ささやかな日常の記録

現在と過去のエンタメなど

虹と夢

早朝のサイクリングで虹を見た。

最近はずっと梅雨のような雨の日が続いていたので、束の間の晴れ間だった。

東の山から朝陽が出る前に、南の山から北の山にかけて巨大な虹が架かっていた。

こんな大きな虹を見たのはいつ以来だろうと思った。

東京では普通に見ていたと思うが、写真には残されていなかった。

仕事に追われて虹を愛でる心の余裕がなかったのかもしれない。

当地に戻ってからは出不精になっていたので間違いなく見ていない。

それでも少年時代には見ているはずなのに、その記憶がない。

虹を美しいと感じる感性が育っていなかったのかもしれないし、

ただ単に当たり前すぎて忘れてしまっただけかもしれない。

いずれにせよ、今こうして見ることができてラッキーだった。

写真でも分かるが、晴れと曇りが虹を境にせめぎあっている感じだった。

やがて雨が降り出したので、曇りが勝ったということである。

これを見ていて黒澤明の映画「夢」のエピソードを思い出した。

日照り雨
江戸時代を思わせる屋敷の門前で、幼い私は突然の日照り雨にあう。畑仕事帰りの母から冗談交じりに「外へ出ていってはいけない。こんな日には狐の嫁入りがある。見たりすると怖いことになる」と言われるが、誘われるように林へ行くと道の向こうから花嫁行列がやってくる。しかし、木陰で見とれている私の存在を次第次第に意識するそぶりを見せつけてくる行列に、居たたまれなくなって自宅に逃げ帰ってしまう。帰り着いた屋敷は一転して冷たく閉ざされ、門前に立つ母は武家の女然として短刀を渡し、自ら始末を付けるよう告げ、引っ込んでしまう。閉め出された私はさまよううちに、丘の上から雨上がりの空を見上げるのだった。

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ジュリー・クルーズ

先月、6月9日に「ツイン・ピークス」の主題歌で知られたシンガーのジュリー・クルーズが65歳で亡くなった。デイヴィッド・リンチがプロデュースした2枚のアルバムは大好きで、よく聴いたものである。

1956年米国アイオワ州生まれ。シンガー、ソングライター、女優、ミュージシャン。 大学時代にフレンチ・ホルンを学び、ミネアポリス州の児童劇団で女優・歌手として活動する。その後ニューヨークへ拠点を移し、女優としてジャニス・ジョップリン役を演じるなどしていたが、やがて作曲家のアンジェロ・バダラメンティと出会う。1985年バダラメンティがスコアを作曲したデヴィッド・リンチ監督作品映画「ブルー・ヴェルヴェット」に出演したイザベラ・ロッセリーニのヴォイス・トレーナーとして起用され、劇中クロージングに使用されるデヴィッド・リンチ作詞による「愛のミステリー」を歌唱。その後も3人の関係は続き、全曲アンジェロ・バダラメンティ作曲、デヴィッド・リンチ作詞による1stアルバム『フローティング・イントゥ・ザ・ナイト』を1989年にリリース。1990年に全米でTV放送が始まったドラマ「ツイン・ピークス」に収録曲「フォーリング」「ロッキン・バック・インサイド・マイ・ハート」などが使用され大きな話題となる。1993年にジュリーが作詞・作曲に関わった1曲をのぞいた全曲バダラメンティ作曲、リンチ作詞による2ndアルバム『ザ・ヴォイス・オブ・ラヴ』をリリース。その後はバダラメンティ、リンチとの協力関係を解消し、2002年に3rd、2011年に4thアルバムをリリース。The B-52'sのツアーにヴォーカリストとして参加したり、オフ・ブロードウェイに女優として出演するなど活動を続けている。

彼女の歌を初めて聴いたのがリンチが1985年に監督した映画「ブルー・ベルベット」だった。この映画でイザベラ・ロッセリーニの歌唱指導をして、そのまま劇伴まで担当したのがアンジェロ・バダラメンティで、以後リンチと濃密なコラボを続けていくことになる。

ここでクルーズをリンチに紹介したのもバダラメンティで、そこで歌われた「愛のミステリー」Mysteries of Loveは個人的にもお気に入りである。


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後に発売されたサントラCDの解説は今野雄二で、それを読んで色々と納得したものである。

「愛のミステリー」を気に入ったリンチとバダラメンティはさらに追加の歌を制作して彼女のデビューアルバム「フローティング・イン・ザ・ナイト」(1989年)をプロデュースすることになった。そして、あの「ツインピークス」に至る。

このアルバムの2曲目Fallingがテーマ曲にアレンジされて、他の曲もドラマに使用されたことによりまるでサントラみたいなアルバムになった。個人的には本当のサントラよりもお気に入りである。

収録曲は以下の通り。

  1.Floating
  2.Falling
  3.I Remember
  4.Rockin' Back Inside My Heart
  5.Mysteries of Love
  6.Into the Night
  7.I Float Alone
  8.The Nightingale
  9.The Swan,
10.The World Spins

