ささやかな日常の記録

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今夜は青春「ストリート・オブ・ファイヤー」

昨夜のWOWOW「あなたの映画館」に「ストリート・オブ・ファイヤー」が登場。最近ではBSPでも放映したばかりではあるが5.1chで見るのは初めてだったので、珍しくリアルタイムで鑑賞した。1984年の公開以来、もう何回見たのか覚えていないほど見ているのに、まったく退屈することなく最後まで見てしまった。

この映画を初めて見たのが公開初日の1984年8月11日(土)だった。当時、銀座・松屋での仕事が終わり、日比谷映画の7時の回に飛び込んだ。映画が終わった後も興奮が治まらず、ダイアン・レインが演じたエレン・エイムの歌声が頭の中で響き続けた。

CDプレーヤーを初めて購入したのは1986年だったので、この頃はまだレコードだったがサントラを購入したのは言うまでもない。音楽担当はライ・クーダーだが、彼の劇伴は1曲も収録されなかったが、当時はエレン・エイムの歌が収録されていただけで十分だった。その「ノーホエア・ファースト」と「今夜は青春」の2曲はサントラではファイヤー・インクとクレジットされているが、この映画のためだけに編成されたバンドで、当然ダイアン・レイン本人が歌っている訳ではない。それでも、そこは映画のマジックで最高のライブ・シーンになっている。

今回、初めて5.1chで見直して改めて思ったのがライ・クーダーの劇伴の素晴らしさ。派手なロック・ミュージックに隠されてしまい目立たないが彼のギター・サウンドが全編にわたり響き続けていて、まさにいぶし銀のような存在感だった。若い頃には気が付かなかったブルージーなギターの音色が通底していることによって、ほろ苦い青春の残滓が胸に染み込んでくる。その彼のインスト曲はその後、ベスト・アルバムに1曲だけ収録された。

この映画のストーリーはいたってシンプル。昔の恋人のために故郷に戻ってきた主人公が彼女を救い出すも、また去っていく。寡黙な主人公を演じたマイケル・パレがカッコ良くて憧れたものだ。当然、ダイアン・レインには魅せられたが、主人公の相棒を演じたエイミー・マディガンも実に魅力的だった。悪役を演じたのがウイレム・デフォーでまさに怪演。マネージャー役のリック・モラニスもコメディーリリーフとして完璧。ちょい役ながら可笑しな存在感があったのが昨年亡くなったビル・パクストン。そして個人的に忘れられないのが主人公の姉を演じたデボラ・ヴァン・フォルケンバーグ。この映画の中にあって、彼女は常に現場を見つめ続けている。その優しいまなざしがとても印象的。雨が降る中、窓から外を見つめる彼女の表情が忘れられない。

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監督のウォルター・ヒルは「エイリアン」の製作者としても知られるが、映画としては個人的にこれがベスト。魅惑的な人工の夜を撮影したのがアンドリュー・ラズロ。「ランボー」や「ポルターガイスト2」も印象的だった。音楽の良さは当然ながら、映像の素晴らしさも特筆すべきだと思う。工場のような酒場での銃撃戦や、バスから始まる逃避行のシーン、そして何といっても最初と最後のライブの凄さ。ちょっとざらついた映像と場面転換が93分の中に凝縮されている

この映像に魅せられて当時まだ高額だったビデオ・ソフトを購入した。まだ目新しかったミュージック・ビデオとメイキングを収録した作品が初めて購入したビデオだった。その後、ブロックバスターと称した廉価版のソフトが発売され「レイダース」とともに購入した。それでも1本1万円と、今では考えられないくらい高額だったが、当時はこれでも安くなったと思ったものである。その後、レーザーディスクでも購入し、さらに値段は半額になっていた。そして昨年、待望の日本版Blu‐rayが発売されたが購入は見送った。もう、これ以上ソフトを増やすのが躊躇われてしまったのだ。思い出としてはもう十分すぎるくらいある。たまに、こうして放映されたものを見るくらいでちょうど良いのかもしれない。

この映画を見た1984年は個人的に忘れられない年でもある。7月28日(土)には有楽座にて「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」を見ている。この有楽座と日比谷映画は年末に閉館となった。そして、12月8日(土)に新しく有楽町マリオンに開館した日本劇場にて「ゴーストバスターズ」を見た。その日本劇場も閉館して、今年になって日比谷に新しく「TOHOシネマズ日比谷」が開業した。栄枯盛衰、時代と共に街も人も変わっていく。今や東京を遠く離れ、映画館もない地方の住人になってしまった。

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1984年3月11日(日)には新宿ミラノ座にて「風の谷のナウシカ」を見た。この日は宮崎駿監督の舞台挨拶もあったが、今ほどの熱狂はなかった。この映画のプロデューサーだったのが高畑勲で、この年の12月2日(日)にテアトル吉祥寺にて彼の初監督作品「太陽の王子・ホルスの大冒険」を見ている。その高畑も先日亡くなってしまった。

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アニメでは「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」と「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」も忘れられないが、やはり年末に見た薬師丸ひろ子主演の「Wの悲劇」が最高だった。その薬師丸が今でも活躍しているのが何とも心強い。今週、新装なったSONGSにまたも出演するとのことで楽しみだ。