ささやかな日常の記録

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男はつらいよ 奮闘篇

BSテレ東の4Kで「男はつらいよ 奮闘篇」を見た。

これまで「男はつらいよ」シリーズはNHKWOWOWとテレ東のBS放送を通して全作品を見ている。その中でもこの「奮闘編」は異質な趣きで、何よりもリアルな印象があって忘れられない作品の一つである。

オープニングは只見線越後広瀬駅での集団就職のシーン。地元の若者が東京に旅立つ場面はまるでドキュメントのよう。そこに寅がからむことで虚実混在した面白さが醸しだされる。

マドンナも知的障害のある津軽の娘というのも異質。寅もいい加減な気持ちでは対処できない相手だ。まるで腫れものを触るように接して、外部(男=世間)から守ろうと奮闘する姿が笑いを生む。

しかし、これが当時は普通だった差別用語などもあり素直に笑えない。一生懸命、奮闘するほどに彼女を幸せにできないことが分かり、結局は地元の先生に引き取られることになる訳で、何ともいえない無力感に苛まれることになる。

そんな寅から届いたハガキに自殺の兆候を感じて、さくらが津軽まで寅を探しにいくのも異質。さくらの不吉な想像として雨に打たれ彷徨う寅の姿があの「砂の器」のようにインサートされるのも凄い。これが後に寅が見る夢のオープニングにつながったのかもしれない。

ラストは東京へ向かうバスの中での偶然の再会でハッピーエンド。とにかく、ピュアーな津軽娘を演じた榊原るみの可憐さが良い。映画が公開された1971年にはドラマ「帰ってきたウルトラマン」と山田太一脚本の「たんとんとん」にもヒロインとして出演。

最近、その「たんとんとん」について書いた記事へのアクセスが多いのが不思議だったが、テレビ神奈川で再放送されているようである。そこで再び、4Kで見直してみようと思った訳である。

その「たんとんとん」にも出演しているミヤコ蝶々が再登場、さくらとの対面が印象的だった。先生役の田中邦衛はそのまんま。それから寅がマドンナの花子と出会った沼津のラーメン屋のシーンも印象的。そこの店主の柳家小さんに、巡査の犬塚弘も良い。

笑いという面ではもの足りないかもしれないが、この異質な感じはちょっと捨てがたい、魅力のある作品だと改めて思った。


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