ドラマの中でも本人が歌った軽快なRockin' Back Inside My Heartも大好きである。


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この浮遊感は最高で、寝る前に聴くには最適だった。

次のアルバム「ザ・ヴォイス・オブ・ラヴ」は日本盤が発売されてから購入したが、前作ほどにはハマらなかった。それは映画「ツイン・ピークス/ローラ・パーマー最期の7日間」も同様でサントラも購入したが、TVシリーズに勝るものではなかった。

ヴォイス・オブ・ラヴ

ヴォイス・オブ・ラヴ

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忘れられない記憶

3年ぶりの夏祭りと花火の後は、7年ぶりの歯科治療となった。東京では定期的に診てもらっていたが、実家に戻ってからは面倒で先延ばしにしてきた。久々の痛みに7年前の記憶がよみがえってきた。

あの夏も暑かったが、会社での残務処理と自宅での引越準備に追われていた。そんな中、7月17日から金曜ドラマ「表参道高校合唱部!」が始まった。そして、先日の17日には日曜劇場「オールドルーキー」の第3話が放送された。どちらもヒロインは芳根京子で、演出は石井康晴である。

この7年で芳根は少女から大人の女性へと成長し、今のドラマではショートカットでアクティブな(スポーツマネジメント会社の)社員を演じている。その姿はまるでかつての同僚の姿そのものである。

まだ自分が若手サラリーマンだった頃、同じ部署に気になる同僚がいた。地方の国立大学を卒業して入社した彼女は、優秀なんだけど一本気で今で言う空気が読めないところがあった。

そんな危なっかしい彼女を見ていられなくて何かと世話を焼いたりしたが、それは一方的なお節介でもあった。やがてそれは恋という感情に変わっていったが、社内では良き先輩として接し続けた。

そうして何もないまま月日は過ぎていったが、仕事のやり方で彼女は上司に反抗して、退職に追い込まれてしまった。そうして彼女は小さな代理店に転職した。それからしばらくして、彼女から一緒に仕事をしないかと誘いがあった。

それで彼女の会社に出向き、説明を聞いた。正直、気持ちが揺れたが決断はできなかった。仕事に魅力はあったが、収入が安定していなかった。結局、冒険を避けて、安定を取った。今でも、あの時の選択が正しかったのかは分からないが、あの選択があって今があるので後悔はしていない。

しかし、これが縁となって彼女と付き合うようになった。頭が良くて向上心のある彼女と付き合うのは大変だったが、得難い経験することができた。一緒に観た「魔女の宅急便」「友だちの恋人」「読書する女」「オテロ」など、思い出の映画も多い。

しかし、やがて優柔不断な自分に嫌気がさした彼女はだんだんと違う方向に向かい始めた。それが当時、社会問題にもなった自己啓発セミナーだった。ある日、彼女に呼び出されてセミナーに参加した。自分の殻を脱ぎ捨てて、新しい自分になろうという主張は正しいけれど胡散臭さがあった。その場の空気に耐えきれず、途中で会場を抜け出した。

それから彼女とは疎遠となっていき、やがて有名な政治家の秘書になったと聞いた。その時は素直に凄いと思ったが、今ではその裏事情も分かるようになってしまった。今またセンセーショナルに政治と宗教の闇が語られているが、自分にとっても忘れられない記憶を呼び覚ますことになってしまった。

「コロンボ」と「大草原」

最近はBS4Kで放送された「刑事コロンボ」BEST20を見ている。その内容は以下の通り。

「あなたが選ぶ!思い出のコロンボスト20」として、2018年にみなさまから投票していただいた『刑事コロンボ』20作品を、BS4Kで放送します!
放送は、視聴者投票第20位「死の方程式」から第1位「別れのワイン」まで順に放送します。
コロンボのあざやかな推理や個性的な犯人役のゲスト俳優など、見どころ満載の作品ばかり。中には記念すべき第一作目も!

【放送予定】
BS4K 2021年11月2日(火)[1日(月曜深夜)]スタート!

【作品一覧】
「死の方程式」
「美食の報酬」
「魔術師の幻想」
「意識の下の映像」
「死者のメッセージ」

「策謀の結末」
「権力の墓穴」
「秒読みの殺人」
「殺人処方箋」
「殺しの序曲」

「逆転の構図」
「歌声の消えた海」
「構想の死角」
「ロンドンの傘」
「祝砲の挽歌」

「パイルD-3の壁」
「溶ける糸」
「忘れられたスター」
「二枚のドガの絵」
「別れのワイン」

コロンボ」は録画したものをランダムに見ているが、それと同時に先月から始まった「大草原」のシーズン1も見続けている。どちらも何度見ても新たな発見があって面白い。

それでも「コロンボ」は無理に4Kで見なくても十分かなって感じ。それに対して「大草原」は4Kの映像が美しいので、DVDで全話揃っているにもかかわらず録画を続けている。

