ささやかな日常の記録

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「栗色のマッドレー」レイとチプリアーニ

台風24号の動きが気になる。ここのところ雨が続いて、なかなか秋晴れが続かない。朝昼だけでなく、日によっての寒暖差も大きくて体調も良くない。そのせいか鈍い頭痛も続いている。そのためテレビは集中して見られないので、音楽を流し続けている。

先日タワーレコードから届いたばかりの「栗色のマッドレー」が素晴らしい。

このフランシス・レイ作曲のサントラを手に入れる道のりは長かった。2年前に日本編集の4枚組に1曲だけ収録されたが、その時も嬉しかった。なにしろ、その前のフランス編集の14枚組に収録された音がひどかったからだ。その時も1曲だけだったが、CDで聴くことができて喜んだ覚えがある。

映画「栗色のマッドレー」は1971年10月に日本公開。映画館ではなく、テレビで見たような気がするが定かではない。サントラは当時レコードで発売されて、それ以来CD化もされないままだった。

ある愛の詩」がステルヴィオ・チプリアーニ作曲の「ベニスの愛」に似ていたのだ。それで裁判になってレイがチプリアーニに著作権を譲渡して決着したとのこと。それが今、なぜ発売できたのかは分からないが嬉しい限り。今ではYouTubeでほとんど聴くことはできるが、やはりCDで持っていたいのだ。

とにかくメロディーと女声スキャットが美しい。映画は見ていなくてもピアノと女声スキャットがあれば十分だったりする。レイとチプリアーニ、そしてエンニオ・モリコーネのサントラはその宝庫だった。

ある愛の詩」と「ベニスの愛」、どちらも好きだった自分にとって、その因縁となった「栗色のマッドレー」は長年、手に入れられない高値の花であり続けた。それをようやく手に入れることができて、長年の夢がかなった気分である。

レイのサントラCDはSLCというレーベルから発売されたものを中心に集めてきた。1994年に「愛と哀しみのボレロ」完全版が発売された時には歓喜した覚えがある。

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この映画で、レイにリアルタイムではまった。1982年の年末、あの「E.T.」が公開される直前に新宿のミラノ座で観ることができた。クロード・ルルーシュの流麗な映像と、レイとミッシェル・ルグランの華麗な音楽に魅せられた。

映画が終わって外に出ても、しばらく劇場前から離れられなかった。そうしたら通りすがりのおじさんが無料の鑑賞券をくれた。貧しい学生が、この映画を見たがっているように見えたのだろう。ありがたく頂戴して翌日、またミラノ座で観ることができた。就職してから、当時1万円以上した2本組ビデオを購入し、サントラも輸入盤で手に入れた。

1991年にルルーシュ監督の「ライオンと呼ばれた男」をテアトル新宿で観た。ジャン・ポール・ベルモンドのいぶし銀のような演技に圧倒させられた。同時にレイとニコール・クロワジールの主題歌に魅せられた。サントラを探し回り、六本木WAVEで見つけた時は嬉しかったものである。この頃から輸入盤が色々と出るようになり「グレート・ブルー」なども購入している。それから輸入盤を中心にサントラCDを買い漁っていくことになる。

1994年にSLCから初めて「ラストコンサート」がCD化された時も嬉しかった。

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映画を観たのは1977年で「カサンドラ・クロス」が併映だった。この2本立てが決定的だった。これで映画音楽の素晴らしさに目覚めてしまった。

カサンドラ・クロス」は「カプリコン・1」も手がけたゴールドスミスが音楽担当。ゴールドスミスのサントラで初めてレコードを購入した作品になった。そして「ラストコンサート」はチプリアーニが音楽担当だった。まるでラフマニノフのようなピアノ・コンチェルトを聴いて感動した。

すぐにもサントラが欲しくなったが、当時はまだレコード・プレーヤーがなかった。それで仕方なくカセットテープで購入した。残念ながら「カサンドラ・クロス」は無くて「スター・ウォーズ」と共に購入した覚えがある。

それからはそれこそテープが擦り切れるまで聴き込んだ。当時のサントラにはセリフが入っていた。主演のパメラ・ヴィロレージのハミングも魅力的だった。

その同じ頃「オルカ」と「宇宙戦艦ヤマト」を観た。モリコーネ宮川泰の音楽、特に女声スキャットに魅せられた。今に至る音楽嗜好の原点の一つだった。

それから、映画「火の鳥」を担当したミッシェル・ルグランにも魅せられた。これも1978年のことで、これは5月に記事にしている。この主題曲と安室のCAN YOU CELEBRATE?の冒頭は似ている。

高校生になるとピンク・フロイドに夢中になった。あのアルバム「狂気」の中で、もっとも好きなのが「虚空のスキャット」である。リチャード・ライトのピアノとクレア・トリーのスキャットは陶酔の極みだ。「おせっかい」収録の「エコーズ」はミュージカル「オペラ座の怪人」に似ている。

このようにパクリかどうかは別にして、好きな曲で似ているものは多い。ピアノとスキャットのある曲なんて、すべて似たようなムードがある。それはそれとして好きな曲として楽しむに限る。

大学に入るとピアノと女声に魅かれて、コーラスも体験した。某女子大とジョイントで合唱組曲宇宙戦艦ヤマト」を演奏した。川島和子は無理だったが、プロの声楽家と共演して、その美声に鳥肌が立った。

そして10月にはフランシス・レイ・オーケストラが来日する。20年ほど前に来日した時に聴きに行った。指揮は「マッドレー」の編曲者でもあるクリスチャン・ゴベールだった。その素晴らしい演奏は今でも脳裏に焼き付いている。

実はそのサントラ以上に好きなのがチプリアーニが編曲したものだったりする。ピアノとスキャット、レイとチプリアーニ、浜辺と女性、自分の好きな要素が詰まった一曲である。これってドラマ「透明なゆりかご」にもそのまま当てはまったりもするのである。


Francis Lai & Stelvio Cipriani - Madly 1971

(追記)

チプリアーニは、この後10月1日にローマで亡くなった。81歳だった。

そしてレイも11月になって86歳で亡くなった。