ささやかな日常の記録

現在と過去のエンタメなど

松本隆と薬師丸ひろ子

最近よくテレビで松本隆の顔を見る。先日も朝、テレビを点けたら彼のインタビュー番組をやっていた。そこで31歳の時に5歳下の妹さんを亡くされたということを初めて知った。大瀧詠一の「君は天然色」を書いてた頃で、喪失感のあまり、街から色が消えたとのこと。松本の歌詞から感じる優しさや儚さには、こうした影響もあったのだろう。

 

松本が担当したヒット曲は数多あるが、もっとも好きな曲は薬師丸ひろ子が歌った「Woman」だ。このことについては何度もこのブログに書いてきた。その世界観をアルバム全体で表現した作品がある。それが薬師丸が1986年の6月に発表した「花図鑑」というアルバムだ。松本自身のプロデュースで全10曲すべての歌詞を書いている。「花」をモチーフとしたコンセプト・アルバムで、まるで深い森を彷徨っているような印象がある。作曲者は筒美京平井上陽水細野晴臣、そして中田喜直で、2曲ずつ提供している。残りはモーツァルトのカバーと薬師丸自身によるもの。

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実はこのアルバムは自分にとって初めて買ったCDということでも忘れられない。CDプレイヤーのトレイに初めてCDを置いた時の興奮、音が出た時の衝撃は今でも鮮明な記憶だ。

 

今日、久々に聴いてみて鮮やかにあの頃の記憶が甦ってきた。改めて松本の歌詞が心に沁みた。

収録曲は以下の通り。

 

 1.花のささやき

 2.100粒の涙

 3.ローズティーはいかが?

 4.寒椿、咲いた

 5.紅い花、青い花

 6.麦わら帽子のアン

 7.透明なチューリップ

 8.紫の花火

 9.哀しみの種

10. かぐやの里

 

ヒット曲はないが、ブリティッシュ・フォークのような小川のせせらぎの音や、ピンク・フロイドの「ザ・ウォール」みたいなエフェクトがあったりと、プログレ風味もある。編曲は松任谷正隆武部聡志。そして言葉が色々な情景を浮かび上がらせる。

 

連休中の天気は良くなかったが、音楽を聴くには最高だった。風の音を聞きながら、あの頃の気持ちを思い出した。アルバムには次のような歌詞がある。

~雨の日、日付のない日記書く

 あなたの聞いてた古いレコードをもらえば

 それでいい

 


 夢は正夢

 愛しはじめた日から

 失う気がした

 それは哀しみの種~

 

薬師丸は今年の2月にオーチャード・ホールにてコンサートを開いた。その模様を収録したBSPの番組も見ることができた。その中で、このアルバムの中田喜直についてコメントしていたのが印象的だった。合唱をやったことのある人にとっては、その名前はあまりにも大きい。そんな人から作品を提供されたことによる喜びと不安。「寒椿、咲いた」を歌う姿は実に良かった。それぞれのアーチストに対するリスペクトの姿勢に共感する。ベスト・アルバム「歌物語」にも次のようなコメントがある。

歌という沢山の素晴らしい宝物を作家の方々に提供して頂いた事に、私自身感動しました。

歌が皆さんの心の中に入って、人生の思い出と重なって、歌を聴いて瞬く間にその時代にタイムスリップしてくださったら嬉しいです。

そして皆さんの大切な物語に花を添えられれば尚、幸せです。

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これはそのまま「花図鑑」に対する思いとも重なるような気がする。いずれにしても、彼女の言葉に共感せざるを得ない。

 

実は自分も過去、薬師丸のコンサートに行っている。1990年の3月と4月に2回、同じオーチャード・ホールだった。その時の模様は古いレーザーディスクに残っているが、記憶は色褪せてはいない。

 

今朝の朝ドラ「半分、青い。」は、まさにその1990年の新春が描かれた。それなのに、あまりに稚拙なドタバタに呆れてしまった。自分にとっても思い出深い時代での東京生活がどう描かれるか、あまり期待もできなくなったが、楽しみにしている。

 

なお、薬師丸に楽曲を提供している女性アーティストも豪華である。竹内まりやに、松任谷由実に、中島みゆき。その松任谷と中島のライブもWOWOWで見ることができた。薬師丸とはまた違ったベテランならではの圧巻のステージだった。本当に楽しみは尽きないといったところ。