この時期にしては珍しく、晴天と暖かい日が続いている。過ごしやすいのは良いのだが、これに慣れてしまうと余計に寒さが堪えることになってしまい、体調管理が大変である。コロナの感染者数も全国各地で過去最多を記録している中、当地でもついに感染者が出てしまった。
病院も混雑しており、これ以上患者が増えたらどうなってしまうのか心配になってしまう。待合室で耳を傾けると多くの噂話が聞こえてくる。感染した人はGO TOで北海道へ行ってきただの、その家族は〇〇スーパーで働いていただの、その噂の拡散力は凄い。
今はコロナの噂が多いのは仕方がないが、平時ではお金を巡る噂も多い。家を増築なんかしたら一気に噂は広がってしまう。これが実際に遺産相続したとか、宝くじに当選したなんてことになったら大変である。シーズン4の「夢を見た町」はインガルス一家に起こった遺産相続を巡るドタバタを描いたストーリーで、身につまされてしまった。
チャールズが有名な馬車会社を経営していたおじさんの相続人になったことで、家族だけでなく町中に波紋が広がっていく。チャールズとキャロラインも満更ではなく、それぞれに時計と大工道具をプレゼントしようとするのが微笑ましい。
それでもオルソン夫人の手の平を返したかのような態度が象徴的なように、お金を持っていると分かると人の態度は変わってしまう。貧しい土地であれば尚更、その善意に期待を寄せてしまうのは仕方がない。チャールズも実際にお金を手にすれば喜んで寄付をしただろうが、手にする前に動かざるを得なかったことで苦汁を舐めることになる。
とにかく慣れないことが起こると人は冷静な判断ができなくなり、周りに振り回されてしまいがちである。自分も東京を離れる前につい巧い話に乗ってしまい失敗した経験がある。傍から見れば愚かしい笑い話であるが、当事者は笑えないものである。
チャールズの幸運を取材に来た新聞記者も、その事実を正しく伝えるのではなく、貧乏人が大金持ちになった姿を面白おかしく伝えようとする。冒頭、キャリーがローラのお下がりを着るのを嫌がる姿は切なかったが、新調した服を着た一家の姿は幸せそのものだった。それを意図的に貧しい姿に変えようとするあたりは、今のヤラセ問題と変わらない。
アンディと隠れ家を作って仲良く遊んでいたローラも新しい服を着ることで、「まるでネリーみたいだ」と言われてしまいギクシャクしてしまう。シーズン2の「砂金の夢」では金持ちの衣装として純白のドレスが描かれたが、子供にとっても服は大きなステイタスなんだと改めて思い知らされた。
その「砂金の夢」と同じように、今回も夢で終わってしまうことになる訳だが、競売のシーンが可笑しくも救いだった。お金を失って、改めて人の優しさに触れることができたということ。
このようにお金をテーマにすると人間の心の機微を分かり易く描くことができるので、これまでも多くの映画やドラマが作られてきた。実際にあった出来事を元にした映画「あなたに降る夢」もそうである。ニコラス・ケイジとブリジット・フォンダが主演のラブコメであるが、宝くじが二人の運命を変えていくことになる。
It Could Happen to You 1994 Movie Trailer (Bridget Fonda, Nicolas Cage, Rosie Perez)
日本のドラマでは宝くじが当たったことで翻弄されるヒロインを戸田恵梨香が演じた「書店員ミチルの身の上話」が忘れられない。
これが遺産相続になると一気にドロドロ度が高まってしまうので、あまり見たくなくなってしまう。1976年に公開された映画「犬神家の一族」を観てから意識するようになったのかもしれない。同じ頃、手塚治虫の「火の鳥・復活編」も読んでおり、ここにも生々しい人間模様が描かれていた。
ドラマではチャールズが相続した紙幣を前に喜ぶキャロラインの表情が印象的だった。キャロラインでも札束を前にするとこうなってしまうということだ。しかし、これは南北戦争時に南部同盟が独自に発行した紙幣だった。あの「風と共に去りぬ」のタラのテーマが聞こえたような気がしたが、改めて映画も見たくなってしまった。