ささやかな日常の記録

現在と過去のエンタメなど

映画「旅愁」とラフマニノフ

風と共に去りぬ」のメラニー役で知られるオリヴィア・デ・ハヴィランドが亡くなった。享年104歳、大往生である。

スカーレットと対照的なメラニーの印象が強いが、個人的には中学生時代に映画館で観た「エアポート'77」と「スウォーム」に出ていたのが印象に残っている。60歳を過ぎた頃だったが、まだまだ若々しい感じがしたものだ。それでも「ポセイドン・アドベンチャー」のシェリー・ウィンターズや、「タワーリング・インフェルノ」のジェニファー・ジョーンズほどには見せ場がなかったのが残念である。

そのメラニー役には妹のジョーン・フォンテインの名前もあったようだが、スカーレットの方に興味があったため姉を推薦したとのエピソードもあるようだ。

そのジョーン・フォンテインは東京生まれで2013年に亡くなっているが、ヒッチコックの「レベッカ」と「断崖」に出演したことで忘れられない女優の一人である。ヒッチコックのモノクロ映画のヒロインでは「白い恐怖」のイングリット・バーグマンと双璧である。

その他に「忘れじの面影」と「旅愁」を観ているが、特に後者は音楽とともに忘れられない。その音楽こそがラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」である。

1987年9月7日の日記に次のように書かれている。

映画ファン感謝デーということで銀座に映画を観に出かけた。待望の「ファンタジア」は、もう期待以上の素晴らしさで、もはや芸術の域に達していた。それだけに、この1本だけで大満足で、そのまま帰路についても良かったのだが、ちょうど上映が始まったばかりの映画があったので、何の予備知識のないままに観ることにした。

その映画は「旅愁」。はっきり言って通俗的なメロドラマで大した作品ではない。しかし、これが実に良かったのだ。時間と季節と心情がマッチして運命的に出会えた一本と言っていいかもしれない。

原題はSeptember Affair、9月という季節を人生になぞらえ、もの悲しいSeptember Songが印象的に流れる。男と女が出会い、愛が生まれ、育ち、そして終わりが来る。心底、好きでも別れざるを得ない心情が何故か身につまされた。

ジョーン・フォンティーンが何とも魅力的で、演奏会のシーンではラフマニノフのコンチェルトが実に効果的だった。フォンティーンの役がピアニストということもあってMさんを連想してしまった。思い込みのせいか顔の表情まで彼女に似ているような気がした。それほど昨夜の出来事が自分にとってもSeptember Affairであって、映画という虚構の世界と現実の世界がオーバーラップしてしまったようだ。

季節が繰り返されるように人生もある意味では同じことの繰り返し。だからといって悲観することはない。ラベルのボレロだって同じリズムを繰り返しているようで、少しずつ変化している。そして最後に劇的なクライマックスを迎える。人生も死という最期に向かって単調な繰り返しを続けるが、少しずつ変化している。クライマックスをいかに迎えるかは知る由もないが、それに向けて努力していくことが大切なのだ。

今ようやく、その展開部にさしかかったような気がする。同じようだけど何かがちょっと違う。「カサブランカ」のようなラストシーンが現実的なこととして自分の胸を鋭くえぐった。

旅愁(字幕版)

旅愁(字幕版)

  • メディア: Prime Video
 

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September affair part 3

この曲は映画「逢びき」「七年目の浮気」でも使われているが、クロード・ルルーシュの「遠い日の家族」が特に印象的だった。

このメロディが流れると条件反射的に感動してしまうので、今や感動的な場面を見るとこのメロディを思い出してしまうようになってしまった。「大草原の小さな家」の記事で「まるでラフマニノフのような音楽」と書いてしまうのも、そうした理由からである。

この曲をポップスにアレンジしたのがエリック・カルメンの「オール・バイ・マイセルフ」である。セリーヌ・ディオンもカバーしているが、どちらも大好きである。


All By Myself 【album version】 日本語訳付き  エリック・カルメン