だが、すべてがそのままの真実 ではない」と述べているようである。

さらにドラマ化するにあたってマイケル・ランドンは大幅に手を加えていったことになる。ラストではランドンのナレーションで次のように語られる。

40年後、ローラは最初の本を世に出しました

今では多くの人に愛されている「インガルス一家の物語」第1巻です

今度は原稿の直しはありませんでした

この回がアメリカで初放送されたのが1983年1月24日だった。それから今年で40年になる。ちなみに、少女が手に持っている本は3作目で1935年の刊行になる。そのシリーズの作品は次の通り。

「小さな家」シリーズ

『大きな森の小さな家』(Little House in the Big Woods , 1932)

『農場の少年』(Farmer Boy , 1933)

大草原の小さな家』(Little House on the Prairie , 1935)

『プラム・クリークの土手で』(On the Banks of Plum Creek , 1937)

『シルバー・レイクの岸辺で』(By the Shores of Silver Lake , 1939)

『長い冬』(The Long Winter , 1940)

『大草原の小さな町』(Little Town on the Prairie , 1941)

『この楽しき日々』(These Happy Golden Years , 1943)

以上がローラが存命中に出版された作品であるが、本当に原稿の直しが無かったかは分からない。ローズが大幅に手を加えたことも十分に考えられる。何よりもランドン自身がこの原作に大幅に手を加えているのだから皮肉なものである。

なお、ローラにアドバイスをする編集者を演じたジョン・ベネット・ペリーはシーズン4の「人質になったメアリー」でジェームズ兄弟の兄フランクを演じている。前回の「三人の小悪党」にもジェームズ兄弟が登場したが、もはや整合性などなく支離滅裂だった。

そんな訳でついダラダラと書いてしまったが、いよいよ4K版「大草原」もカウントダウンが始まった。シーズン9が残り7話で、特別版が3話あるのであと10話でお終いである。長いようであっという間だっただけに名残惜しい。

4Kといえば年末年始に放送された映画も色々と面白かった。その中で久々に見た「フラッシュダンス」に見覚えのある顔を発見した。ヒロインが受験したバレエ学校の受付の女性がアルマンゾの姉イライザを演じたルーシー・リー・フリピンだった。眼鏡をかけるシーンがあって分かった次第。

この映画の公開も40年前の1983年で、主題歌を歌ったアイリーン・キャラは昨年の11月25日に63歳で亡くなった。


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