今はオープニングで流れる音楽を中心に編集して残している。いわば発売されていないサントラの代わりみたいなものである。

かつてビデオがなかった頃、テレビの洋画劇場で放送された作品の音楽をカセットレコーダーで録音していたが、今でも同じようなことをしているわけである。

それでも、どの回も物語が始まるワクワク感にあふれていて、気持ちが自然と昂っていく。その中でも特に印象的なのが「オルガの靴」のオープニング。

「逆転の構図」と「オルガの靴」

この日常描写の丁寧さは見事で、「コロンボ」にもそうした日常描写で忘れられない回がある。それが10位に選ばれている「逆転の構図」である。コロンボを見てホームレスと間違えてコートを見つけようとするシスターとのやり取りは傑作で、昔から忘れられないシーンの一つだった。

このエピソードを担当したラルフ・ケリンが「オルガの靴」の演出もしていたということである。「逆転の構図」がアメリカで初放送されたのが1974年10月6日で、「オルガの靴」は30日に放送されているので、お気に入りの回がほぼ同じ頃に撮影されていたということが分かり、ちょっと嬉しい発見だった。

「死者のメッセージ」と「父さんの秘密」

「逆転の構図」では出番は少ないながらも犯人の助手も魅力的に描かれていた。そんな犯人の助手(秘書)で忘れられないのが「死者のメッセージ」に出演していたマリエット・ハートレイ。この回が放送された前年に大草原の「父さんの秘密」で美しい未亡人を演じていたが、この回でも魅力的なダンスシーンがあったりして忘れられない存在感があった。これもどちらもお気に入りの回である。

その他にも同じキャストですぐに分かるのが以下の回で、久々に見直して驚いてしまった。ストーリーは覚えていても、出演者の顔は意外と覚えていないものである。

7位「ロンドンの傘」と「暗い教室」

11位「殺しの序曲」」と「自由よ永遠に」

17位「意識の下の映像」と「ジョーンズおじさんの鐘」

「ロンドンの傘」と「殺しの序曲」は犯人だからすぐ分かるが、「意識の下の映像」は犯人を恐喝して殺される映写技師を演じている。その彼がジョーンズを演じた「ジョーンズおじさんの鐘」を演出したレオ・ペンは1位の「別れのワイン」と15位の「策謀の結末」を担当している。

「魔術師の幻想」

そして「大草原」との関係で忘れてはならないのが18位の「魔術師の幻想」である。ここでレストランの支配人を演じていたのがロバート・ロジアで、後に映画でも活躍することになるが「大草原」ではシーズン9「幼い命を」に出演している。その「コロンボ」での吹替が昔のオルソン役だった草薙幸二郎だった。その他にも「権力の墓穴」で濡れ衣を着せられて憤慨する泥棒の声を、エドワーズを演じていた金井大が担当していて、いかにもピッタリだった。

そして何よりも脚本を担当したマイケル・スローンは、1990年にメアリーを演じていたメリッサ・スー・アンダーソンと結婚している。最近でも映画「イコライザー」が公開されているが、元は1984年から1989年にかけて放送されたテレビドラマ「ザ・シークレット・ハンター」である。ドラマにはメリッサ・スーも出演しているので二人はそこで知り合ったのかもしれない。


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なお、「魔術師の幻想」では映画「シャレード」のメロディが最初と最後に流れて印象的だが、作曲はヘンリー・マンシーニマンシーニといえば、「コロンボ」のテーマ曲も手掛けており、たまたま前回のEテレ「2355」の映画音楽のコーナーで流れたのがコロンボのテーマ音楽だった。


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本来はNBCの「ミステリー・ムーヴィー」シリーズのテーマ音楽で、クレア・フィッシャーのオルガン、グラハム・ヤングのトランペットによるソロに、バックはリー・リトナーハーヴィー・メイソンという豪華な顔ぶれだった。

もちろん、「大草原」のカバーも素晴らしい。


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突然の真夏

6月28日(火)

今日も朝から暑い。

5時前に家を出てサイクリング。

日の出前の空気はまだひんやりとして心地よいが、だんだんと湿気が体にまとわりついてくる。

まるで中学時代の夏休みみたいだと思った。

あの頃も早朝、よく自転車を走らせたものだった。

すっかり体力は衰えてしまったが、まだまだ大丈夫なような気がした。

帰宅して朝食の準備。

コーヒーを淹れながら、サラダとトーストを作る。

ゆったりとした時間。

6時になって部屋の温度は29度。

じんわりと汗が滲み出す。

昼になってニュースで梅雨明けを知った。

29日(水)

早朝3時にエアコンは消したが、6時には室温が30度を超えた。

そのため9時には再びエアコンのスイッチを入れた。

今月の初めまでは低温注意報が出ていて、布団で寝ていたのが嘘みたいである。

梅雨らしい雨もほとんど降っていなかったような気がする。

気がつけば、突然に真夏になっていたという感じ。

30日(木)

今日も暑い。

さすがに40度にはなっていないが、それに近い猛暑は経験している。

2010年の夏も暑かった。

その時は埼玉県のマンションに住んでいたがエアコンがなかった。

連日の熱帯夜に、このまま永遠に夏が続くような気分になったものである。

その時のことを思えば、今など天国みたいなものである。

1年ぶりに出かけた公園でアヒルに再会した。

池の近くに看板があった。

ヒルに近づくとじゃれてくる場合があると書かれていた。

どうやら、アヒルに遊ばれたようである。

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