朝ドラ「エール」では主人公の弟の結婚が描かれた。その福島のリンゴ農家の一人娘を演じたのが志田未来で、父親を演じたのがマキタスポーツ。当然、父と娘で確執があり、それがドラマになる。
シーズン4の「わたしの赤ちゃん」でも、そうした父と娘が描かれたが、まるでホラー映画のような雰囲気で始まる。深い森の中で父親が娘を監禁しているかのように暮らしている。そこで娘は父親に知られないように出産をして、手紙を瓶に入れて川に流す。それを川に来ていたローラが偶然にも見つける。その手紙には「友だちになって」(原題)と書かれていたため、ローラは上流を目指し、捨てられていた赤ちゃんを見つける。
ストーリーとしてはかなり粗がある。だいたい川で瓶を見つけること自体が奇跡である。しかし、これは「ローラの祈り」と同じくマイケル・ランドンの脚本と演出だけあって、奇跡は起きるのである。ローラが瓶を見つけるのは偶然ではなく必然である。「ローラの祈り」では川で十字架を見つけたチャールズが上流を目指し、山の上の煙を見つけるが、今回は森の中で煙を見つけることで、母親である娘を救うことになる。
その娘の父親を演じたのが映画「今そこにある危機」で大統領を演じたドナルド・モファット。その表情から狂信的で異常な感じが伝わってくる。
映画でもトランプのように一筋縄ではいかない複雑な一面を見せてくれる。親友が殺されたことでコロンビアの麻薬組織との攻防が繰り広げられる訳だが、それぞれの政治的な思惑が複雑に絡み合っていく。その中で重要な役を担うのが大統領補佐官で、演じたハリス・ユーリンもシーズン1の「ジョンおじさんの悲しみ」で息子を虐待するクズな父親を演じている。その2人が国のトップになっている姿は、まるで現実のトランプを見るようであった。
映画でも政治の世界は白と黒では分けられないという状況が描かれるが、その中でハリソン・フォード演じるジャック・ライアンの行動が救いとなる。その妻を演じたアン・アーチャーもシーズン1の「ベイカー先生のロマンス」に出演している。
このトム・クランシー原作のジャック・ライアンシリーズでは「パトリオット・ゲーム」もあるが、個人的には先日(10月31日に)亡くなったショーン・コネリーが出演した「レッド・オクトーバーを追え!」が好きである。
Clear and Present Danger (1994) - White House meeting
映画では大統領がどうなったかは分からない。ドラマでも父親は救済されずに放置される。それでも娘と赤ちゃんはローラによって救済される。いわばローラの祈りが神に通じたということである。
そんなローラの小さな祈りが赤ちゃんを前にして母性の目覚めにつながっていくのが印象的である。「ローラの祈り」で弟のことを無視した苦い経験が、ここで救済されたともいえる。
そんなローラを演じたメリッサ・ギルバートはこの時に腕にケガをしていたとのことで、実際に赤ちゃんを抱くのは難しかったようだが、川辺のシーンは美しい自然と共に印象的だった。
ドラマの内容も、撮影の現場も、今そこにある危機を乗り越えたようである。SOSの発信ということで、ポリスの「孤独のメッセージ」を思い出した。
The Police - Message In A Bottle