何度目かの挑戦で「リリー・シュシュのすべて」をWOWOWで見ることができた。現在の中学生の生々しい現実が描かれるが、この内容に共感するにはもう年をとりすぎた。
そのうえ田園風景の広がる地方都市(足利市)で展開するドラマは牧歌的ではなく、万引、いじめ、援助交際、レイプ、自殺、殺人と、あまりに毒々しい。
そんな暗い現実を浄化するのが、リリー・シュシュの歌という訳で、その想いがネット掲示板の中で語られていく。最初と最後で描かれる、田園の中で音楽を聴くシーンと青空の下で凧揚げをするシーンは美しい。ただ、その美しさの背後には死のイメージが漂う。
主人公を演じるのが市原隼人で、剣道部の先輩役が高橋一生。この2人は、「直虎」で共演中。いじめる役で忍成修吾、援助交際をする少女が蒼井優。それぞれ強烈な役で印象的だったが、初めは蒼井とは分からないほどの汚れ方だった。
それが、あの凧揚げのシーンで浄化され、初めて彼女だと気が付いた。また、「スワロウテイル」で美少女を演じた伊藤歩までもが痛々しいまでに汚されてしまう。もう、ここには「打ち上げ花火」や「Love Letter」にあった抒情や郷愁はない。
それだけに、もう一度、見直したいという気にはなれないが、小林武史とドビッシーの音楽は魅力的で繰り返し聴きたいと思った。そうした音楽に対する切実な思いが、映画の中でもネットの言葉として語られる。
それは今の自分の書くという行為そのものであり、そうした言葉を持ちたいというのが切実な願いでもある。ネットで画像を検索したら、自分が見て印象に残ったシーンが多く出てきた。
もはや、昔のような感性など望むべきもないが、錆びつかない程度にはメンテナンスができていると思いたい。
All About Lily Chou-Chou - Trailer