映画「ポセイドン・アドベンチャー」の音楽担当はジョン・ウィリアムズであるが、その劇伴以上に印象的なのは船内で歌われた「モーニング・アフター」という歌である。
映画ではキャロル・リンレイが歌っていたが、実際に歌っているのはモーリン・マクガヴァンである。
映画では新年とともに悪夢が訪れることになるが、この歌はその先の希望について歌っている。この歌がお気に入りで、最初に皆を導く船員を演じていたのがロディ・マクドウォールである。
映画が公開された1972年には刑事コロンボの「死の方程式」にも出演しているが、個人的に忘れられないのはやはり「猿の惑星」のコーネリアス役である。
コーネリアスと言えば、今はオリンピック開会式の音楽担当を辞任した人を思い出してしまうが、当時はジーラとともに小学生にも人気があった。
この「猿の惑星」シリーズの3作目である「新・猿の惑星」を親に連れられて映画館で観ている。そのコーネリアスとジーラが現代の地球にやって来るというストーリーであるが、その悲劇的な結末も含めて記憶に刻まれている。
後になって、その音楽を担当したのが(1作目も担当した)ジェリー・ゴールドスミスだと知りサントラを購入した。特に1作目は現代音楽風で実験的な作風に魅せられたものである。まさに猿が人間を支配するという悪夢を彩る音楽だった。
ある日(1995年ごろ)、この映画のサントラが日本版として新たに発売されることを知った時には驚いたものである。
その時に、コーネリアスというミュージシャンがいて、その人気にあやかって発売されたと知って、さらに驚いたものである。
その頃はまだフリッパーズ・ギターも知らず、やがて渋谷系という言葉とともに、サントラの文脈の中で理解していくことになった。それでも彼の音楽にハマることはなかったため、今回の騒ぎの元になった出来事について知ることはなかった。
その後、Eテレで土曜の朝7時から放送されていた「デザインあ」にハマり、その音楽が彼だったことを知ることになったが、その人となりを調べることはなかったので、その200回記念で放送された演奏も普通に楽しむことができた。
それが今回の騒動でようやく知ることになり唖然としてしまった。もはや擁護もできない邪悪さで、まさに悪夢のようだった。
ドラマ「大草原」で例えるならば、シーズン3の「勇気ある対決」の原題である Bully boyであり、「級長選挙」で描かれたミミズを食べさせる以上の醜悪さだった。
そんな人間が作った曲がオリンピックのオープニングで流れたとしたら、まさに悪夢の音楽になってしまったことだろう。
昔からオリンピックの開会式を見るのが好きで、豪華絢爛たるショーで流される歌や音楽に魅せられてきただけに、本当に残念でならない。そして今日になって突然、Eテレの「デザインあ」の放送もなくなってしまった。