梅雨の晴れ間。気温は上がり、蒸し暑かった。もうすぐ夏だ。夏と言えば海。海と言えば映画「ジョーズ」が思い出される。
日本公開は1975年12月、映画館で観て興奮した記憶がある。今でも誰もいない船の底から出現するアレは強烈に覚えている。ホラー映画の原体験みたいなものだ。
当時、まだ作曲家のジョン・ウィリアムズという名前は知らなかった。それでも、あのテーマ音楽は脳裏に焼き付いた。音楽の授業でサントラのレコードを聴いた。標題音楽を理解させるための教材だったのだろう。聴いていたら、映画のシーンが鮮やかに甦ってきた。音楽の力を思い知らされて、サントラの魅力に目覚めた瞬間だった。その後、レコードを購入したのは言うまでもない。
久々にWOWOWで放映されたので見ることにした。今年の初めにBSPでも放映されたが、5.1chでは初めてだった。冒頭の静かなシーンから、情景が立体的に浮かび上がってきた。とても40年以上前の映画とは思えなかった。
当時はサメ退治のクライマックスは圧倒的だったが、今見るとそれほどでもない。ある意味、あっけなくもある。それでも、そこに至る描写がきめ細かく、きちんと伏線も張っていてサスペンスとして一級品。ロバート・ショー演じるクリントのインディアナポリス を巡る自分語りが印象的。こんな歴史的事実が描かれていたなんて知らなかった。
監督はスティーブン・スピルバーグ。映画デビュー作の「続・激突カージャック」(1974)から「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」(2008)まで映画館で観ることができた。音楽はほぼジョン・ウィリアムズが担当し、サントラを購入するのも楽しみだった。当時購入したスピルバーグ作品のサントラは以下の通りである。
未知との遭遇(1977)
当時、FMから「未知との遭遇」のテーマということで流れていた曲はあの5音階をディスコ調にしたものだった。当然、サントラ・アルバムにも収録されていると思っていたのに、その曲がなかったので落胆した覚えがある。当時はなんでもディスコだった。「スター・ウォーズ」のイメージで購入したサントラは当時は難解で親しめなかった。それでもエンド・タイトルの盛り上がりには感動したものだ。CDになって「星に願いを」のメロディーが加えられたのもお気に入りである。
1941(1979)
なんといってもテーマ曲のマーチに尽きる。ハチャメチャな映画に見事にマッチした戦争マーチに若い血潮は燃えたものである。今でも大好きな映画だが、三船敏郎はこちらよりも「スター・ウォーズ」に出演して欲しかった。
レイダース/失われたアーク(1981)
初めて見た時の興奮を覚えている。映画ってこんなにも面白いのかと感激したものである。レイダースのマーチも最高だが、マリオンのテーマの美しさ、アークのテーマの幽玄さなど魅力たっぷり。
E.T(1982)
自転車が舞い上がるシーンでの高揚感は今でも忘れられない。新宿ミラノ座の大画面と大音響で見たスピルバーグ映画の思い出は宝物のようである。このサントラは美しいメロディが散りばめられた宝石箱のようだ。
トワイライト・ゾーン(1983)
このサントラはジェリー・ゴールドスミスが手がけただけに、迫力満点。スピルバーグとのタッグといえば「ポルターガイスト」もお気に入りだ。
インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説(1984)
これはもう冒頭のミュージカル・シーンが好きすぎて何度も見返してしまう。映画自体も漫画的に楽しくて、メロディーも親しみやすい。
インディ・ジョーンズ/最後の聖戦(1989)
映画も音楽も冗長で印象が薄い。レイダースのマーチがなかなか出てこないもどかしさがある。
オールウェイズ(1989)
オールディーズの名曲「煙が目にしみる」が印象的だが、劇伴はあまり印象に残らない。まるでヒーリング・ミュージックのようでもある。
ジュラシック・パーク(1993)
久々にワクワクするテーマ曲が戻ってきた。スピルバーグの演出も絶好調。
シンドラーのリスト(1993)
バイオリンの響きが胸を締め付ける。美しい音楽だけど、映画を思い出すと苦しくなるので、あまり聴く気になれなかったりする。
A.I.(2001)
映画も音楽も大好き。サントラを聞くだけで泣ける。ローラ・フェビアンとジョシュ・グローバンによる主題歌も美しい。
ジョンはボストン・ポップスの指揮者としても活躍。上記の作品をボストン・ポップスで演奏したCDも素晴らしい。「続・激突!カージャック」が収録されたのが何よりも嬉しかった。1993年の来日公演を聴くことができたのは、忘れられない思い出である。
「ジョーズ」の撮影監督はビル・バトラー。海中のシーンや洋上のバトル・シーンなど見事だった。彼がその後70年代に担当した作品は個人的にお気に入りばかり。映像と音楽、どちらも魅力的で、サントラもすべて購入した。
カッコーの巣の上で(1976)
ジャック・ニッチェのユニークな音楽が映画に深い陰影を与えていた。
リップスティック(1976)
カプリコン・1(1977)
ゴールドスミスの最高傑作。映画を盛り上げた音楽がメロディとしても脳裏に焼き付くことの凄さ。単純なリズムがここまで感情を高揚させてくれることに今でも驚きを禁じ得ない。ディスコ調の愛のテーマも素晴らしい。
オーメン2(1978)
アカデミー賞を受賞した前作の音楽をアップテンポにブラッシュアップ。ホラー映画の音楽でありながら聴くと気分が高揚してしまう。さらに次作ではホラーでありながら宗教音楽の高みに至ってしまうのだから凄い。
グリース(1978)
最高のポップ・アルバム。何度聴いてもウキウキしてしまう楽しさに溢れる。オリビアとトラボルタのデュエットも印象的。
アイス・キャッスル(1978)
メリサ・マンチェスターが歌った主題歌が最高にチャーミング。作詞キャロル・べイヤー・セイガーと作曲マービン・ハムリッシュは前年に「007私を愛したスパイ」の主題歌も手掛けており、こちらも大好きだった。
ロッキー2(1979)
前作には及ばないながらも、映画も音楽もお気に入り。前作のクライマックスがオープニングで描かれて、早くも涙腺崩壊だった。メインテーマとロッキーのテーマがディスコ調のアレンジで時代を感じさせる。
ミュージック・ミュージック(1980)
栄えある第1回ラジー賞受賞映画だが、当時はもう楽しさ満載の映画としてサントラも大のお気に入りだった。それなのにサントラがCD化されないばかりか、映画自体もソフト化されないままである。
「ジョーズ」から派生したサントラ20枚を取り上げたが、やはり中途半端。改めてじっくりと聴いてみたい衝動にかられたが、とても無理。1枚1時間としても20時間。それでも、ざっと聞くことはできた。こういう時にiPodは超便利。改めて自分の音楽的嗜好が分かった気がする。