かつてスプレイグの銀行だった建物で新聞が発行されることになる。その新聞の名前がPen&Plow(ペンとスキ)というのが面白い。
ペンは当然としてスキとは何だろう。普通は農業用の鋤を思い浮かべることだろう。シーズン4の「狼」の回でメアリーが手にして立ち向かったアレである。英語ではSpadeである。
ところがこのスキはPlowと書いてある。これは犂のことで漢字を見ても分かるように牛や馬に引かせる道具のことである。こちらもシーズン4の「ベイカー先生 休診」の回でメアリーがベイカー先生に見本を見せていた。
つまり、西部開拓時代には必要不可欠の道具だった訳で、ペンによって未開の地を開拓していくといった意味が込められていたのかも知れない。
そんな理想とは裏腹にドラマではオルソン夫人が記者として「ハリエットの事件簿」(原題Harriet's Happenings)欄を担当することでゴシップ誌に成り下がってしまう。
オルソンの店の広告では、価格を3割上げてから2割引きセールとして掲載し、それを宣戦布告という記事にして注目を集める。これは今のネットなどのセールも同じようなものかも知れない。
そんなオルソン夫人のやりたい放題によって多くの住民が傷つけられてしまう。その被害に遭ったドイツ移民の家族に見覚えがあった。シーズン2の「自由よ永遠に」の回ではロシア移民だった母と息子である。
このドラマでは様々な差別が描かれるが移民に対するものも多い。当然そこには言葉の壁が立ち塞がることになる。英語がうまく話せない少女へのいじめを描いたシーズン3の「悪夢のオルゴール」なども印象的である。
そんな言葉が人を傷つけるのは新聞の記事も同じである。それだけに新聞記者のモラルが問われることになる。これまでもシーズン4の「風の中の別れ」「夢を見た町」などでも否定的に描かれていたが、今回のオルソン夫人ほどではなかった。
言論の自由は何よりも大切であり、そこには真実がなければならない。そんなマスコミの報道のあり方については今でも多くの映画やドラマが制作されている。
1970年代には「大統領の陰謀」などがあったが、最近でもスピルバーグが「ペンタゴン・ペーパーズ」を撮っている。アカデミー賞でも2015年に「スポットライト 世紀のスクープ」が作品賞を取っている。
このエピソードもアメリカでは人気があるようでランキングで6位になっていた。
日本でも映画「新聞記者」がそれなりに話題になったし、そのドキュメンタリーも面白かった。そこには官房長官だった現総理も登場するが、その態度は今も変わらない。先日のぶら下がり会見での記者とのやり取りを見ていて、まるで映画のようだと思ってしまった。
新聞記者といえば、メアリーの元カレであるジョンが記者としてどのような生き方をしたのかがシーズン8の「雨の中の事件」で描かれることになる。