ささやかな日常の記録

現在と過去のエンタメなど

「若葉のささやき」と「事件」

当地ではまだ桜は開花していないが、今日は晴れて気温が上がり若葉の頃の陽気となった。

そんな日の早朝、FMから流れてきた歌に聞き覚えがあった。声は天地真理だと分かるが曲名が思い出せない。そこでネットで調べたら「若葉のささやき」だと判明した。


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今から50年前の1973年3月21日発売。天地真理の6枚目のシングルで100万枚を超えるヒットになったようだから、小学生の自分にも耳に馴染んでいたのは間違いない。それにしても森田公一のメロディも良いが、山上路夫の歌詞がシンプルで素晴らしい。

愛する季節 いつか訪れる
それは誰にも あることなのよ
悲しい夢に もしも終ろうと
若さをかけて 愛してゆくの
愛はよろこび それとも涙
いつか私も わかるでしょう
若葉が風と ささやく町を
愛を心に 私はゆくの

この歌を聴いていたら、昨日までBS4Kで放送されていたドラマ「事件」のことを思い出した。1978年に放送されたドラマのことは何となく覚えていた。若山富三郎が弁護士役で、大竹しのぶが出演していたという記憶は鮮明にあった。調べてみると1978年4月から大河ドラマ黄金の日日」の後に放送されていたようである。

原作は大岡昇平で、法廷を舞台にしたミステリー。元々は「若草物語」として新聞連載されていたとのことで、「若葉のささやき」を連想したのもあながち間違いではなかったようである。

19歳の青年が同棲していた彼女の姉を殺したということで逮捕、起訴される。その裁判で弁護士が次々に証人から新たな事実を明らかにしていく訳だが、その過程が実にスリリングで面白かった。その証人を演じた殿山泰司石橋蓮司がいかにも裏のありそうな人物で、その証言から浮かび上がってくる被害者を演じたのがいしだあゆみ。その虚ろな瞳がなんとも印象的だった。

その妹を演じたのが大竹で、愛する人を巡って展開される姉と妹の確執が最大の見所でもある。その大竹の若さゆえの佇まいが何とも魅力的で、まさに歌で描かれたヒロイン像に重なってしまった。

この「事件」は野村芳太郎によって映画化もされており、同年6月に公開されているが、大竹はこちらでも同じ役を演じている。たまたまWOWOWで放送されたのを録画してあったので見ることができてラッキーだった。

姉役は松坂慶子で、より生々しく姉と妹の確執を描いている。弁護士役は丹波哲郎で、その長男である丹波義隆がドラマ版で被告を演じているが、やはり当時の屈折した青年といったら永島敏行である。個人的には大竹と長島といったら1980年の大河ドラマ獅子の時代」で菅原文太が演じた主人公の妹と弟を演じていたのが忘れられない。


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映画では松田昌のエレクトーンによる劇伴がいかにも当時の野村映画らしさを醸し出していたが、ドラマ版を担当した間宮芳生もまるでモリコーネを彷彿とさせるようなメロディでドラマを彩って印象的だった。