ささやかな日常の記録

現在と過去のエンタメなど

ドラマ「まんぷく」と不公平な時代

昨日から克子の長女タカとして登場した岸井ゆきの(26歳)から目が離せない。今朝の放送では闇市靴みがきをするシーンが描かれた。妹の吉乃役の濱田優音(11歳)と並んでいても、まるで違和感がない。簡単に値切られてしまって悔しがる表情が良い。

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そして稼いだお金を克子(松下奈緒)に渡す時の晴れやかな表情ときたら…。それに対して「ごめんね」と涙ぐむ母の心情。この何とも切なくて暖かい空気感が最高だ。もう、このアバンだけで敗戦後の庶民の暮らしの一端が鮮やかに伝わってくる。

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暗い食卓ですいとんを食べるシーンも印象的だ。タカが「また、すいとん」と言って不満の顔をするが、本当に子供のようだ。それに対して福子が目をつぶって食べれば大福餅の味がすると言う。それぞれの味わう表情が面白くて楽しい。

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昨日の牧夫妻に続いて、今朝は世良(桐谷健太)と再会する。萬平にない逞しさと要領の良さを桐谷が好演。そんな彼の生き方が滲み出たかのような言葉が強烈だ。

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今は不公平な時代ですわ

戦死した人間と無事で帰ってきた人間

抑留された人間と帰国できた人間

戦犯にされた人間と免れた人間

闇で儲けた人間と儲けらへんかった人間

飢えてる人間とたらふく食うてる人間

焼け出された人間と焼け残った人間

良いも悪いもなく、あるのは不公平だけ。それは今の時代も変わらない。

アベノミクスとやらで儲けた人間と儲けられなかった人間

地震や台風で被災した人間と免れた人間

雪が多く降る所に住む人間と雪が降らない所に住む人間

大企業に就職できた人間と就職できなかった人間

バブルに踊った人間とバブルを知らない人間

金持ちの家に生まれた人間と貧しい家に生まれた人間

もう、いくらでも出てくる。それで絶望するか、そういうものだと割り切って頑張るかは人それぞれ。世良のように自信を持って生きられる人は少ない。戦後の焼け野原で自分を証明することもできない人も多かった。そこから自分を証明するためのハンコを作ることを思いつく。絶望から光を見出した萬平の姿にワクワクする。

その前のニュースでせんべろ酒場を取り上げていた。自分が新橋界隈で飲んでいた頃とちっとも変わっていない。景気は回復しているらしいが、中小企業の会社員の懐は厳しいようだ。都市部はどうだか分からないが、地方の現実も厳しい。都市で暮らす人間と地方で暮らす人間の不公平感は大きい。世代によっても不公平感は大きいままだ。そういう不公平感を解消するのが政治の役割のはずだ。それなのに自分たちは身を切ろうともしない。多くの人々は光が見出せない。

またしてもドラマから横道に逸れてしまった。それでもドラマの日常と自分の日常を重ね合わせることもドラマの楽しみだ。良いドラマはセリフや場面が心に刺さって離れない。

今朝の放送では萬平が忠彦(要潤)のアトリエを見るシーンも良かった。夕暮れの光の中で鳥をモチーフにした絵画の数々が映し出された。これってチキンラーメン誕生の源流になったりするのだろうか。ここで福子が萬平に言う。

みんなで頑張ればなんとか生きていくことはできます

萬平さん、もっと先のことを考えてください

 無力感に苛まれた男を、さりげなく励ます福子が優しい。こちらもなんだか励まされたような気分になれる。今朝も濃密な15分だった。

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